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【J1:第32節 広島 vs 川崎F】レポート:広島の芸術的サッカーが創った流れを止めたジュニーニョの技巧。川崎F、自らの勝利でJ1残留を決定。(11.11.20)

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11月19日(土) 2011 J1リーグ戦 第32節
広島 2 - 3 川崎F (14:04/広島ビ/12,041人)
得点者:10' 高萩洋次郎(広島)、45'+3 小林悠(川崎F)、67' 森脇良太(広島)、84' 横山知伸(川崎F)、90'+1 矢島卓郎(川崎F)
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今季6度目、そしてJ1最多となる、先取点をとった後の逆転負け。この日、広島が記録した19回目の先制点は、J1ではG大阪の23回に続いて2番目に多い。もし6試合の逆転負け全てを勝利に結びつけられたとしたら、広島の勝点は一気に62まで伸び、優勝争いが現実化したはずだ。

ただ、前半終了時にリードしていた場合のデータでは、広島の成績は6勝1敗で、勝率.857は柏の1.00に次ぐリーグ2位。この数字から考察すれば、川崎F・小林悠の前半終了間際の同点弾が、いかに広島に打撃を与えたか。
その主役は、ジュニーニョだ。今季、ここまで6得点。J1で107得点、J2の数字を合わせれば172得点を記録し、来日以来8年連続で二桁得点を記録しているスーパー・ストライカーとすれば、不満の残る数字。広島戦でもビッグチャンスを自ら決めることができなかった。だが、ゴール以外の部分で彼は大きな仕事をやってのけた。

立ち上がりから広島は、芸術的とも言える独創的なパス回しによって、川崎Fを圧倒。高萩洋次郎の先制点は青山敏弘のサイドチェンジからスタートし、中島浩司のクサビから佐藤寿人・李忠成、そして高萩のゴールまで、全員が激しく動き回って川崎FのDFを吊り出し、スペースをつくって守備を崩した。ペトロヴィッチ監督が5年半をかけて熟成させた広島のパス回しの前に、川崎Fはほとんどボールを触れないでいた。

だがジュニーニョは落ち着いていた。よりプレッシャーの薄いサイドに開き、そこから縦に仕掛ける。何度も、何度も。その繰り返しの中で、川崎Fいつしかリズムを取り戻した。一方の広島も、「らしい」創造性は失わず、2点目のチャンスも何度もあった。こうなると焦点は「次の1点」。広島がとれば主導権は完全に手中におさめ、川崎Fがとれば勢いが加速する。そのせめぎ合いの中、結果を出したのがジュニーニョだった。

前半アディショナルタイム、川崎Fのスーパースターは右サイドでボールをキープ。中島と相対したジュニーニョはゆったりとした姿勢から瞬間にスピードアップ。一気に縦に抜けて中島を置いていく。完璧なクロスは水本裕貴を越え、飛び込んできた山瀬功治にピタリ。西川周作が弾いたこぼれ球を小林が押し込んで、同点に追いついた。

もちろん、山瀬・小林の二人の飛び出しは素晴らしい。ただそれも、演出者のジュニーニョの能力を信じているからこそ。スピード・コース、いずれもパーフェクトなクロス。ドリブルに持ち込むタイミングと緩急のリズムの付け方。ため息が出るほどの「巧さ」だ。

今回の広島は、同点→逆転→大量失点という今季よく見る流れではなく、後半に1度は勝ち越した。67分、セットプレーからの森脇良太のヘッドから、バーに当たったボールを押しこむという今季初ゴールに、スタジアムは沸騰した。だが、ヒーローとなるはずの森脇、さらに山岸智が次々と足をつらせて交代するなど、ハイテンポ一辺倒のサッカーを見せてきた広島は失速。パスをひっかけられ、押し込まれ、セットプレーを与えてしまう循環となり、84分には横山知伸が強烈な高さを発揮してゲット。アディショナルタイムにはセットプレー崩れから田中裕介が精度の高いクロス、矢島卓郎が見事な胸トラップで左足シュート。これが菊地光将に当たってコースが変わってネットの中に転がった。

この一連の流れを生んだのがジュニーニョ演出による同点劇だったことは、水本の「前半終了間際の失点が痛かった」という言葉で証明される。この同点弾によって後半の広島に焦りが生まれ、緩急のリズムがつくれずハイテンポだけのリズムとなった。「自分がボールをおさめてペースダウンさせたかったんだけど……」と高萩が悔やんだように、継続するテンポの速さはオーバーペースにつながり、体力は消耗。逆転負けの要因に広島の選手たちは運動量の低下をあげたが、それは「川崎Fのプライド」と言っていいナンバー10演出による同点劇が源泉だった。

交代出場の二人が同点・逆転という最高の流れを導き、川崎FのJ1残留が確定。一方の広島は、またも川崎Fに敗戦。ペトロヴィッチ監督に対川崎F戦リーグ戦初勝利を贈ることはできなかった。試合終了後、石川大徳は号泣し顔をあげることができない。勝ちたいという気持ちが溢れ出し、結果に出てこない苛立ちと歯痒さに選手たちは打ちのめされた。ただ、前半の広島が見せたサッカーは、確かに美しい。芸術点が認められないサッカーにおいてはどんな点でも1点は1点だが、勝利と共にあえて芸術性や娯楽性を求めてこそプロ。次節、ペトロヴィッチ監督のホームラストゲームでは、指揮官が5年半かけて叩き込んだサッカーの楽しさ・美しさを存分に発揮し、その上で勝利を奪い取って全員で歓喜を叫びたい。

以上

2011.11.20 Reported by 中野和也
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