3月18日（土） 2006 J2リーグ戦 第3節
山形 0 - 1 札幌　（14:04／山形県／6,149人）
得点者：'77 西谷正也（札幌）
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　試合前に始まった両チームサポーターの応援が、徐々にヒートアップしていた。緑のピッチを目の前にしてこの熱気にあたると、待ち焦がれたはずの３ヶ月半は一気に過去のものとなる。

　山形に、ホームゲームが帰ってきた。

　樋口新監督となって初の勝利をめざす山形は、開幕の水戸戦以上に中盤の動きが流動的。スタートで右ＳＨの財前はフィールド中央でプレーする時間帯が多く、右ＳＢの臼井がそのスペースを埋めて３バックのようにも見えた。そこからポゼッションし、２トップが裏へ抜け出す動きに合わせて縦パスを送る。パスのタイミングや精度は決して悪いものではなかったが、この日、決定的なシーンに持ち込めなかったのは、瞬間的にトップスピードに乗るレアンドロとの『よーい、ドン』で、加賀が走り負けなかったことが大きな要因。抜け出してキーパーと１対１になるはずのレアンドロは併走され、裏で十分な仕事をさせてもらえなかった。

　さらに、左サイドでは和波が攻め込まれた中でもクロスを上げさせず、ゴール前では氏原をめがけた長いボールやセンタリングに曽田が競っていた。左ＷＢの関もこの日は守備に重きを置き、後ろの和波との距離を空けすぎないように常に意識したポジションを取っていた。

　フッキの出場停止で注目された札幌の２トップは、前節から総入れ替えで相川と中山。長身の中山がいることで、その頭をめがけて長いボールが多くなるのは定石と言えるが、こぼれ球を数的優位な中盤で拾う準備をしていた札幌に対して、攻撃で前掛かっていた山形は、中盤の底に渡辺一人だけという時間帯を多く作ったことが不利に作用する。また、高い位置でボールを奪おうという山形のプランも、このロングボールで半ば骨抜きにされた。ボール支配率は札幌が上回ったが、決定的に崩す場面が互いに少ない前半は０−０で折り返した。

　後半、先に動いたのは札幌・柳下監督。いいところに顔を出しながら決定的な仕事ができずにいた砂川に代え、西谷を投入。コンディションの良さを買われた西谷が、この日一番の仕事をする。

　山形が10分間ほど押し気味に試合を進めた後、今度はラグビーのパント合戦のよう雑な蹴り合いの時間帯が始まったが、その数分後の後半33分だった。札幌の中盤から左サイドのスペースへ大きめのパスが飛ぶ。このとき、同サイドに札幌の２トップがそろって流れていたのがひとつのポイントになった。

　中山から受けたボールを相川がふわりと浮かせた先は、サイドの対応でガラ空きとなったゴール前。そのスペースの真ん中を割って飛び込んできた西谷が頭で合わせたボールは、逆を取られた桜井の横を通過してゴールマウスに転がり込んだ。

　１点を追う山形は、途中出場の根本が右へ展開し、上がってきた臼井が強烈なミドルシュートを放つがバーに跳ね返されるなど最後まで１点を追いつけず、 札幌が１−０で勝利を飾った。細かいミスはあるものの、そのレベルは昨年の比ではない。攻守に手堅いサッカーの報酬として、札幌の3試合消化しての勝ち点6は妥当なものと言える。

「勝ち点３を取るためにチームが本当に一つになり、最後に危ない場面はあったが体を張って防いだ、非常にいいゲームだった」
柳下監督３年目の野望は、勝ち点を積み上げるにつれてその輪郭が徐々に浮かび上がっている。

　一方、ホーム開幕を白星で飾れなかった山形は２試合で勝ち点１。しかも唯一の得点は開幕戦のオウンゴール。相手のゴールネットを揺らした選手が、まだいない。

　２週間前に比べれば、選手間の有機的なつながりは格段の進歩が見られ、中盤の流動的な動き、裏へのパスのタイミングなど11人が同じ画を描く方向へ確実に進んでいる。その手応えを48試合持ち続けるためにも、いま必要なものはゴールであり、勝ち点３という結果だ。産みの苦しみから解放されるのは次節であることを信じて、アウェイ横浜へと向かう。

以上

2006.03.18　Reported by 佐藤　円