試合後の記者会見の冒頭で、勝点3を取れたことに「ホッとしています」と語った松田浩監督の言葉に、この試合の展開がよく表れていた。序盤から多くのチャンスを作りながらも、鳥取の粘りに苦しんだ栃木だったが、最後は内容に沿った勝利を手にした。
栃木は立ち上がりから何度も決定機を作った。まずは4分、最初のCKのこぼれ球から當間建文が左足で狙ったが、鳥取GK井上敦史がはじいた後に、森英次郎がゴールラインぎりぎりでクリア。その後の混戦からもボールがラインを割りかけたが、再び鳥取守備陣にクリアされた。6分には右サイドを崩し、小野寺達也のセンタリングを廣瀬浩二が合わせたが決まらない。7分にも高木和正のパスから本橋卓巳が狙ったが、GK井上のセーブに遭う。どれかが決まっていれば、一方的な展開になっていてもおかしくなかったが、決めることができなかった。
その後もセットプレーから赤井秀行の高さを生かすなど、さまざまな形でゴールに迫るものの、なかなか先制できない。廣瀬が「前半に先制点が取れれば理想的な展開だった」と語り、松田監督も「前半のうちにもう少し、攻撃の精度と、運があれば、点が入ったのかもしれない。過去2試合は前半のうちに点が入った(先制できた)ことで、戦いやすい形になったんですけど、今日はずっと0―0で鳥取さんに粘られた」と振り返ったように、栃木にとってはゴールだけが足りなかった。
押されっぱなしの鳥取は、最初のシュートが38分と、ほとんど良い形を作れずにいたが、ピンチの連続を無失点でしのいだことで、少しずつ流れを引き寄せる。前半のアディショナルタイムには小井手翔太が右サイドをフリーで抜け出してセンタリングを送り、これは栃木DF宇佐美宏和にクリアされたが、続くCKからのこぼれ球を熊澤圭祐がシュート。これも上に外れたが、良い形を作り、0―0で前半を終えた。
迎えた後半、立ち上がりにチャンスを作ったのは鳥取。49分にドリブルで中央を破った小井手がファウルで倒され、ペナルティーエリアのすぐ外、ゴール正面でFKを得る。尾崎瑛一郎のFKは惜しくも上に外れたが、前半終了間際からの良い流れを保っていた。栃木は、前半終了間際のクリアの際に宇佐美が右足を痛め、後半開始から大和田真史と交代。加えて先制できないうちに鳥取の反撃を受けるようになり、嫌なムードが漂い始めていた。
しかし54分、栃木がそんなムードを振り払う先制点を奪う。右サイドでディフェンスラインの背後を取った廣瀬に、菊岡拓朗がスルーパス。鳥取DF水本勝成が先に追い付くかと思われたが、「裏を取ろうとしたけど、ボールが中に来たので、一度ディフェンダーの背後に入って視野から消えつつ、前に行けた」と振り返る廣瀬が、先にボールに触って水本と入れ替わり、GKと1対1に。最後はGKの股間を抜くシュートを決め、ようやく均衡を破った。
前半から優勢だった栃木が先制したことで、流れは再び栃木に傾くかと思われたが、その後に押し気味に進めたのは鳥取だった。ラインを押し上げてパスをつなぎ、両サイドにボールを回してゴールをうかがう。58分に本橋も負傷交代となった栃木は、「奪ったボールを失い過ぎた」(松田監督)ことで、カウンターがうまく機能せず、前がかりになる鳥取の勢いを止められない時間が長く続いた。
しかし、鳥取もサイドまでボールは運ぶものの、チャンスを作るには至らない。吉澤英生監督は「クロスは有効な手段だと思いましたが、テンポがずっと同じだったのが、得点に結びつかなかった要因ですし、もちろん質、クロスの質、シュートの質もそう。もう一つ、ドリブルで仕掛けてアーリークロス、低いクロスなどがあれば、ゴールに結びつくシーンが演出できたと思う」と振り返った。加えて、ドリブル突破やワンツーなど中央を破ろうとする攻めがないため、相手の目先を変えることができず、栃木の守備陣を揺さぶり切れない。セットプレーからチャンスになりかけたシーンもあったが、シュートを打つには至らなかった。
そうするうちに87分、栃木が試合を決定付ける2点目を奪う。鳥取のクリアミスから攻め込み、交代出場の棗佑喜のセンタリングを、やはり交代出場の杉本真が落とし、菊岡が右足で蹴り込んだ。直前に岡野雅行と吉野智行を投入し、最後の反撃に出ようとしていた鳥取の勢いを止めるには十分な追加点。結局、そのまま栃木が2―0で勝利を収めた。
松田監督は「サッカーに優勢勝ちはないので、点が入らないことには勝てない」と語ったが、栃木がチャンスを作りながらも、なかなか得点できなかったことで、鳥取にも勝機が広がっていった試合だった。しかし、結局は生かすことができず、ホーム2連敗。リーグ最多失点の守備と、チャンスを生かし切れない攻撃、両面の課題が、あらためて浮き彫りになった一戦だった。
廣瀬が「(前々節の)松本戦で戦う気持ちを確認したことが連勝につながっている」と語った栃木は、その松本戦から3連勝。菊岡が「今日はあまり良い試合ではなかったけど、後ろがうまく耐えてくれた。悪い中でもアウェイで勝ち切ったことは、次のホームにつながると思う」と振り返るように、鳥取の粘りに手こずりながらも完封勝利を収め、9位に浮上した。次節は最下位の町田とホームで、次々節は21位の富山とアウェイで対戦する。順位と力関係を考えれば、連勝を5まで伸ばせる大きなチャンス。ここでも結果を残せるかどうか、J1昇格の資格が問われる2試合ともなりそうだ。
以上
2012.07.09 Reported by 石倉利英













