スピードとテクニック、そして創造性。今まで高さがクローズアップされがちだった名古屋の秘めたる武器が、ついに“実戦配備”された。過去2シーズン、ケネディ不在の際の戦い方を最大の課題としてきたチームが、そのエース抜きで3得点。しかもすべてが流れるようなショートパスによる突破からの美しい攻撃だったことで、名古屋は次なるステージへと足を踏み入れたといえる。空中戦の王者は、地上戦においても破壊力抜群の攻撃を実現できるようになったのだ。
2週連続の昇格組との対戦は、いずれも194cmの前線の起点を欠いての戦いとなった。代役はスピードスター・永井謙佑で、ケネディのような高さとポストプレーは望めない。昨季は同じように起用された際、不慣れなポストプレーに従事することで本来の持ち味を失ってしまうことが多かった。しかし前節の鳥栖戦、そして今節と永井が見せた動きは見違えるようだった。守備では俊足を生かした怒涛のフォアチェックでビルドアップの阻害どころか前線でのボール奪取までしそうな勢いで、それはもはやディフェンスというよりチャンスメイクのレベル。攻撃では体を張るのではなく、様々な局面に顔を出し、ワンタッチで簡単につなぐことでパスワークを流れさせる。そこに玉田圭司や藤本淳吾、金崎夢生ら創造性のある選手が絡むことで仕掛けのスイッチが入り、最終的に永井の元にもラストパスが届くという好循環を生み出すまでになっていた。昨季まではケネディ不在の試合でクロスの出しどころを探す姿が散見されたが、今はパスをつなぎ続けて崩しの一手を探る余裕が出てきた。これは永井にとっても名古屋にとっても、大きな進歩といえる。
対する札幌もまた攻撃が課題だった。ここまでリーグ5試合2得点で未勝利。得点者はいずれも負傷欠場中のボランチ山本真希である。得点するために攻撃面でのテコ入れが必要な状態の中、石崎信弘監督は布陣に少し手を加えて名古屋との一戦に臨んだ。腰痛で欠場の内村圭宏に代わってトップ下に宮澤裕樹を、サイドハーフの岡本賢明に代えてケガから復帰した古田寛幸を起用。ボランチで河合竜二と組むのも前貴之とした。天才肌の前田俊介と宮澤を前線の起点とすることで局面の打開を図るというのが指揮官の狙いで、これは一定の結果を得られたが、いかんせんゴールを陥れるというアイデアが足りなかった。
試合はキックオフ早々に動いた。3分、玉田と藤本淳が横のワンツーでボールを右に運ぶと、そのまま右サイドまで展開すると見せかけ藤本が大きく切り返す。札幌のDFラインがその動きでボールウォッチャーになった瞬間、金崎がゴール前に走り込んだ。「良い動き出しをしたので、優しいパスを送るだけだった」(藤本)という絶妙のスルーパスに金崎は「決めるだけでした」と冷静に合わせ、いきなり先制。相手の出方をうかがうパス回しと、それに合わせた動き出しの質がシンクロした見事なゴールで、札幌は完全に機先を制されてしまった。「あれで『やっぱり名古屋は強いんだ』となってしまった」とは札幌の古田の言。昇格組相手に最高の滑り出しを見せた名古屋は、15分に追加点を奪うなど、この後も常に主導権を握った戦いを展開していくことになる。2点目はオウンゴールだったが、玉田のトリッキーなヒールパスが生んだ速く低いパスの組み合わせから生まれており、1点目と遜色ない美しさがあった。
後半に入っても名古屋の優勢は変わらず。戦況自体は名古屋にミスが多く、札幌が攻め込む姿も多く見られたが、そこは名古屋自慢のDFラインと、古巣対決に燃えるダニルソンらが鉄壁の守備で対抗。小川佳純は「こっちのミスも多くて、相手のミスに助けられた部分も多い」と不満顔だったが、それでも相手のペースに持ち込ませない個人能力の差はやはり大きかった。77分には追加点。玉田、永井、金崎とゴール前で短いパスがつながると、金崎が足裏を使ってラストパス。「パスを出した後、ゴールに向かえば何かが起こる」と信じて走り込んだ玉田が右足で流し込み、今季リーグ初の3得点目で試合を決定づけた。
札幌は試合終了間際に古田のミドルシュートがDFに当たって方向が変わり、1点を返したが反撃はその一発のみ。リーグ6戦未勝利で最下位に転落した。「なかなか勝てていない状況にはメンタル的にもすごくやられますし、何をどうすればという明確な改善点は見つかってないぐらいの、厳しい状況です」と古田が語るほど、チームには焦燥感が漂っている。今後いかにモチベーションを保ち、選手に前を向かせていけるか。石崎監督の手腕が問われるのはこれからだ。
快勝といえるゲームだった名古屋にも課題はある。「得点を狙いに行ってしまった」と苦笑いしたダニルソンを始め、攻撃に行き過ぎたことで試合そのもののバランスは崩れてしまっていた。だからこそ迫力のある攻撃が仕掛けられたという側面もあるのだが、カウンターに対する守備の人数は少なく、勝って良かったで済まされる問題ではない。「結果としては勝てたんで、最低限かな」と言った小川は、そのカバーリングに忙殺されたひとり。ダニルソンも「連係でのミスが多かった。映像で見て修正したい」と語っており、同じことがそのまま他のチームに対してできるかどうかは、未知数の部分も残されてはいる状態だ。
ともあれ名古屋はリーグ戦連勝、ホームでは4連勝を飾り、順位も3位に上昇した。ケネディの復帰は不透明なところだが、ひとつの成功を収めたことでチームの雰囲気自体は非常に明るい。次週は水曜日のAFCチャンピオンズリーグのホーム天津泰達戦ののち、アウェイで今季好調の広島と対戦(4/21・土)が待つ。油断せず、細部の修正に努め、札幌戦のような魅力的な攻撃とバランスの良い守備を両立させる姿を、この2戦で見せてほしいものだ。
以上
2012.04.15 Reported by 今井雄一朗













