今日の試合速報

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第15節 甲府 vs 富山】レポート:富山に輝ける勝利をプレゼントした甲府は、昇格圏を遠い宇宙にしないための正念場のど真ん中にいる。(09.05.18)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
5月17日(日) 2009 J2リーグ戦 第15節
甲府 1 - 2 富山 (14:03/小瀬/8,008人)
得点者:2' 森田浩史(甲府)、48' 石田英之(富山)、74' 石田英之(富山)
スカパー!再放送 Ch180 5/18(月)18:00〜(解説:堀井岳也、実況:桜井和明、リポーター:吉岡秀樹)
顔写真クイズ勝敗予想ゲーム
----------
前半の途中から、「森田浩史にマン・オブ・ザ・マッチをあげたい試合」と、ずっと思っていた。杉山新のアーリークロスに合わせた先制ゴールだけでなく、森田のボール捌きはワンタッチで落とすだけでなく、タメたり前を向いたりと多彩で、いい起点になっていたと思ったからだ。試合前のJ1・J2通算200試合出場達成のセレモニーで母・順子さんから花束を貰い、ハグされて照れ笑いする姿も珍しく脳味噌に焼き付いていた。「甲府の巨神兵・復活」やら「ママのハグでゴール量産」など前頭葉の隅にあるネタ創り中枢が活動を始め、動きの悪い昭和製のハードディスクの中から言葉を拾い出そうと動き出した。

甲府の立ち上がりは素晴らしくよかった。常々、立ち上がりの主導権が取れている時間帯に先制ゴールを決める試合を見たいと思っていたが、開始2分で森田が素晴らしいヘディングシュートを決めた。第1クール序盤の甲府を3ゴールで救ってくれた森田が11試合ぶりのゴールを決めたことも嬉しかった。前半の立ち上がりにゴールを決めれば、「相手が出てくるところでカウンターを決めて追加点」という流れになると期待した。しかし、富山は失点しても前に出る圧力を強く出来ない。前節(第14節)の仙台戦で、開始1分未満で失点した悪夢の再現に直面した選手は、想像以上に硬かったのか、立ち上がりの意識の仕方が間違っていたのか積極性を失った立ち上がりだった。長山一也は「リスクを無くすために開始15分くらいは蹴ろうとした」と言うが、それはリードした状態の終盤の最後の戦法。だが、開始6分に降りだした雨が富山の悪夢を洗い流した。甲府の選手はボールを持てるから、全盛期の東京Vのサッカーみたいに個人技で中央突破をやり始める。当時の東京Vとの違いはそれだけのスキルとスピードがある選手がいないということ。安間貴義監督は「本能でプレーし始めた」と表現する。前半20分になるころには、内容がよくてもゴールが決まらなければそのバランスを保ち続けることが難しいことを痛感するようになっていた。

前節に富山と対戦した仙台は畳み掛けて前半11分、36分に追加点を挙げて、早々と止めを刺した。しかし、甲府にはそれが出来なかった。スタジアムDJが「ゴ〜〜〜ル」の「ゴッ」だけを言ってしまった18分のマラニョンのシュートもあったが、オフサイドに終わったこのシュートを含めても決定機は少なかった。自分勝手全開の攻撃はシュートには繋がらない。メッシやドログバになったつもりだったのか。逆に富山は押し込んでミドルシュートを打つ場面が出てきた。前半は何とか1−0で終えたが、立て直すまもなく後半3分に富山・石田英之に同点ゴールを決められてしまう。この石田のシュートは素晴らしかったが、後半の立ち上がりに同点に追いつかれたのは甲府にとって痛いし、富山には活力になった。

それでも、5分と14分にシュートを打った森田はチャンスに絡んでいた。特に、ネットを揺らした14分のシュートはオフサイドギリギリで、クロスを入れた美尾敦との素晴らしいコンビネーションだった。後半20分頃までは、まだ何とかなると期待を十分に持っていたが、甲府の崩壊は前半から始まっていた。前半の途中にCBの山本英臣がベンチに向かってえらい剣幕で何か言っていたが、これはコンビを組むダニエルが富山のクサビとなる選手にマークに行けていないことを、通訳を通じで明確に指示して欲しいということだった。安間監督はそれ以前からそのことを言っていたそうだが、それは通じていなかった。また、決勝点となるPKを与えた秋本倫孝のファールも論外の行為だった。アンカーとしてプレーの精度が高まっていただけに残念なプレー。安間監督は攻撃から守備に切り替わった瞬間のスタートポジションの悪さを敗因の起点と言うが、それを起点に守備の連動は出来ずに「全部がぼかした状態」で甲府の守備は続いた。後手を踏んでボールに飛び込む甲府の選手は、富山の選手にとってワンツーのいい練習台になっていた。一時的にそうなることはあっても最後まで修正することが出来なかったことは甲府の大きな課題。

甲府に長く在籍する選手は「甲府のサッカーは面白い」と言う。安間監督が選手の自主性を重んじて判断する余地を多く与えているからだ。選手は自由で楽しいと感じているんだと思う。しかし、そのサッカーでJ1に昇格してJ1のクラブに再挑戦をしたいのなら、判断する余地を多く与えてくれている監督に報いるとき。山本は「安間監督が自主性を持たせてくれているのは、そうしないと(判断を含めて)スキルアップしないから。今日の試合を前線の選手から見れば、『前はボールにプレッシャーを掛けているのに、後ろがついてこない』ということになると思うけど、後ろの選手から見れば『そのプレッシャーだと(どこにでも)ボールが出る(からパスコースを読んだディフェンスが出来ない)』と言うことになる。この差がチームの中にあったから上手くいかなかった」と言う。

富山の長山が「C大阪とは引き分けたけど、上位には勝てていなかった。この勝利は自信になると思う」と、キラキラ輝く顔で話してくれたことが妙に印象に残っている。こういう清々しさが羨ましい。チャレンジすることは得意でも、チャレンジされることには慣れていない甲府の選手たち。ピュアでもなければ傲慢な強さもない。J1を2年経験し、J2の昇格候補2年目を迎えても自信と現実のギャップを埋めきれない。(愛媛や富山に敗れた)甲府の活躍で昇格圏入りを目指すセカンドグループの勝点差が詰まってきたが、昇格圏を遠い宇宙にしてしまわないために甲府の選手は今こそ自主性を発揮するときだ。

以上

2009.05.18 Reported by 松尾潤
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着