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【J1:第24節 大宮 vs 横浜FM】レポート:魂の堅守復活! 大宮の奇策、リーグ最強・横浜FMを封殺(13.09.01)

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試合後、アウェイ側の監督登場を待つ会見場。突然、スピーカーから声が響いた。何年もNACK5スタジアム大宮の監督会見に出席しているが、これは非常に珍しい。いぶかしがる記者もいたが、大宮の番記者たちはすぐに、その声の主が今日唯一の得点を挙げた渡邉大剛であり、ヒーローインタビューの音声が会見場に流れてきたのだと理解した。「サポーターの皆さんにはつらい思いをさせていて、自分たちもつらかった。サポーターの後押しがなければ勝てなかったと思うので、感謝しています」……そう語る声は涙に震えていて、もらい泣きする女性レポーターもいた。今年から大宮担当になった彼女は弱かったころの大宮をしらなかったし、負け続けたあとの一つの勝利がいかに感情を動かすものであるか、今日初めて知った。泥沼の8連敗から、大宮は暗く長いトンネルをようやく抜けた。

試合2時間前。スタメンが発表された段階で既に驚きがあった。8月半ばに緊急加入したオーストラリア代表のニールがセンターバックとして初先発し、それまで菊地光将とコンビを組んでいた高橋祥平がMF登録されていたのである。試合前日の練習を非公開とした大宮・小倉 勉監督は、「選手を集中させるためで、何も奇策なんかないですよ(笑)」と話していたが、実はこれを用意していた。高橋をアンカーにし、ノヴァコヴィッチをワントップとした4-1-4-1。ベルデニック監督時代を通じて一度も試したことのないこの布陣に、3戦目を迎える新米指揮官は勝負を賭けた。
「4-4-2で来ると思っていたので、少し戸惑ったところはある」と、敵将・樋口靖洋監督が述懐するように、奇策は奏功した。横浜FMのダブルボランチ、中町公祐と小椋祥平に対して大宮は青木拓矢と金澤 慎が当たり、トップ下の中村俊輔に対しては高橋が「今日は中村俊輔さんを潰すことしか頭になかった」という言葉通りのプレーを遂行した。「(攻撃では)中盤は相手のボランチ2枚に対してうちは3枚になるはずだったが、そこが3枚対3枚になった。(守備では)3トップ気味のところに長いボールを蹴られて、うちのボールの取りどころである真ん中のボランチのところを外された」(樋口監督)ことで、横浜FMは最大の武器である中盤でのポゼッションと、素早い切り替えから高い位置で奪い返してのショートカウンター、その威力を半減させられた。
とはいえ試合の主導権自体は横浜FMが握っていた。中盤の枚数を増やしたとはいえ、大宮は高い位置でボールを奪えていたわけではなく、全体的には高い個人技を誇る横浜FMに押し込まれていた。攻撃でも「向こうのボランチのプレスを受けないように、一つ飛ばしてノヴァコヴィッチに入ったところを、僕やヨンチョル、青木、慎くん(金澤)がサポートするように」(渡邉大剛)していたが、前線に人数が少なく、攻め手はカウンターしかなかったし、その形もなかなか作れなかった。

ただこの日の、大宮の選手たちの気迫には目を見張るものがあった。前回の対戦では「中村俊輔選手のフリーキックを警戒するあまり、ファウルをしないようにという意識があって球際を強く行けなかった」(金澤 慎)、その反省もあって、選手たちは臆せず横浜FMの選手に食らいついた。試合を通じて横浜FMに与えたフリーキックが20本以上を数えた事実が、大宮の守備がいかに激しかったかを物語っている。もちろん弊害もあり、前半11分に中町のヘディングがバーを直撃するなど、中村のフリーキックから何度もゴールを脅かされた。だが逆に言えば、前半の決定機はほぼそれだけだったと言っていいくらいに、横浜FMは大宮を攻めあぐねた。
そして42分、ニールの矢のような前線へのフィードが前がかりになっていた横浜FMの最終ラインの間隙を突き、ノヴァコヴィッチが裏へ飛び出す。前線に渡邉と青木が駆け上がる。ノヴァコヴィッチからマイナスのボールを受けた渡邉は、冷静にボールを止め、視線と体の向きでファーへのフェイントをかけた。目の前に入った栗原勇蔵の足を開かせ、その奥に構える榎本哲也をファーに動かしておいて、栗原の股間から横浜FMゴールのニアを射抜く。爆発するオレンジの歓喜。ここまで早い時間の先制を許して苦しいゲームを続けていたチームが、待望の先制点を奪って試合を折り返した。

試合後半。当然、横浜FMは怒濤の猛攻を見せた。12分にはドゥトラのクロスからマルキーニョスがペナルティエリア内で決定機を迎えるが、江角浩司が素晴らしい飛び出しで防いだ。大宮の4-1-4-1の弱点である「アンカーの脇にボールを運んで高橋の脇にボールを運んで」(樋口監督)、横浜FMは前半以上に押し込んでいく。しかし、大宮の体を張った守備が、横浜FMに簡単にはシュートを撃たせなかった。ばかりか、「バランスを崩して攻めて、リスクを負いすぎた」と中村が振り返る通り、焦りから無理攻めした横浜FMはセカンドボールを拾って分厚い攻めにつなげられず、逆に拾った大宮のカウンターから何度も決定機を作られかける。後半のシュート数は横浜FMが5に対し、大宮は7。圧倒的に攻めながらも、横浜FMは最後まで大宮ゴールを割ることはできず、逆に90+3分には大宮のショートコーナーから青木と下平 匠に止めを刺されかけた。その直後、逆に横浜FMのコーナーキックから途中投入された端戸 仁のヘディングシュートが枠を襲うが、江角のビッグセーブに阻まれる。大宮の伝統、魂の堅守の前に、リーグ最強・横浜FMはこの日、最後まで沈黙した。

試合終了のホイッスルが響いた瞬間、渡邉はピッチに座り込み、「自分の中にこみ上げてくるものがあった」と、拳で芝を何度も叩いて絶叫していた。最終ラインでは、ここまでコンビを組んで大宮の守備を支えてきた菊地と高橋が仰向けに倒れ込んだ。菊地はキャプテンらしく、すぐに下平の手を借りて起き上がり、チームメイトと抱擁を交わしていたが、連敗中に増えた失点の責任に悩み、この日は髪色を黒に染め直して臨んだ高橋は、その足元で放心したように天を仰ぎ、しばらく動かなかった。
ベンチでは小倉監督が派手なガッツポーズで喜びを露わにし、整列後には途中交代したヨンチョルが真っ先に飛び出して菊地と抱き合った。久しぶりの勝利のチャント、「寝ても大宮」がスタンドを揺らす。ゴール裏だけでなく、メインスタンドもバックスタンドも立ち上がって手拍子を合わせた。あの連勝中を思わせる、いやそれ以上の一体感と幸福感が選手とサポーターを包んだ。いかにこの8連敗が長く、苦しかったことか。そして、そこから抜け出すためには、どれだけのエネルギーが必要だったか。お世辞にも、きれいなサッカーではなかった。多くの時間を自陣ではね返すことに費やした。しかしカウンターの切れ味は鋭く、そして、激しく粘り強い守備は、その泥臭さゆえに見る者の胸を打った。この勝点3には、それ以上の価値があった。

横浜FMは、今年もアウェイの大宮戦で勝利することができなかった。今節も首位をキープするものの、2位に浮上した浦和に勝点1差に詰められた。内容では大宮を上回りながら、同時に大宮に攻略法を示された形となったことは、今後の戦いに影響してきそうだ。「どの相手にも自分たちのスタイルを出さなければいけないし、臨機応変に対応できないといけない」(兵藤慎剛)。それができれば優勝が見えてくるはずだ。
横浜FMに始まった連敗を横浜FMで止めた大宮は、まずは安堵といったところ。負け続けることで自信を失い、それがプレーに影響する悪循環を続けていただけに、どんな形であっても勝利したという事実が大きい。しかし、あくまで今回の勝利は、「相手に合わせて、現実的に、負けない戦いをした」(青木)ものであることを忘れるべきではないだろう。同じやり方が、横浜FM以外の相手に通じるとは限らない。自信を回復するきっかけになったのは確かだか、今後の戦いで勝点を積み重ねて行けると自ら信じられるような内容を示したわけではない。ここで弛緩した空気になるようでは、いつでもチームは逆戻りする。その怖さをこの夏、大宮は知った。勝ったからこそ、兜の緒を締めなければ。むしろ戦いはこれからだ。

以上

2013.09.01 Reported by 芥川和久
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