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【J1:第24節 広島 vs F東京】レポート:勝敗を分けたのは、ミスと勇気。熱狂を生んだエディオンスタジアムの夜。(13.09.01)

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サッカーはミスのスポーツである。メッシやシャビ、イニエスタ(いずれもバルセロナ)といった世界的名手でも、ミスはある。
ただ本質的に怖いのは、技術的なミスではない。16分、ゴールキックを受けた千葉和彦が犯してしまった「判断の失敗」である。

いつもの広島なら、最終ラインにプレスがかかっても、ボールはうまく処理できる。つなげないなら、裏に蹴って佐藤寿人や石原直樹といったスピードを持つ選手に期待してもいいし、後ろには西川周作という卓越した「ゲームメイカー」がいる。しかしこの時、いつもなら複数持っているはずのプレーの選択肢を、千葉は見失ってしまった。その逡巡を見逃さず、渡邉千真がプレスをかける。千葉、反転。しかし、余裕のなさがスリッピーな芝に足をとられるという不運も生んだ。ボールは奪われ、そのままネットの中へ。両チーム共に渇望した先制点は、首都のエースがしたたかに奪い取った。

F東京が採用した戦術は、今や定理として証明された感のある「広島対策方程式」どおり。前からのプレスで広島のビルドアップから自由を奪い、青山敏弘に監視をつけ、1トップ2シャドーの周りを人で囲い込む。この方程式を完遂させる最適の形が、3-4-2-1のミラーゲームだ。

ただ、この日の広島は「方程式の証明には穴がある」といわんばかりの勢いを見せた。開始早々、森崎和幸からの縦パスで佐藤が裏へと飛び出し、ファン ソッコのクロスがDFに当たってバーを直撃する「あわや」というシーンを導く。13分には青山からのロングボールで石原がフリーになり、決定的なシュート。ショートパスとロングパスの配分にメリハリがあり、後ろから厚みのある攻撃を見せた広島に、主導権は存在した。だからこそ、ミスからの失点は痛恨。しかし、この日の広島は下を向かない。同点にできる手応えをつかんでいたからだ。そして、その想いは62分に結実する。

青山のミドルから得たCKを蹴るのは、高精度の左足を誇るパク ヒョンジン。彼のキックは、F東京のマンツーマンをかいくぐったファン ソッコにピタリと合わせた。ここで「ヒールキック」というアイディアを見せたファンの狙いを、佐藤が見事な反転シュートで仕上げる。何度も好セーブを続けてきた権田修一も、なす術なし。広島、同点。

そしてここから、サッカーを愛する者たちにとっては至福の30分間が続く。互いの気持ちがぶつかりあい、共にリスクを背負って攻める、攻める。広島の塩谷司やF東京の森重真人ら、ストッパーも積極的に前に飛び出す。頻発したゴール前のシーンでは、権田と西川、二人の日本代表GKもビッグセーブを連発し、決壊を防いだ。激しくもフェアに身体をぶつけあい、フラフラになりながらも全力で長い距離を走りまくった。

サポーターのボルテージが急上昇した好勝負に転機が訪れたのは、81分のこと。それは、勝負の「アヤ」の深遠さを、改めて見せつけた場面だった。
ファン ソッコのドリブルから高萩洋次郎がボールを引きとった時、広島の6人に対しF東京が5人。数的優位の状態。ここで1本のパスが通れば、決定機が生まれる。
だが高萩の縦パスは、米本拓司に引っ掛かってしまった。ボールを拾ったのは、攻撃参加から必死に戻った森重。つぶそうとした高萩を跳ね返したストッパーは、水本裕貴がプレスにくるところを外し、彼はボールを運ぶ。
何気ない斜めのパス。だが抜群のタイミングで東慶悟に通したこの1本によって、森崎和と水本は置き去り、F東京は一気に数的優位をつくった。
東のクロス。首都のエースには塩谷がつく。もし正確に渡邉に入れば、高い確率で守れたはず。だがパスはズレ、さらに小さくイレギュラー。渡邉の足だけでなく、塩谷の反応を拒んだ。
そこには、ボランチの米本がいた。高萩のパスをカットしてから約70m、休むことなく前に走った。途中でボールを奪われ、広島にカウンターを受けるリスク大。しかしそれでも、彼は走った。それは、勝利への渇望、戦いへの意地、フットボーラーとしての本能。若いボランチが放ったシュートは西川の手をはじいて、ネットに吸い込まれた。米本拓司のビッグプレーがF東京に歓喜をもたらしたのである。

87分、ファンの突破から石原が放った決定的シュートを権田がはじく。90+2分、青山のスルーパスを受けた佐藤に森重が必死に身体を寄せる。死闘は終わった。勝ったのは、F東京。森保監督の広島、初の連敗である。

相手に主導権を渡しても我慢し、全力で走り抜いて5試合ぶりの勝利を奪ったF東京はもちろん、苦しめられた「方程式」に対する解決策の糸口を見つけた広島にも、収穫は少なくない。何より、この試合はエンターテイメントとして、楽しかった。ミスはある。失敗もある。しかし、それでもピッチの中にいる全員が前を向き、走り、勝利のために汗を流し、体力と知恵の限りを尽くして戦い抜く。こういう戦いを見せてくれるからJリーグは楽しく、そして、やめられないのである。

以上

2013.09.01 Reported by 中野和也
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