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【今、大阪のJがアツい】“ミスターガンバ”松波正信の13年。(05.11.30)

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今年に入り、ベテランの域に達した名選手の引退が相次いでいる。今年の11月2日、いち早く引退を発表したガンバ大阪の松波正信もその一人。ナビスコカップ決勝を前に発表された引退の事実に驚きとともに、感慨に耽った方も少なくはなかったはず。その、サッカー界に名を馳せた名選手が13年間を通じて、ガンバ大阪に遺したもの、サポーターと築いた関係とは?


●ホーム最終戦。引退セレモニーで。
 11月26日。ジェフ千葉戦後の万博スタジアム。ライトが落とされ、真っ暗になったスタジアムの電光掲示板『G-VISION』に浮かび上がる、FW松波正信の13年間の軌跡。13年を経た今でも何ら変わっていないようで、13年という重みをヒシと感じる若かりし頃の松波正信の顔が大きく映し出される。続けて、ゴールマウスに肉迫して放たれてきた豪快なゴール集。その全てを、たった数分の映像で切り取ることは不可能だろうが、それでも、彼がこのガンバ大阪に欠かせない存在であったことは、見てとれる。そう、松波正信は、いつの時代も、常にガンバ大阪のど真ん中で、存在感を示してきた。

 入団初年度の93年。チーム史上初の入団会見を開くに至るほど、注目を集め、人気の絶頂にいた。帝京高校のエースとして名を馳せた彼のガンバ大阪入りに、各メディアの取材が集中。その人気に劣らずプロサッカー選手としてピッチで結果を残すことも忘れなかった。Jリーグ初出場は93年5月22日。万博スタジアムでのジェフ市原(現・ジェフ千葉)戦。あの日から、今日まで。ガンバ一筋での現役生活だった。

 その『ミスターガンバ』と親しまれた日々に、ピリオドを打とうと決めたのは今年に入ってから。というより、頭の中にはずっと、その『引き際』をどうしようかという思いがあったと聞く。そして引退を発表した今も「引退して良かったのかな」と何度も自分に問いただす日々が続いているそうだ。引退発表の日から多数寄せられ続けているファンの方たちからのメールや手紙に目を通すたびに。練習や試合で「やっぱり、まだできるんじゃないか」という瞬間を自身で味わうたびに。おそらくは、引退セレモニーが行われていた最中でさえも、彼の頭にはそんな思いが過ったに違いない。ガンバ大阪を愛し、サッカーを愛すればこそ『現役』に対して未練が募るのは当然のこと。だが、マイクの前に立った彼は、その全ての思いを封じ込めるように、ひとつ、大きな深呼吸をして、決断の言葉を口にした。

『13年間、この万博のピッチに立ち続けられらたことに、感謝しています。たくさんの人に支えられてここまできました。クラブ社長、フロント、メディカルスタッフ、監督、コーチングスタッフ、そして、チームメイト。全ての人に本当に感謝しています。また、ガンバ大阪をいつも支えてくださった副会長、ロート製薬、でん、シャディ、全ての名前を挙げることはできませんが、多くのスポンサーの方々に、本当に感謝の意を述べたいと思います。ありがとうございました。そして、グラウンドの外で僕を支えてくれた皆さん、いつもそばで支えてくれた妻、子供たち、家族のみんなにこの場を借りて感謝したいと思います。最後になりましたが、アウェイ、ホームに関わらず、勝っても負けても応援を続けてくれたサポーター、本当に僕の宝物です。どうもありがとう。
 今日、万博での僕のプレーは最後となりましたが、ガンバ大阪というチームはこれからも続いていきます。どうか、これからもガンバ大阪の応援をよろしくお願いします。また、遅くまで、残ってくれたジェフサポーターにも感謝しています。ありがとうございました。
 このガンバ大阪でのプロ生活は、幸せ、ただそれだけでした。皆さん、ありがとうございました。』


●プロフェッショナルに戦い続けた、13年。
 『幸せ、ただ、それだけでした。』ーそう声を震わせた13年間の現役生活。その『幸せ』は何も、降って沸いたものではなかったはずだ。今になって振り返れば、いい時ばかりを過ごした訳では決してなく、悔しさを味わった日々も決して少なくはなかったが、それでもグラウンドにはいつも、努力を忘れず、常にFWとして『ゴール』を求め、『プロフェッショナル』としての姿を追い求めてきた彼の姿があった。
プロ1年目のシーズンとなった93年。6月9日のサンフレッチェ広島戦で、初先発、初ゴールの偉業を達成したのを皮切りに、同年11月20日には史上最年少のハットトリックを達成(注:現在も記録は破られていない)。以後もコンスタントに出場を続ける中、97年には自己最多となる13ゴールを挙げるなど、華やかな活躍が目を引いた時期もあったが、2000年頃からは、控えにまわることに。終盤、チームが苦しくなった際のアクセントとして、残り15〜20分という短い時間の中での結果が求められる試合が増えた。それでも、常に与えられた役割に徹し「チームのために」戦える選手であり続けてきたことは、ピッチに立つ彼を見れば一目瞭然。“スーパーサブ”の異名は、屈辱であった一方で、誇りでもあったはずだ。そういえば、今や日本代表FWに成長したチームメイト、FW大黒将志が、札幌へのレンタル移籍から戻った02年シーズンを振り返り「僕もサブにまわることが多かったけれど、松波さんのそばで、どんな風に試合を迎え、どんな風に出番を待ち、心と身体の準備をしたらいいかを学べたことは、自分にとってすごく意味のあることだった。それが今の自分の支えになっている」と話していたことがある。そうやって、自分が身を持ってプロフェッショナルな姿を示すことでチームメイトを鼓舞し、若手に刺激を与えてきたのも、松波らしさだった。

 また、常に応援してくれるサポーターに感謝の気持ちを忘れず、その交流を大切にしてきたことも忘れてはならない。練習場に訪れるファンにサインや写真撮影を頼まれれば、その前を素通りすることはなかったし、緊張した面持ちで話し掛けたり、手紙をくれるファンに自ら手を差し出して握手を求め、「ありがとう」の声を掛ける光景を目にしたことも、数知れない。98年から毎年実施してきた『松波シート』も、彼が提案して実現したものの1つ。98年から毎年欠かさず、ホーム開幕戦と最終戦には、ホームタウン地域にある養護施設の子供たちを100名ずつ、ボックス席に招待した。「たくさんの子供たちにとって“遠足”にくるような、そんな楽しみな気持ちを味わってもらいたい。夢に満ちあふれた子供たちに見に来てもらうことが、僕自身の励みにもなる」そう言い続けて、8年目。今季のホーム最終戦となった、11月26日のジェフ千葉戦も例にもれず、招待された子供たちが、枯れんばかりの声を張り上げて声援を送っている。この日は69分からの途中出場だったが、ゴール前で身体を張り、ピッチを動き回ることによって伝えられた、彼なりの“メッセージ”。ヘディングで放ったシュートは、残念ながらゴールネットを揺らすことはなかったが、この日招待された茨木市のかしの木園の園生の方たちは『ガンバレ! 松波選手 11』というプラカードを持って声援を送り、セレモニーはもちろんのこと、彼がピッチから姿を消す最後の最後まで手を振ることで、彼の“メッセージ”を受け止めた。「松波選手には、これまで何度も『松波シート』にご招待いただきました。おかげで園生の中にはJリーグやサッカーに興味や感心を持つ人が増えました。今日は最後まで園生みんなで声援を送らせていただき、引退セレモニーを見届けました。初めて観戦した園生は『楽しかった。すごかった、また来たい』と目を輝かせて興奮していたものです。彼らの生活の中に楽しみが一つ増えたことを大変嬉しく思っています。松波選手のおかげです。ありがとうございました」とは園生を引率した職員、福原利人氏の言葉である。

 思えば『ホーム最終戦にどんな姿を見せたいですか?』ー引退会見の席で、こう質問された松波は多くは語らず、ただ「ガンバのユニフォームを着て、襟を立て、ピッチに立つ姿を見て欲しい」と答えた。そして実際、11月26日、何の縁か、93年、自身が初めてプロとして戦ったチームでもあるジェフ千葉戦で、橋本篤マネージャーによってアンダーシャツに縫い付けられたトレードマークの『襟』をしっかりと立て、ピッチに立った。そして、持ちうる力の全てを注ぎ込んでガムシャラに走り回り、ゴールを目指し続けた。13年間、常に示し続けてきた姿と同じ姿が、そこにはあった。
 ただ、違ったことがあるとすれば、来季はもうその姿を見れないということ。ピッチの上で『ガンバ大阪・松波正信』を楽しめないということ。ガンバサポーターの松波コールを聞けなくなること。ホーム最終戦で、ジェフ千葉サポーターがセレモニー終了後まで席を立たずに『松波コール』をしてくれたことからも分かるように、ガンバ大阪のみならず1プロサッカー選手、松波正信として示してきたプロフェッショナルイズムに触れられなくなること。
 そのことを、彼の次なる人生に期待を抱く一方で、寂しくも感じている。

2005.11.30 Reported by 高村美砂
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