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【ヤマザキナビスコカップ 名古屋 vs 甲府】レポート:甲府が若い名古屋から逃げ切り今季初勝利。名古屋は未来への可能性は十分に見せた(14.03.20)

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ベストメンバーを揃えた甲府は今季初勝利と自信を、ターンオーバーした名古屋は未来への可能性を手にした一戦だった。

J1第3節から中3日、今季公式戦4戦目となるヤマザキナビスコカップ開幕戦は、あらゆる選手起用が可能な戦いだった。疲労を考慮しメンバーを入れ替えてもよし、チーム作りの継続性を重視し固定メンバーで臨んでもよし。シーズン開幕直後ということでいわゆるベストメンバー規定の制約も受けにくく、ともすればシーズンの中で最も自由度の高い選手起用が可能なゲームといえる。そこで名古屋と甲府の指揮官は、実に対照的なメンバー構成をもってカップ戦初戦を獲りに来た。

継続を選んだのはリーグ3戦でいまだ勝星のない(2分1敗)甲府の城福浩監督だ。「チームのリーグ戦での歩みを考えれば、今はチームを変えるべきではない」と考え、最小限ともいえる選手の入れ替えを施し、ベストメンバーといえる布陣で瑞穂競技場に乗り込んできた。リーグ前節からの変更はスタメンでは2シャドーの一角に水野晃樹を起用し、ベンチに井澤惇と松本大輝を入れたのみ。守備時は4−5−1になる3−6−1システムの熟成と課題の克服、何よりも今季の公式戦初勝利を得るべく、テスト的要素はほぼ排除しての戦いを挑んできた。
挑むという意味では名古屋の西野朗監督も同様だったが、選手起用の意図はまったく正反対だった。実に楢崎正剛、大武峻以外のスタメン9人を入れ替え。今季リーグ戦で既に出場経験のある選手は4名いたものの、牟田雄祐、佐藤和樹、望月嶺臣は今季初出場、森勇人と矢田旭に至ってはベンチ入りの経験もなくこれがプロデビューである。控えも2年目のハーフナーニッキ、移籍新加入の刀根亮輔、ヘジス、高卒新人の小屋松知哉と青木亮太に加え、16歳の“飛び級”高校生Jリーガー杉森考起というフレッシュな面々となった。スタメン平均年齢が23.55歳、18名で22.5歳という数字は、昨季までの名古屋では考えもできない若さだ。

かくしてキックオフの時を迎えたゲームは、意外と言えば意外な展開からスタートした。若い名古屋が、想像以上に“戦える”集団だったのである。その中心にいたのは、21歳の大武峻と、19歳の望月嶺臣だ。前者が最終ラインで高さを活かした守備だけでなく、的確な縦パスでビルドアップにも能力を見せれば、後者はゲームメイカーとしてのセンスをいかんなく発揮。中盤の底でコンビを組んだ田口泰士もリズムメイカーとしては有能だが、それを上回るパスセンスで攻撃に鋭さを加えていた。15分には縦のパス交換から永井謙佑に美しいスルーパスを通し、松田力のシュートをお膳立て。167cmと小兵ながら、チャージをいなす軽快な身のこなしとテクニックで大きな存在感を見せていた。名古屋の前半のシュート数は3本と少なかったものの、彼らに牽引されるように右サイドバックの森やサイドハーフの松田、矢田らも躍動。そのプレーぶりは矢野貴章や永井、田口ら“先輩”たちのプレーが落ち着きすぎて見えてしまうほど、鮮烈な印象を与えた。

だが、勝負の世界、プロの世界はそれだけで勝てるほど甘くはない。守備時は9名でゴール前に分厚いブロックを形成する甲府は、そこから盛田剛平、クリスティアーノらを前線の起点として着実に反撃。堅守速攻という自らのスタイルで地道に決定機を生み出していった。8分、26分とクリスティアーノが持ち前の突破力で惜しい場面を作ると、27分には盛田がロングパスに抜け出しGKとの1対1に持ち込む。これらはいずれも楢崎に阻まれたが、福田健介、水野の右サイドと阿部翔平、クリスティアーノの左サイドという攻撃の形はよく機能していた。

そうした流れの中、決勝点が生まれたのは前半30分のことだ。甲府の水野が右サイドを突破にかかり、上げたクロスは精度を欠いたが、名古屋はそれ以上に判断力を欠いた。それまでもやや不安な状況判断を見せていた名古屋の森が水野のクロスを拾ってキープしようとしたところ、追走していたクリスティアーノにボールを奪われ、しかもヒールでの切り替えしで入れ替わられてしまう。甲府の10番はそのままドリブルで突進し、目の覚めるような豪快なシュートをバーに当てながらゴールに突き刺した。「彼のキックはパスにしてもシュートにしても大きな武器」と城福監督は試合後に語ったが、まったくその通りのスーパーゴールだった。

1−0のままで迎えた後半は、守備が持ち味のチームの典型的な試合展開となったが、おもしろ味の少ない堅いゲームになったかといえばそうではなかった。甲府のカウンターは実にダイナミックで、名古屋のポゼッションが実にクリエイティブだったからだ。名古屋の攻撃を加速させたのは前半同様にやはり望月と大武だった。この2人がボールを持った時、明らかに違うリズムが生まれる。効果的なパスが入るという予感が漂う。66分にはパサーの望月が虚を突くドリブルでDF3人の間を抜き、矢野にラストパス。このシュートは決まらなかったが、この試合で最もスタンドが沸いた瞬間だった。名古屋はその直後の67分に小屋松と青木を投入し、3−5−2に布陣を変更。特に青木の投入でさらに前線に異質なリズムが生まれ、攻撃は活性化。試合終盤には杉森もプロデビューを果たし、10代の選手が4名も同時出場する異例のメンバー構成に。得点こそ生まれなかったものの、何かが起こると思わせるだけのサッカーを見せながら、名古屋は試合終了の笛を聞いた。

勝った甲府はリーグここ3試合で浮き彫りになっていた課題もクリアし、選手たちはひとまず安堵の笑顔。「セットプレーからの失点も含め、前提としてゼロに抑えて、欲をいえば2点、3点と取れればもっとうまく試合を運べたかと思います。甲府らしいといえば甲府らしい試合」とはベテラン盛田の言だ。その上で監督、選手に共通していたのは「2点目を取るべき時に取ること」。貫いたスタイルに新たな課題を加え、甲府はまた週末のリーグ戦へと目を向けた。
そして、名古屋である。この日出場したメンバーには、大きな可能性を感じずにはいられなかった。試合には負けたが、ポジティブな印象しか正直残っていない。望月に至っては次のリーグ戦メンバーに名を連ねるだけのアピールはしたように思える。もちろん、若く経験の浅いメンバーだったというエクスキューズが働いている部分も多分にしてあるのだろうが、それ以上にこの日の名古屋に感じたのは、新時代のサッカーだ。大武、森、望月、松田、矢田、青木、小屋松、杉森。彼らがほぼ即興で表現しようとしたサッカーのリズムとアイデアは、名古屋の主力メンバーたちとは明らかに違うベースの上に築かれている。数年後、このメンバーが、と想像するだけで胸が躍る。大事なカップ戦初戦は落としてしまったが、未来への先行投資という意味では、決して悪くない結果と内容だったのではないか。少なくとも、ここから名古屋のチーム内競争は激化すると予感させるだけのプレーを、若者たちは見せてくれた。

以上


2014.03.20 Reported by 今井雄一朗
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