「北関東王者」。何度聞いても、実にいい響きである。さらに「2年連続」という言葉もつくのだから、当然気分は最高潮。水戸というクラブを見ていて、これだけ悦に浸れる日はなかなかない。おそらくサポーターの方々も昨日は気持ちのいい1日を送ったに違いない。
ただ、「王者」に輝いたことだけが、晴れ晴れとした気持ちになれている理由ではない。勝利の裏に起きた、このチームを支える美しい光景を目にしたからだ。
それは先制点を決めた後に見られた。ゴールを決めた中山悟志が真っ先に飛びつきにいったのが、控えとしてウォーミングアップをしていた片山真人であった。2人は同じFWであり、ポジションを争うライバル。しかし、2人はどんなときでも切磋琢磨して気持ちを高めあってきたのである。移籍してからゴールを決められなかった中山には大きな焦りがあったに違いない。ただ、それでも片山という仲間がいたから気持ちを切らさずに前を向いて取り組んでこられたのだろう。思い出されるのは第15節千葉戦。決勝ゴールを決めた片山が真っ先に走っていったのが中山であった。2人で抱き合って喜びを分かち合ったのだ。今回はその逆の形。深い友情が2人を支えてきたということが見て取れた。そんな2人の友情が「北関東王者」を決めるゴールを生んだのであった。
チームメイトと喜びを分かち合った後に中山が向かった先が、ベンチの奥にかかっている背番号9のユニフォームであった。そう、アキレス腱断裂のため戦線離脱している吉原宏太のユニフォームである。吉原と中山とはG大阪時代からの先輩後輩。それだけに中山は「昔からすごくお世話になっている人が、あんな大ケガをしてしまって……」と悲しそうな表情を見せる。だからこそ、「早く元気になってほしい」という思いを込めて、背番号9のユニフォームをそっと抱え上げて口づけしたのであった。ゴールの後に見ることができたFW陣の堅い結束。ただ、それはFW陣だけでなく、今季のチーム全体の空気なのである。
今季の水戸は下位に低迷しながらも、いかなるときもチーム一丸となって戦ってきた。1人1人が手を取りあいながら戦う姿に、確かな希望を見ることができた。試合後のインタビューで中山は涙をこぼしながら「木山監督のためにゴールを決められてよかった」と語り、それを聞いた木山監督も隣で涙を流していた。その一体感こそ今季の水戸なのである。それが「北関東王者」という結果につながったことが、うれしくてたまらない。本当に今季のチームを取材できてよかったとあらためて思った。
今季も残すところ2試合。本音を言わせてもらえば、まだまだこのチームを見ていたいし、もうすぐ終わってしまうのが残念で仕方がない。同じ思いのサポーターも少なくないはずだ。いよいよ次節ホーム最終戦(11/28・13時@Ksスタ)。相手はJ1昇格を決めている甲府だが、最後の最後まで水戸らしさを出して勝利を目指してもらいたい。そしてみんなで泣いて笑って、木山監督を送り出せれば最高だ。「水戸を好きでよかった」。そうあらためて思わせてくれる試合を、選手たちは見せてくれるに違いない。11月28日、ハンカチの準備をして、Ksスタに集合だ!
以上
■11月28日(日)J2 第37節 水戸 vs 甲府(13:00KICK OFF/Ksスタ)
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2010.11.25 Reported by 佐藤拓也













