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【Road to J1〜2006 J1新規3クラブの過去・現在・未来〜】アビスパ福岡:池下雄規 代表取締役専務インタビュー「スタジアムを埋め尽くした皆さんの大きな後押しでホームでは負けないという神話を作りたい」(06.01.26)

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5年ぶりのJ1復帰を果たした福岡。それは復帰という言葉よりも昇格という言葉のほうがふさわしいかもしれない。J2降格を機に噴出したクラブの問題点を解決すべく、2003年シーズンに「新生アビスパ」として育成型クラブへ転身。5年ぶりに臨むJ1の舞台は、新しくなったクラブが初めて挑戦する舞台でもある。福岡の改革はJ1昇格で序章を終え、これからが本当の意味でのスタート。そのスタートにあたり、先頭に立ってクラブ改革に当たっている池下雄規 代表取締役専務に話を聞いた。



Q:今年から5年ぶりのJ1です。まず昇格の要因はどこにあったとお考えでしょうか?
池下専務
「昇格できるポジションに来ているという確かな感触、それを実現できる力を3年間で蓄えてきたということが根底にあったと思います。それを前提に、一昨年のJ1・J2入れ替え戦に負けたことに対するリベンジというか、その悔しさを晴らしたいという気持ちがいちばんの原動力じゃなかったかと思うんですね。もうひとつは、松田監督以下選手たちが一丸となって戦った。特に監督の手腕はすごく大きかったと思いますよ。若い力を上手くコントロールしながら最終目的に導いていった。松田監督だからこそ出来たという気がします」

Q:厳しい時期を全員の力で乗り切ってきた印象が強いですね。
池下専務
「大きな連敗をしなかったというのが、昇格を果たした大きな要素としてあると思いますね。サッカーというのはメンタルな要素が大きいスポーツですよね。しかも福岡は若い選手たちばかりでしょ。そういう選手たちを、プレーだけではなくて日常の生活面も含めてメンタル面をコントロールしてくれた。そういう意味でも、監督の手腕が大きかったんじゃないでしょうか」

Q:さて、これからは最高峰のJ1という舞台での戦いが待っています。今後、どういったクラブ作りを目指すことになるのでしょうか?
池下専務
「まず大事なのは勝てるチームを作らなくちゃいけないということですね。しかも、勝つことの価値観とか意義を、選手たちだけではなくサポーターや市民の皆さんと共有するチームを目指すということです。それは強い、魅力あるチーム作りにつながっていくでしょうし、それがアビスパ福岡の理念である『まちづくり ひとづくり 夢づくり』を実現できる大きな要素になると思うんです。
もうひとつは地域に根ざした地域密着のクラブでありたいということ。そのためには、ユースから若い選手を育てるという構図をしっかりとしたものにしたいですね。ユースから選手を育てるというのはまさに地域密着。地元福岡、地元九州というものを意識したチーム作りが出来ると思うんですよ。福岡の町をアビスパの旗で埋めようという「旗いっぱい運動」を今年も展開しますが、それは地域密着のバロメーターでもあるので、少しでも多くの皆様に参加していただけるようにしたいですね」

中村北斗選手
Q:将来的には、アジアを意識した活動もしたいというお話もあるようですが?
池下専務
「そうですね。福岡市は行政的にも経済的にも、アジアの拠点としての都市づくりという施策を推進しています。アビスパ福岡としても、サッカーを通してのアジア外交というか交流というものも、チーム作りのひとつとして捉えていきたいと思っています。まだ夢の段階でしかありませんが、将来的には福岡、大分、鳥栖のJリーグ3チームが中心になって、韓国や中国などの東アジアのチームと交流戦をするというのもいいですね。もちろん実現するには大きなハードルがあると思いますが、こうした夢を描くことによって、チームが活性化し、チームのベクトルを同じ方向に持っていけると思うんです。
ただ、そのためには、勝てるチーム、J1に定着できるチーム作りを目指したい。それが大きな夢への実現への第一歩だと思います。今、チームには田中佑昌、中村北斗、柳楽智和といった20歳トリオがいます。彼らは経験が少ないかもしれませんが、大きな可能性を持っています。チームがJ1で戦うにふさわしいチームになり、彼らが秘めたる可能性を開花させてくれれば、近い将来、トップ10、トップ5、あるいは優勝を狙えるチームにもなれると思います。そして、九州を意識したチーム作りをすることによって、魅力のあるチームにすることが可能だと思っています」

Q:今年は、その第一歩ということになりますが、どのようなことを計画されているのでしょうか?
池下専務
「博多の森を舞台とみなした場合、演じるのは選手です。そして、多くの観客・サポーターの応援が彼らのモチベーションを高め、選手たちのいい演技につながっていきます。そういう状況を演出するのがフロントの仕事だと思っています。言い換えれば、フロントがやらなければならないことは、博多の森を常に満席にするということに尽きると思います。その方法論のひとつとして、博多の森をサッカーだけではなく、様々な文化の振興や発展に寄与するような『イベント情報発信スタジアム』にすることを考えています。
昨年、北九州市立戸畑商業高校ダンス部(T-COMMERCIAL)にヒップホップダンスパフォーマンスを披露してもらい、観客の皆様に感動と共鳴をいただきました。このように、その地域では知られていることでも、他の地域の人たちが知らない文化、芸術、芸能というものがあります。博多の森を、そういったものを披露、発表する場にしてもいいのじゃないかと。そうすることによって、博多の森が、もう一度行ってみたいという空間になり得るんじゃないかと思うんです」

天神のビルに掲出された応援幕。より一層の地域密着を目指し、様々なプランを実行中だ
Q:試合ごとに様々なイベントを仕掛けていきたいともお聞きしていますが?
池下専務
「そのために、『想い出作りスタジアム構想検討委員会』を設置しました。これは産学官の20代後半から30代前半の10数名で構成しているもので、どうしたらスタジアムを満席に出来るかということを検討してもらっています。スタジアムを埋め尽くしたファンの皆さんの大きな後押しによって、ホームゲームでは負けないという神話を作れればな…と。
今シーズンは、ホームゲームの最初の3試合が非常に大事です。この試合を満席にして勝つことが出来れば、『満席になったからチームが勝てたよ』という物語が多くの人に伝わっていくんじゃないか。そうすれば、ひとつの文化が出来上がるんじゃないか。『俺たちが行けばアビスパは勝てるんだ』と。勝たないから行かないのではなくて、みんなで行ったら勝つんだという文化を作りたいですね。
もうひとつ、博多の森をファミリースタジアムにしたいと思っています。老若男女、誰もが心からサッカーを楽しめて、『みんなで心をひとつにして応援できたね』と言って帰ってもらえるような雰囲気を作り出したいですね。フレンドリーな気持ちに溢れるスタジアムにしたいと思っています。また、交通混雑を緩和するために、20,000人の観客が、30分後、1時間後と時間差的に帰れるように、アフターゲームイベントが出来ないかということも考えています」

Q:最後にサポーターの方へのメッセージをお願いできますか?
池下専務
「もちろん戦うからには勝つことを目指すのは当然のことですし、その延長として優勝があるということでは、私たちクラブの気持ちはひとつです。ただ、いきなり常勝というのは非常に厳しい。現実的な面からいえば、私は、まずJ1に定着することが目標になってくると考えています。ですから、みなさんには少し長い目で選手を見てほしいし、チームを見守ってほしいと思います。
勝てる試合もあれば、負ける試合もあります。ただ、精一杯戦った結果での敗戦からは学ぶことも多いものです。その結果を正面から受け止めて、次に向けてしっかりと対応することで本当に強いチームになれるのだと考えています。それが最終的には、J1で戦うにふさわしいチームに成長することになりますし、トップを狙えるチームになれることにつながるのだと思います。ですから、サポーターの皆さんにも、是非そのことを理解していただいて、これからもチームを温かい気持ちで支えていただければと思っています」

池下雄規(Yuki IKESHITA)

1949年(昭和24)7月9日生まれ。九州大学法学部出身。76年(昭和51)4月に福岡市役所に入庁。財政局財政部主査、総務企画局人事部労務課長を経て、99年(平成11)9月に総務企画局部長に。サミット蔵相会合事務局業務部長として、2000年に行われた九州・沖縄サミット福岡蔵相会合を取り仕切る。その後、市民局地域振興部長、市民局総務部長、市長室長を歴任した。2005年(平成17)4月に株式会社福岡ブルックスに出向。同月の株主総会の承認を経て代表取締役専務に就任した。「自分が、こんなにサッカーにはまるとは思わなかった」とは本人の弁。サッカーとクラブ運営にかける情熱は誰よりも熱い。



いつお話をうかがっても情熱的な話しぶりにグイグイと引き込まれてしまう。5年ぶりのJ1復帰にも必要以上に喜ぶことなく、前を見据えて変わらぬ姿勢でクラブ改革を推し進める強い意志が感じられるインタビューだった。
「サッカークラブは福岡の町に夢を与えられる存在。これほど誇りのある仕事はない」が池下専務の口癖。その言葉のもとに、福岡はフロント、チーム、職員が一丸となってさらなる成長を目指す。博多の森が満員の観衆で埋められて熱狂に包まれるのは、そう遠いことではないかもしれない。


以上

Interview by 中倉一志/取材日:2006年1月12日

◆アビスパ福岡:新たなスタートの始まり(1)は【こちら】
◆アビスパ福岡:新たなスタートの始まり(2)は【こちら】
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