6月4日(土) 2011 J2リーグ戦 第15節
鳥栖 1 - 1 徳島 (13:04/ベアスタ/5,242人)
得点者:42' 岡本知剛(鳥栖)、85' 衛藤裕(徳島)
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攻め続けても、追加点が奪えない。攻められても、得点は許さない。そんな表現で試合を評する事ができる90分の戦いだった。結果は引き分けで終わったが、その内容は互いの立場に立ってみると、それ相応の評価ができる試合だったと言えるだろう。そして、互いに特筆すべき選手がいた。鳥栖はMF岡本知剛であり、徳島はMF衛藤裕である。
今節の鳥栖は、徳島のストロングポイントであるサイドからの攻撃を上手く封じ込んだ。ワントップ気味に位置するFWドウグラスに入るボールに対して厳しく対応した。その入るボールに対してインターセプトを狙い、入ってきたボールに対してセカンドボールを拾い続けたのが岡本知剛である。
鳥栖は、サイドDFも攻撃に参加する機会が多いが、その開いたスペースを埋めることも、この日の岡本知剛は忘れていなかった。この結果、徳島のFWとMFの距離が少しずつ離れていき、徳島ゴール前にボールを運ぶことに手を焼くことになった。
優位に試合を進めていた鳥栖に得点が入る。42分のことである。前半最初のCKは42分、ボールをセットしたMF金民友が岡本知剛を呼んだ。呼ばれた岡本知剛は金民友に走り寄り、ボールを受けた。金民友とのパス交換で身体を徳島ゴールに向ける事ができた岡本知剛の目には、徳島GKオ スンフンとゴールポストの間にわずかな隙間が見えていた。そこに低い弾道の強烈なシュートを打ち込んだのである。彼自身、プロ選手としての初ゴールは、今節の鳥栖の先制点となった。
この日のMF衛藤裕は、鳥栖の効力な攻撃陣に対するために、いつものトップ下の位置よりもさらに低い位置に入っていた。この位置でプレーを行うことは、前線での攻撃が薄くなる可能性もあったが、鳥栖の攻撃を抑えることには有効だった。前述したように、FWとの距離ができてしまったが、逆に鳥栖のDFも高い位置を取ることができずに畳み掛ける攻撃の回数が減っていた。衛藤裕が低い位置でプレーをすることで、徳島の攻撃は単調になりがちだったが、85分に一矢を報いることができた。左サイドから途中出場したFW津田知宏のクロスボールをドウグラスが競って落ちてきたところに、衛藤裕が走りこんでヘディングでネットを揺らしたのである。今シーズンの初ゴールが、古巣鳥栖相手の同点弾となった。
彼ら2人の活躍に対して、派手さはないがもう2人だけを挙げさせて頂きたい。
鳥栖はCB木谷公亮であり、徳島はCB三木隆司である。両ベテランの相手の攻撃の意図を読み取ったポジショニングは、直接ボールに触れなくても、プレーに関与している事を知らしめる内容だった。
木谷公亮は、前線に入ってくるボールに対してアプローチをかけさせ、自身は入ってくるボールに対しての対応を行っていた。同様に三木隆司は、入れ替わり飛び込んでくる鳥栖の攻撃陣に対して、身体を張ってコースを遮断することとその飛び込んでくるスペースを埋め続けていた。
この2人のプレーは、“得点を許さない”というよりも、“攻撃の芽を摘む”と表現したほうが伝わりやすいだろう。
得点を挙げた2人のMFと攻撃の芽を摘み続けた2人のCB。形は違えども、どちらも自分たちの持っているパワーを90分間通して表現し続けたプレーだった。
ある他競技の選手がサッカーを次のように表現したことを聞いたことがある。
「サッカーはわかりやすい。ボールをかごの中に入れると得点だから・・・」
確かに他の競技者がサッカーを表現するとそうなのかもしれないが、そこに至るまでには幾多の過程を経ている事を私たちは知っている。
幾多の過程を経るからこそ、得点の難しさと感動を見ることができるのであり、見ている人を惹きつけるのである。
サッカーの得点は、どんなゴールでも1点なのである。たかが1点だが、されど1点なのである。
1点の重みを知っているからこそ、ワンプレーごとに一喜一憂できるのであり、その過程を楽しんでいるのである。
サッカーは、どのシーンを取り上げてもゴールを向いているスポーツなのである。
以上
2011.06.05 Reported by サカクラゲン
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