8月30日（日） 2009 J2リーグ戦 第36節
草津 2 - 5 札幌　（18:04／正田スタ／3,680人）
得点者：17' 西大伍（札幌）、27' キリノ（札幌）、44' 西大伍（札幌）、49' 藤田征也（札幌）、72' 小池純輝（草津）、75' 宮澤裕樹（札幌）、88' 佐田聡太郎（草津）
スカパー！再放送 Ch181 9/1（火）13:00〜（解説：佐藤正美、実況：梨子田友和、リポーター：円戸由香）
勝敗予想ゲーム | 皆の投稿で作るスタジアム情報
----------
草津再生へ向けての微かな希望は、木っ端微塵に砕かれた。降りしきる雨の中、バックスタンドで応援を送り続けたサポーターは試合後、ブーイングでも拍手でもなく「沈黙」で選手たちを迎えた。今季の集大成としなければいけない最終クールでのホーム初戦。サポーターの信任を得る必要がある重要なゲームで惨劇は起こってしまった。草津のゴールネットが札幌の豪快なシュートによって揺らされるたびに、支持率は急降下を辿った。草津にとって８月最後の試合は、まさに夏の終わりを感じさせるゲームとなってしまった。

この試合、草津、札幌ともにゴールマウスに変化があった。草津のマウスには28試合ぶりに復帰した守護神・本田征治、札幌は約３年ぶりの出場となる高原寿康がピッチに立った。開始わずか１分、札幌は左サイドを突破したキリノがダニルソンへとラストパスを送り、最初の決定機を迎える。シュートは枠を捕えることはなかったが、完全にフリーで放った札幌のオープニングシュートが草津にとっては悪夢の前兆となった。

前線に５人を配置する札幌の４−１−４−１のシステムに対応できない草津は、１１分過ぎに札幌の波状攻撃を受けるなど序盤から劣勢を強いられる。１７分、宮澤裕樹が右サイドからアーリー気味に入れたクロスへの対応を誤り、スペースに侵入してきた西大伍に豪快なヘッド弾を叩き込まれる。前節・愛媛戦での反省が全く活かされない草津は序盤の失点で勢いを失う。そして２７分、ロングボールに反応したキリノのスピードを抑えることができずに痛恨の２点目。前半終了間際の４４分にはキリノのパスを藤田征也がスルー。その裏を走った西に落ち着いて流し込まれて前半で３ゴールを献上した。

草津は、ダニルソンを起点にして次々とスペースへ飛び出してくる札幌の攻撃に後手を踏んだ。右サイドバック佐田聡太郎は「前節もそうだったがギャップに入ってくる選手をつかまえられずにフリーにした」と話す。隙間を突いて２ゴールを挙げた西は「（相手は）結構いろんな場所が空いていたので、その間に入ってうまく合わせることができた」と振り返った。現に、この日の草津は、ボランチ松下裕樹が警告累積で出場停止だったこともあり、バイタルエリアでの守備がずさんだった。ただ、それは個人の問題ではなく対処しなかったチーム全体の責任だ。

後半に入ってもゲームの体勢は変わらなかった。草津は後半早々の４９分にゴール正面で札幌へファウルを与えると、藤田に豪快なFKを叩き込まれて０−４。後半から投入された小池純輝がドリブルで左サイドを突破しゴールネットを揺らすが、その３分後には宮澤にダメ押しとなる５点目を蹴り込まれて引導を渡された。５点を取られてから目を覚ました草津は、その後、怒涛の攻撃を見せて佐田の約４０メートルロングシュートで１点を返すが、焼け石に水だった。指揮官は「チャンスは同じくらいあった。決められるかどうかの差が、この点差につながった」と決定力の差を敗因に挙げたが、草津のチャンスの大半は４点のビハインド後に捨て身の戦法で作ったものだ。敗因が単なる決定力の違いでないことは、ゲームを観たサポーターが一番知っているはずだ。

札幌はダニルソンが草津の起点を摘み取り、ボールを両サイドへ展開することでゲームを組み立てた。５得点を奪ったことで最近５試合の総得点は１５点と攻撃は破壊力を増してきた。また、DF面では前線のキリノを含めて切り替えの速い守備を実行し、草津に効果的な攻撃を許さなかった。気の緩みから２失点したことは課題だが、ラストスパートをかけられる状態に近づいている。「これからは１試合も落とせない気持ちで戦う」（西）。５戦負けなしの札幌が最終コーナーでどんな追い込みを見せるか注目だ。

今季最多の５失点を食らって大敗した草津だが、チーム内に発生してきた数々の問題を放置してきたツケが大事なゲームで回ってきた。シーズン終盤に入り他クラブがチームとしての上積みを見せてきているのに対して、草津は迷宮をさまよい続けている。草津は、このゲームでの大敗をどう捉えるのか。サポーターの感情は、「怒り」から「あきらめ」へと移り始めている。これが負の連鎖の始まりにならないことを願うばかりだ。

以上

2009.08.31 Reported by 伊藤寿学