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【AFCチャンピオンズリーグ2010 広島 vs アデレード】プレビュー:広島にとっての「デッド・オア・アライブ」。離脱者続出の厳しい状況を、全員の力で跳ね返せ!(10.03.30)

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3月30日(火)AFCチャンピオンズリーグ2010 広島 vs アデレード(19:00KICK OFF/広島ビ)
試合速報 | ホームゲームチケット情報 | 決勝戦は11月13日(土)に国立競技場で開催!
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アデレード・ユナイテッドの指揮官であるアウレリオ・ヴィドマー監督は、1998-1999年の2シーズン、広島でプレーした経験を持つ。ベルギーリーグで得点王に輝いたこともあるかつての名ストライカーは、以前から「広島では、いい思い出しかないんだよ。クラブもサポーターも素晴らしかったからね」と語るなど、広島来訪を心から楽しみにしていた。昨日、広島にやってきたヴィドマー監督は、さっそく街を散策。「本通(広島市中央部の商店街)も歩いてみたよ。もっと変わっているかな、と思っていたけれど、やっぱりラブリーな街だね。ただ、久しぶりだったから、道に迷ったりもしたんだけど(笑)」。

11年ぶりの広島の夜から一夜明けた今日、彼はチームの選手・スタッフを引き連れて平和祈念公園へと向かった。そして、慰霊碑に花を捧げて黙祷した後に、平和記念資料館を訪問。1945年8月6日午前8時15分、広島で何が起こったか。「そういう歴史を知ることは、大切なことだ」というヴィドマー監督の意志が、この訪問には強く働いていた。
選手たちは、明らかにショックを受けていた。被爆者の悲惨な姿を映した写真や被爆地に残された焼けただれた遺品の数々を前にして、多くの選手たちが茫然と立ち尽くしていた。決して広くはない記念館の見学に、彼らが要した時間は1時間30分から2時間。それが、選手たちの受けた衝撃の強さ・深さを物語っていた。
「広島がこういう悲しい歴史を背負っていることは、本を読んで知っていた。だけど、現実は想像以上。話を聞くのと自分の目で見るとでは大違いだった」
前節に先制点を決めたトラヴィス・ドッド主将は、悲痛な表情で言葉を落とす。ヴィドマー監督も「広島で何が起こったのか、その歴史を自分の目で見ることは大切なこと。違う文化と歴史の存在を感じてほしかったし、自分たちの文化が当然のことだとは考えないでほしい」と語る。世界で広島と長崎しか体験していない核兵器の恐怖を直視し、「平和」について考える機会をアデレード・ユナイテッドの選手たちが持った現実は、広島がACLに出場できたからこそ生まれたわけで、本当に意義深いことだと考える。

ただ、ACLの「闘い」という部分では、広島は苦しみのまっただ中にある。3試合連続の1点差負け。しかも浦項戦・アデレード戦は、一度は同点あるいは逆転に成功しながら、80分過ぎに決勝点を叩き込まれるという試合展開。主力を多数欠きつつ、それでも選手たちは全力でファイトし健闘しているのに、結果がついてこない。そんな歯痒さの中にいる。
明日のアデレード戦は、そんな広島にとってのまさに「デッド・オア・アライブ」の闘いになる。勝てば浦項vs山東魯能戦の結果に関わらず、決勝トーナメント進出の可能性が残る。しかし引き分け以下では、もし浦項が山東魯能を下せば勝点9となり、広島は追いつけなくなる。つまり、広島にとって必要なのは勝点3以外にないわけだ。

そんなギリギリの一戦なのに、明日はストヤノフが出場停止、槙野智章が右股関節の違和感のため欠場濃厚。主力クラスを6人欠いて決戦に臨まねばならない状況にある。このチームの現状で現在首位のアデレードに勝利するのは、至難の業といっていい。
しかし、それでもサポーターが希望を捨てないのは、前節の広島の戦いだ。2日前の練習で痛みを訴えた槙野を先発から外さざるを得ず、試合の前半でストヤノフが退場するという緊急事態の中、それでも広島は1人少ない状況の中で逆転に成功した。残念ながら再逆転を喫したものの、その試合での奮闘の実績が広島に一筋の光を与えてくれる。
「攻撃的にいく」とドッド主将は語ったが、引き分けでいいアデレードが人数をかけて攻めてくるとは思えない。しかし、両サイドにはドッドやレッキーといった個の能力が高い選手がいる。少ない人数でも広島に十分脅威を与えられるだろう。
そういう相手に対して、広島が勝利を意識しすぎて前にかかりすぎると、相手の思うツボになる。「急ぎすぎないことが大切。じっくりと自分たちのサッカーを展開し、ポゼッションからチャンスを狙いたい。サッカーは90分の試合なんだから」と山岸智は言う。その言葉を全員が自覚し、勝負所を見間違わないようにすること。それが、この「生死をかけた闘い」を勝ち抜く唯一の方法だろう。

晩夏の装いを見せていたアデレードから、ピリッとした寒さがしみる広島への移動は、両チームにとってもハードだ。しかし、そんな厳しい状況を跳ね返す熱意と情熱を両チームとも持っている。そんな両チームの激しいぶつかり合いだ。見るしかあるまい。

以上

2010.03.29 Reported by 中野和也
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