冷たい雨が激しく降る寒空に、試合終了を告げる乾いた笛の音が響く。先制点を奪った横浜F・マリノス小野裕二は、両手をヒザに付き、しばらくうなだれる。その背中からは徒労感が、にじみ出ていた。
試合を振り返れば、開始3分に横浜FMが先制する可能性もあった。中村俊輔がペナルティーエリア付近の直接FKを蹴り、クロスバーを叩いたからである。ただし、前半のビッグチャンスは、この一度だけ。「風上のほうがスリッピーでやりにくいところがあった」(中町公祐)ためか、前線へ入れる縦パスが不安定で、なかなかボールが落ち着かなかった。
むしろ前半は、大宮アルディージャの時間だったと言えるだろう。その起点となったのは、剛柔兼ね備える1トップタワー、ラファエルだ。ボランチとDFの間の“いやらしい”位置に顔を出し、時にはサイドにも流れ、懐深いボールキープからサイド攻撃を誘発。36分には、ラファエルから好機が生まれる。CK後の流れで、左サイドにいた彼は相手DFを引き連れ、巧みなキープからバックパス。それをカルリーニョスがダイレクトで正確なクロスを送り、ファーに残っていた坪内秀介がジャンプヘッド。ボールは惜しくもバーの上を越えた。
横浜FM・樋口靖洋監督は、ハーフタイムに檄を飛ばす。
「ファーストはしっかり競りにいって、はね返そう。ポイントはセカンドだ。しっかりマイボールにすること」
後半、この仕事を忠実にこなし、チームに躍動感を与えたのが、今季の新加入のダブルボランチ、富澤清太郎と中町。富澤は前半から動き出しが良く、空中戦などの“ファースト”でしっかり競り勝ち、カバーリングも冴えていた。中町は、後半に持ち味を発揮。「風下に立ち、状況的にやりやすくなった」とインターセプト回数が増え、“セカンド”ボール争いで存在感を示す。さらに守備だけ留まらず、後半だけで2本のシュートを放つ。74分に小野へ送った丁寧なスルーパスも、センスの良さが漂うプレーだった。この2人の活躍でペースで掴み、53分に小野が絶妙ループシュートをマークしたわけだ。
ところが、途中交代の大宮・長谷川悠に、82分に決められて、まさかの失点。下平匠の左クロスをラファエルが、中村に余裕をもって競り勝つ。その刹那、横浜FMのDFはボールウォッチャーになり、0コンマ何秒の世界だが長谷川を見失う。それが致命傷となり、長谷川に押し込まれたのだ。なぜ中村がラファエルと競らなければいけなかったのか。なぜ中澤佑二と栗原勇蔵という頑強なDFが、相手の後半のワンチャンスで決められてしまったのか。次こそ白星を掴み損ねないためにも、きっちり原因を詮索・修正しなければいけない。
リーグ戦4戦未勝利の大宮も当然、課題が残る試合だった。しかし、今季モンテディオ山形から完全移籍した期待のFW、長谷川に今季初の一発が出たのは明るい話題だろう。「何でもいいからきっかけが欲しかった」。ようやく、きっかけを掴んだ長谷川は、チームのカンフル剤になれるだろうか。
以上
2012.04.15 Reported by 小林智明(インサイド)













