第83回全国高校サッカー選手権大会
2004年12月30日 13:10 Kick off/国立競技場
羽黒(山形) − 城陽(京都)
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12月30日。83回目を迎える高校サッカー選手権が開幕する。歴史と格式、伝統に彩られながらも、他のスポーツに見られる「堅苦しさ」が少ない大会。それは良くも悪くもこの大会が、高度経済成長期に日本テレビと二人三脚で発展してきたものだからだろう。時に「商業主義」だの「煽りすぎ」だのと揶揄されることもあるが、間違いなくその民間的な手法がこの大会を日本サッカーが奇しくもこの大会が関西から関東へ、そしてNHKから日本テレビへ移ったころから始まりだした「メキシコ後」の「暗黒時代」を支えつづけてきたのだ。Jリーグ誕生も、その後の躍進も、この大会が日本サッカー界の“熱”をギリギリのところで保ちつづけてきたからこそである。選手権がなかったら、日本人は「暗黒時代」でサッカーのルールを忘れていたに違いない。
いきなりで恐縮だが、今年の選手権は「タレントの絶対量」という意味ではそれほど恵まれた大会ではない。Jリーグのユースチームに多くの人材が流れ込んでいることと、期待された有力校の一部が予選で敗退してしまったせいである。しかし、「質」的には非常に楽しみな素材が揃っている。例えば、「話題性」という意味ではまったくないが、星稜(石川)の本田圭佑(3年)はここ数年で最高のMFだろう。「トップ下ばかりじゃないか!」と嘆かれたのも今は昔で、すっかり傑出したタレントが出てこなくなったポジションにようやく新星が出てきた。正確かつ強力な左足のキックという武器を手に、トップからSBまで自在にこなし、展開力、突破力、得点力のすべてが同年代トップクラスである。G大阪ジュニアユースからユースへ上がれず、星稜へ行くことになったが、そこで化けた。身長も大きく伸び、U-19日本代表の大熊清監督が「強さを持っている」と語るようにジュニアユース時代は見られなかったフィジカル面の資質も開花。U-19日本代表候補合宿で「人生初」だという3バックの左CBを任されたときも、同様に慣れないポジションを任されてふて腐れる選手がいる中、「トップ下だけの選手だと思われたくない」と必死に取り組むなど、大成する選手に不可欠な「どん欲さ」も持っている。総合力という意味では、中村俊輔(レッジーナ)の高校時代と比較しても遜色ない。「名古屋への入団後にトップレベルでもまれて、どう化けるか」(大熊監督)が大切なのは言うまでもないが、類まれな資質を持ったこの選手の高校最後の舞台を見ておくのは悪くないだろう。
「見ていて面白い」という意味では鵬翔(宮崎)のMF興梠(こうろき)慎三が一番「オススメ」かもしれない。姓の読みも「難読」だが、プレーはもっと「難読」。奇想天外な動き出しと、見ている者、対戦相手、そして味方も意表を突かれるプレーで、ピッチ上に独特の「絵」を描くファンタジスタ。ドリブルは意外に力強く、高校生レベルではなかなか止めるのは難しい。まだまだ試合の流れの中から埋没してしまうこともあるが、大会屈指の注目選手であることは間違いなく、鹿島入団後の飛躍も楽しみだ。
守備的MFでは藤枝東(静岡)の赤星貴文(3年)の名前が挙がる。ピッチを広く俯瞰し、鋭い感性を生かしてゲームを作るボランチ。ドリブルやシュートも秀でており、課題だった守備面が大きく改善したことでトータルに完成された選手に近づきつつある。卒業後の浦和入団が内定済み。FWはやはり、国見(長崎)の渡邉千真(3年)だろう。パワフルだが敏捷性にも優れ、技術も高い。CBにも、鹿児島実の岩下敬輔(3年)、東福岡の近藤徹志(3年)、福島東の大原卓丈(3年)、西武台(埼玉)の福田俊輔(3年)、市立船橋(千葉)の渡邉広大(3年)、実践学園(東京)の鈴木佑輔(3年)、青森山田の橋本和(3年)、草津東(滋賀)の畑尚行(3年)など、なかなかの逸材が揃っている。
チームでは、前回王者の国見はもちろん注目。ただ、例年ほどの飛び抜けた力はない。特に3バックは12月に至ってもまだメンバーが固定できないなど、悩みは多い。老練の宿将である小嶺総監督の采配に期待したいところだ。打倒国見の候補筆頭は鹿児島実か。組み合わせにも比較的恵まれており、図抜けた選手はいないものの「走・攻・守」のバランスが取れた好チームに仕上がっており、連戦に耐える体力と選手層もある。「常連」の市立船橋は初戦で6年ぶりの栄冠を目指す東福岡と対峙する。今年の市船は例年のようなタレント集団ではないが、チームとしてのまとまりはよく、十分優勝を狙えるだけの「もの」は持っている。例年「鬼門」となることが多いPK戦も今年はGK中林洋次(3年)を中心に絶対の自信を持っている。対する東福岡は今年も例年通りにワイドに開いたウイングを使ってサイドから執拗に攻めるサッカーを見せる。市立船橋との試合は二回戦屈指の好カードだろう。
おなじみの常連校は今年もグッドチームが揃った。藤枝東はMF赤星に加えて、U-16日本代表候補だった左サイドの鈴木崇記(2年)、U-17日本代表のFW中村祐輝(2年)など有望株が揃う。青森山田はU-16日本代表のエースだったFW小澤竜己(2年)を筆頭に侮り難いタレントを揃えているが、主将の左SB那須川将大(3年)が直前の練習試合で負傷して離脱したのが痛い。東北勢は青森山田以外の各校も揃って力のあるチームで、勝ち上がりが期待できそう。中田英寿(フィオレンティーナ)を輩出した韮崎(山梨)も大会のダークホースとなり得る。伝統のドリブラーであるFW柏好文(2年)を中心とした攻撃と、バランスの取れた守備が光る。破壊力にあふれる攻撃陣を持つ多々良学園(山口)、伝統の中盤に加えてFW市原大嗣(2年)、DF坂本和哉(2年)というU-17日本代表の攻守コンビが目立つ大津(熊本)、初戦で本田擁する星稜と対峙する前回4強で破壊的な攻撃陣を持つ滝川第二(兵庫)も初タイトルを虎視眈々と狙っている。
初出場「13」は、参加校が32から48へ拡大されたときを除けば最多となる。8強以上へ顔を出すチームも普通にありそうだ。埼玉代表の西武台は初出場というのが驚きの強豪で、今年も強力2トップとよく整備された中盤を武器に戦う好チーム。佐賀東も守備がよく整った意外な好チームで、藤枝東も油断していると足元をすくわれかねない。GK扇本雅史(3年)が注目の津工(三重)、大型高速FW堀川恭平(3年)を擁し、守備陣も駒が揃っている済美(愛媛)、堅守が武器の実践学園、ドリブラーのMF長谷川博一(3年)、ボランチのMF松水隆憲(3年)などを中心に魅力的なサッカーを見せる広島観音も注目。広島ユースに土をつけたことのある数少ないチームのひとつだ。
フレッシュなチームが揃った今年の選手権。飛び抜けた選手、チームが見当たらない分だけ、各試合の面白味は大きい。「番狂わせ」は選手権の醍醐味のひとつだが、今年は特にそれが多く楽しめそうである。
以上
2004.12.29 Reported by 川端暁彦(エル・ゴラッソ)
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