第84回全国高校サッカー選手権大会 開幕戦
甲府東(山梨) 2-5 一条(奈良) (13:10キックオフ/国立/6,835人)
得点者:'8 徳村真ノ介(一条)、'19 南恭平(一条)、'32 内藤周一朗(甲府東)、'51 徳村真ノ介(一条)、'58 梅本拡司(一条)、'77 山田和広(甲府東)、'79 徳村真ノ介(一条)
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2005年12月30日。聖地・国立競技場は、真っ青な空に包まれ選手達を待っていた。
「選手権へようこそ。100%の力を出して、いい試合をしてほしい。そういうのは簡単ですが、日本代表のジーコ監督は、大きな試合のとき必ずこの言葉を選手に伝えます。『サッカーを楽しんできなさい』。サッカーを楽しむことが100%の力を出せることにつながると思います」(川淵三郎キャプテン)
グリーンの芝が色とりどりのユニホームを囲み、堂々と選手達が入場する。青森山田はりんごを持って、丸岡は黄色と白の花をかざして。常葉学園橘は立ち止まってVサインの余裕を見せた。それぞれが、独自の色を放った入場行進。あこがれの国立競技場に48代表校が集い、熱戦の火ぶたが切って落とされた。また、選手権の季節がやってきた。
48校を代表して行われた開幕戦は、初出場の甲府東(山梨)と2度目の出場の一条(奈良)が対戦。最初のヒーローが誕生した。一条の徳村真ノ介(3年)。
「ハットトリックは予選でも(決めて)ないですね。徳村は運動量が豊富で、相手のスキを見抜く力がある。一瞬(のスキ)を逃さないしたたかさがあるクレバーな選手。左の内転筋だったかな。ケガをして先週まで練習試合にも出られなかった」(前田久監督)前田監督は、この日2本のFKと試合を決定付けた5点目を決めた徳村をねぎらった。立ち上がりこそ甲府東にペースを握られたが、前半8分、相手のミスから奪った直接FKを徳村が低めのボールを蹴って先制点。後半11分、またも相手のミスから生まれた直接FKを、今度は緩やかな曲線を描かかせ2点目をあげる。「相手のGKに不安があると聞いていたので、そこを逃さないようにしようと思った」と徳村。相手のスキをつくしたたかさでチームを勢いづけると、試合終了間際にも、一条得意のサイド突破から甲府東DFのウラを駆け抜けハットトリックを達成。他にも徳村のポストプレーから中央突破や空いたスペースを丁寧に突いた攻撃で南恭平(3年)、梅本拡司(3年)がゴールを重ね、終わってみると5−2と圧勝。徳村は「(全国で)1つも勝ってなかったからうれしい」と笑顔で初勝利を手にした。
一方、甲府東は不運なミスが続きバランスを崩した。「国立で試合という注目されるゲームで緊張もあった。選手にはごくろうさんといいたい」と無念の表情を浮かべた岩崎雄治監督。だが、5失点にも「少ない時間(練習時間が1時間30分)の中で、ボールを追いかけて、国立でプレーできた。悔しさはあるけれど、サイドチェンジや右の内藤周一朗(3年)がDFラインのウラを狙うという攻撃の形はアピールできた。ミスからの失点もあったが、もっと粘り強くできるようにしていきたい」と言葉を続けた。
守備に翻弄されつつも、なんとかチャンスを作ろうと懸命にボールを振り分けた斉藤大介(3年)は「自分達のミス。緊張はなかったし、力のなさを素直に認めたい。国立はすごかった。(国立で)プレーができたことは、一生の財産になる。充実して楽しい3年間だった」と長く短い3年間をかみ締めるように、ゆっくり口にした。また、チームのキーマンとして右サイドからチャンスを作った内藤も「負け方は良くなかったけど、最高の仲間と楽しくできた」と笑顔を見せた。
楽しむことが100%の力を生む。甲府東は敗れたものの、川淵キャプテンの言葉を実践していた。一条は自分達の得意な形を披露し、勝利をつかんだ。31日からまた多くのチームが頂点を目指し、自分達の全てをかけて決戦に臨む。
「今まで鍛えた力を発揮し母校の誇りと光り輝く未来のために、りりしく、さわやかに戦い、ワールドカップイヤーの幕開けにふさわしい大会にすることを誓います」(選手宣誓、国見・中川翔平(3年)主将)
5−2。僅差になるのではという予想を覆すスコアに、熱気の覚めやらぬ国立は、選手達が描く熱戦を静かに待っている。
以上
2005.12.30 Reported by 青柳舞子
J’s GOALニュース
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