9月8日(金) 2006 J2リーグ戦 第38節
湘南 1 - 2 鳥栖 (19:04/平塚/2,982人)
得点者:'23 山口貴之(鳥栖)、'78 横山聡(湘南)、'89 高橋義希(鳥栖)
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故障から復帰し5試合ぶりにピッチへ戻ってきた鳥栖・山口貴之は試合前、平塚にそよぐ穏やかな風に「今日は涼しいぐらいだね」と笑みをこぼした。さまざまなクラブを知る33歳は、鳥栖のトレーニングが非常にハードだと胸を張る。そんな日々の充実感が、気温26.6度、湿度79%には似つかわしくない台詞を引き出し、また上位に食い込むだけの自信をチームに植え付けているのかもしれない。そして彼は、「若い選手に頑張ってもらわないと」とおどけて試合に臨みながら、運動量豊富に、かつベテランらしい質の高い動きで自ら先制点を導き出す。
23分、相手のフリーキックを抑えた直後、山口にクサビのボールが入る。これを受けた尹晶煥が時間をつくると、中央を上がる濱田武へ送り、続いて左サイドの山城純也へ。仕上げはふたたび山口だ。山城のクロスに走りこむと、鮮やかなシュートをゴール左隅へと突き刺した。濱田、山城、山口と繋ぐダイレクトプレーに、湘南はあたかも時間を止められたかのようだった。
だが鳥栖にとって前半のチャンスは、この場面だけだったと言っていい。ゴールに迫っていたのはむしろ湘南のほうだった。石原直樹の鋭い動き出しやアジエルのドリブル突破とシュート、7試合ぶりの先発出場となった森谷佳祐のポスト直撃弾など、惜しい攻撃を記している。前線から中盤にかけてのプレッシャーも効果的で、相手は幾度もパスミスを誘発していた。
ただ一方で鳥栖が徹底的だったのは、山口や山城ら前線の選手が、湘南の両サイドバックにプレッシャーをかけ続けたことだ。起点となる両翼に圧力を与え、FWに入るロングボールを摘み取る。これに対し湘南は、佐藤悠介が左サイドを攻めてアジエルが中に絞り、尾亦弘友希が絡んで決定機をつくり出したものの、枠を捉えることができない。数少ないチャンスをゴールに結んだ鳥栖と、チャンスをつくりながらゴールに届かなかった湘南という構図のまま、試合は後半へと突入する。
ハーフタイムを挟み、鳥栖は膝を痛めた尹に代えて衛藤裕を投入する。攻撃的な高橋義希と並んだ衛藤は、守備をベースに時折前をもうかがった。対する湘南は、前線の石原の奮闘もあって流れを引き寄せていく。試合のひとつの転機となった後半17分、鳥栖・村主博正の一発退場は、石原の裏を突く決定的な動き出しがきっかけだった。
10人の戦いを強いられた鳥栖は吉田恵を入れて最終ラインを固め、湘南はほぼ同じタイミングで森谷に代えて横山聡を投入する。だが人数の減った鳥栖のプレッシャーが落ちたのは明らかで、さらに須田興輔に代わり左サイドに入った池田昌広が効果的に攻め上がったため、湘南が同点に追いつくまでにはさほど時間を要さなかった。須田と池田を交代し最終ラインを3枚にしたこの采配は、前に人数をかけるべく送った菅野監督のメッセージだろう。結果、78分、石原を介して右サイドから北島義生が放ったクロスを横山が頭で合わせ、湘南がようやく同点に追いついたのである。
しかし、湘南優位のまま試合は終わらない。伏線は72分の攻防にあった。数的優位を保っていた湘南の最終ラインの裏を衛藤が突き、決定機まで持ち込んでいる。これはGK伊藤友彦がシュートコースを塞ぎ辛くもしのいだが、人数に相反するアンバランスが顔を出していた。そして89分、同様の場面が訪れる。湘南が攻めこみ前がかりになった形勢で、吉田のクリアボールが相手陣内に構えていた高橋へと渡る。湘南は自陣に3人を残していたものの、高橋の鋭いドリブルに内側へ切れ込むことを許し、勝負を決するゴールを与えてしまったのだった。
先制ゴールを決めた山口は試合後、「今日はミスが多く、全体的に悪かった」と、勝利にも渋い表情を見せた。だが劣勢下で勝点3を奪った現実に、チームの成長を見て取ってもいる。新居辰基や高地系治の復帰が見込まれるなか、加速度を増すアウェイでの勝利といえるだろう。
一方の湘南は、決めるべき場面で決められなかった口惜しさもさることながら、前節の柏戦に引き続く守備面での課題、とくに攻守の切り替え時の綻びが浮き彫りとなった。数的バランスが示しているとおり、攻撃後のリスクマネジメントの意識は高まっているといえよう。さらに質を高め、第4クールに繋げたい。次節(9/13)はふたたびホームで、昇格争いを繰り広げる神戸と対戦する。短いスパンだが修正を図り、リアクションに止まることのない湘南のサッカーを90分間、展開したい。
以上
2006.09.09 Reported by 隈元大吾
J’s GOALニュース
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