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【J2日記】山形:雪かきのための狂想曲(後編)(14.03.24)

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(C)佐藤円

一面真っ白だったグラウンドが、スタッフやサポーターの共同作業で使用可能な状態になっていく。いつもこのパワーには驚かされる

(C)佐藤円

進むごとに雪はゴロゴロ固まり、やがて両脇からこぼれ落ちていく。

(C)佐藤円

「僕たちが練習できているのは、みなさんのお陰です」。選手会長・山田拓巳選手がボランティアで除雪作業を行ったサポーターに感謝の言葉を伝えた

(C)佐藤円

「選手のために」と雪かきしたサポーターと、「サポーターのために」とピッチで戦う選手たち。ボタ雪舞うなか、表情は笑顔だった

3月12日朝8時頃、雪かきが行われるサブグラウンドでは、クラブスタッフとともにすでに10人ほどのサポーターが除雪作業に取りかかっていた。ふだんよりも人数が多かったのは、クラブ広報がツイッター等でサブグラウンドの様子を詳しく知らせ、「大雪になって、もしかしたら練習ができないかもしれない」という危機感が伝わっていたためのように思う。そんな皆さんの様子を見ると自分も取材するだけでは済まない気になるので、日頃の運動不足もあるし参加してみる。どんなに寒くても作業を始めるとたちまち体が温まってくるので、2着着ていたダウンコート(着過ぎだと指摘されている)を1着脱ぎ、ポケットに水分補給用のスポーツドリンクを忍ばせ、倉庫内に準備されている除雪用具を手にグラウンドへ向かった。

すぐに佐々木雅博サブマネージャーを見かけたので作業内容を確認すると、「とりあえず半面空けます」とのこと。雪は降り続く予報だった。どれだけの練習スペースが確保できるか、作業の進捗状況で練習メニューも変わってくるため、マネージャーが石崎信弘監督やコーチングスタッフと常に連絡を取り合いながらの作業となる。すでにハーフコートの縦半分の作業は着手され人数も十分にいると判断したので、自分は手つかずの逆サイドから作業を始めることにした。

気温が低ければ、積もっているのはサラサラのパウダースノー。重さもなく、簡単に履き取ることができるが、積もってから解けかけたこの日の雪は水分たっぷり。重いうえに、ラッセルする(除雪して道を作る)うちにどんどんくっついて固まり、さらに重さを増していく。中央から外へ、タッチラインにたどり着く前には大きな塊になり、その一部がスコップの両脇からどんどんこぼれ落ちていく。しかも冬枯れして茶色く見えるといっても天然芝のグラウンドなので、なるべく削り取らないような配慮も必要だ。息を止めて踏ん張る回数が増え、次第に酸素が不足してくる。

雪かきで無理をして倒れかけた経験があるので、スポーツドリンクを口に含んだりちょいちょいサボりながら、決して無理しないことにしているが、やはり前日も酸素欲しさに足を止めて深呼吸をしていると、顔見知りの女性サポーターに声をかけられた。「円さん、最終戦でいいことあるよ」。その方は小柄だったが重い雪を平然と扱い、息の乱れもなかった。「チーム愛」などと簡単に口にするのもおこがましいくらい、鍛えられた鋼のような強さが感じられた。「最終戦でいいことあるよ」。おそらく、雪かきボランティアに参加する多くのサポーターが同じような思いを持って、自分の時間を捧げ、重労働を乗り切っているのだろう。手を休めてふと顔を上げたとき、最初に作業を始めていたグループはハーフウェイラインを越え、もう半面の作業に突入していた。どうやら順調に作業が進んでいるようだ。サポーターの人数も開始直後の倍ほどに増えている。そして誰もが黙々と作業に取り組んでいた。

作業開始から約2時間後、全面除雪完了。相変わらずボタ雪が降り続いていたため、滑ってケガなどないように、午前中にサーキットで使用するゾーンだけ表面を再度除雪してボランティアの任務は終了。選手会長・山田拓巳選手が代表でお礼のあいさつ。「僕たちが練習できているのは、みなさんのお陰です」。選手たちが練習や試合で頑張ってくれること以外に見返りを求めないピュアなサポーターには、何ものにも代えがたい言葉だ。

その日以降雪は収まり、除雪の心配はなくなった。そして迎えた16日のホーム開幕戦は3−1で今季初勝利。会見場の石崎監督やミックスゾーンの選手たち、ゴール裏のサポーターからも、雪かきボランティアに対する感謝の言葉が聞かれた。毎年雪との戦いを強いられることは、時間的にも費用的にも、そして精神的にもハンディキャップには違いない。ただし、今季就任した石井肇テクニカルダイレクターが、積雪地域のクラブであることに関してこんな話をしていた。「こうした環境を逆にバネにしてタフなチームをつくることのほうが、そこから大事なものも出てくるし、おもしろみがある。そういう特色のあるクラブや選手にしたい」。また1つ雪の季節を乗り切ったからこそ身につけた強さを武器に、山形は今季を戦っていく。

以上

2014.03.24 Reported by 佐藤円
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