11月20日(土) 2010 J1リーグ戦 第31節
仙台 1 - 3 清水 (14:04/ユアスタ/17,050人)
得点者:15' 菅井直樹(仙台)、29' 藤本淳吾(清水)、45'+3 藤本淳吾(清水)、89' 大前元紀(清水)
スカパー!再放送 Ch180 11/22(月)前05:00〜
試合速報一覧 | クラブサポーター対抗totoリーグ | Jリーグ中継に関するアンケート実施中
----------
J1での初得点となった第18節のG大阪戦に続き、今日も自身のゴールが無念なことに勝点に結びつかなかった菅井直樹が「内容というよりも、負けは負けなので、それは認めるしかない」と語るように、結果の世界で生きる彼らにとっては内容に対するどんな賞賛も、今は虚しく聞こえるだけかもしれない。彼ら、そしてチームが、どんな泥臭い形でもかまわないから一番欲しかったものは、1ポイントでも大きなものとなった勝点なのだから。それに、失点の形に関してはどれも回避できたかもしれないもの。この点の反省は必要だろう。
しかし仙台は(突き詰めれば自らが招いたものだとはいえ)、苦況の中で、最後の最後まで統率のとれた戦いを貫いた。ボールポゼッションの正確な数字は公式記録に存在しないのであくまでイメージでしかないが、少なくとも3:7くらいの割合でポールを清水に持たれながらも、実はシュート数は15対14と、仙台の方が多い。各々の疲労が隠しきれないところとなってきていた後半も、ゴール前では清水に安易に決定機を献上することはなかった。試合後の手倉森誠監督の「勝点1でもプレゼントできれば良かったが、今日は逆に、選手たちの闘争心を、ベガルタのサポーターの皆さんに表現できた」という言い回しは、決して強がりではない。
また逆に、そんな仙台の奮戦を結果の意味で無にした清水の戦いも、要所で風格を感じさせるものだった。いろいろな事があった試合を、振り返っていこう。
前節同様、ピッチ状況との兼ね合いもあり、自陣ではリスク回避も兼ねて前線への長いボールを多用、そこで起点が出来れば崩しにかかる、という意識がはっきりと見て取れる両チーム。
その流れで、大きなチャンスを作ったのは仙台だった。中2日ペースの連戦の中にあることも踏まえ、長谷川健太監督の言葉を借りれば「守備にしても攻撃にしても、よりチームの狙いをはっきりさせるため」という事で4-4-2の布陣を敷いてきた清水が、サイドに流れてきた前線のヨンセンにこそボールは収まるものの、そこからの攻撃に迫力を欠く一方、仙台の攻撃はシンプルながら、清水ゴールを脅かすという意味では効果を発揮。
15分、右サイドへの縦パスに太田吉彰が抜け出してセンタリング。このボールはゴールを横切って左サイドへと流れていくが、これを拾った梁勇基が再びゴール前に蹴り返す。先ほどの太田からのボールには合わせきれなかった赤嶺が今度はニアで競ると、ボールはペナルティーエリア内に舞い上がる。そこに飛び込んでいったのは、右サイドバックの菅井だった。ヘディングシュートはGK西部洋平の正面を突くが、足元にこぼれたボールへ菅井は勢いのまま飛びつき、最後は足で半ば強引に押しこんだ。幸先の良すぎる展開に、仙台の側には前節の大勝が脳裏をよぎる。
だが、清水がサイドで高い位置を取れるようになってきたこと、そこから迎えた清水の好機が、結果的にゲームの流れを決めてしまう仙台の苦況を生む。28分、左サイド深く攻め込んだ清水は、左45度でボールを受けた本田拓也のセンタリングに、ゴール正面の岡崎慎司が合わせてゴール右へ絶妙なヘッド。シュートは右ポストに跳ね返るが、このボールにGK林卓人も倒れていて空きだったゴールマウスそばで詰めようとしていた藤本淳吾を、朴柱成が無理に身体で止めてしまう。朴柱成にはレッドカード、さらに清水に与えられたPKは藤本が決めて同点。
そしてこの状況下、清水はゲームの流れを読む力で仙台を確実に追い込んだ。それまでの4-4-2から、ボランチの一角が前へ顔を出す4-3-3へシフトチェンジ。一人少ない仙台がそれまでのようにボールを奪いに出られないのを見越したように、高い位置で全方位から仙台を押し込むと、ハーフタイムでの修正を許さないうちに前半ロスタイムの48分、ゴール前でのこぼれ球に反応した藤本が混戦状態の選手たちをかき分けるような左足での正確なシュートを決めて、前半で逆転を果たしてしまう。
まだ1-1なら策は多かったのにと仙台を後悔させるに十分な藤本の2発目。ところが仙台が簡単には焦れなかったことが、ゲームの興味を最後まで保たせる形となった。
「割り切って2ラインを引いてゴール前でブロックを作った」(斉藤大介)仙台は、前半以上に押し込まれながも、ゴール前では粘り強く守り、ワンチャンスを待ち続けた。その一方でベンチも、数的不利を跳ね返すための攻守にわたる運動量を注入するべく高橋義希を投入し、さらに1トップで身体を張り続けたものの、ついには疲労から、密着する相手のフィジカルに勝てなくなってきていた中原貴之を、相手を置き去りにするスピードでゴールを狙える中島裕希を代えるなど、バランスを崩さない中でも効果を発揮できる的確な采配に動く。斉藤からの縦一本で裏を取り、ゴール左からあわやのシュートまで中島が持ちこむなど、仙台の戦いぶりは最後まで清水を脅かした。
とはいえ、仙台にも決定機が多いわけではなかったのは事実。こうした背景から、まだロスタイムではない89分、仙台はCKにGK林を上げて文字どおりの「総攻撃」に出たのだが、西部が触ったボールは清水にこぼれ、兵働昭弘から最前線にいた大前元紀へ。大前はスピードで右サイドを駆け抜けると、林の戻り切れていないゴールへシュートを流し込み、追いすがる仙台にとどめを刺した。
確かに、朴柱成の退場によって、ゲームは壊れてしまったかもしれない。だがこれによってもたらされた「不均衡」が、清水の老獪さと、それに対峙する仙台の粘りを引き出したという意味では、面白い一戦であった。
以上
J’s GOALニュース
一覧へ【J1:第31節 仙台 vs 清水】レポート:早い時間の退場劇で流れが決まった中、前半にしっかり試合をひっくり返した清水が勝利。仙台は耐えて少ないチャンスに賭けるも実らず。(10.11.21)













