シュート数は19対3、コーナーキックの数も14対3。ただし、ワンサイドのゲームを制したのは、圧倒的に攻め込んだホーム・山形ではなく、耐えに耐えたアウェイ・横浜FC。打ったシュートはすべてセットプレーからのもの。流れのなかからのシュートを許されなかったが、虎の子の1点を最後まで守りきった。
横浜Cは寺田紳一、中島崇典が移籍後初先発。4分にはサイドチェンジからフリーで左サイドを突いた中島崇がクロスを上げてチャンスをつくり、前線では大久保哲哉、田原豊の2トップに収まり、サポートから攻撃が続く場面もあった。しかし、流れはすぐに山形が力強く引き寄せる。奪ったあとサイドいっぱいに広げると、ピッチ上のいたるところで裏やスペースを突くランニングが見られた。パサーは常に複数の選択肢を見ながらプレーを選び取り、アタッキングサードまでは容易にボールを運ぶことができた。
その攻撃の中心にいたのは、チームに合流してわずか4日目のブランキーニョ。「ブランキーニョが前を向いて結構キープできるので、後ろの選手も前の選手も動き出せばパスは来ると思うので、そこは今日意識したかなという感じです」と話したのは永田亮太。8分には山崎雅人のはたきからのスルーパスで再び山崎を敵陣深く潜り込ませ、15分には小林亮の横パスを間で受け、永田へスルーパスをとおすなど、すでに大きな信頼を得てピッチに立っている。33分には飛び出した宮阪政樹とのパス交換で狭い中央を上がって低い弾道のミドルシュート。GKシュナイダー潤之介の左手が触らなければ、ポストに跳ね返ることなくゴールマウスに吸い込まれていた。記録では前半のシュート数は4対2だったが、ブランキーニョの加入で山形の攻撃の質がさらに高まったことは明らかだった。
無失点で抑えながらも、主導権を握れなかった横浜FC・山口素弘監督は、ハーフタイムを挟むと、右サイドでプレーしていた武岡優斗をトップ下に上げて中盤をダイヤモンドに。「セカンドボールを拾われてたというところがあったので、より真ん中に人を固めて、ある程度サイドは捨てよう」(山口)との目的があった。ボールを取ったあと、小林と石川竜也の両サイドバックの前には大きなスペースが空き、敵陣まで難なくボールを運べたが、小林が上がったあとのスペースを狙って縦パスに飛び出した武岡が西河翔吾に倒され、横浜FCが左からのフリーキックを得る。寺田と並んだ高地がモーションに入る直前、堀之内聖に続いて大久保がニアへ走る。マークに付いていた西河はゴールに近いルートをショートカットして追いつこうとしたが、そこで一瞬、田原に進路を阻まれたことで結果として大きく引き離された。精度高く入ってきたボールをフリーで合わせて、それを決めるのはフォワードの責務。古巣への一撃。55分、劣勢の横浜Cが先制に成功した。
「点を取ってから下がり過ぎて押し込まれる場面も増えてしまった」(高地)という横浜Cに対し、ビハインドとなった山形が猛攻を開始する。左サイドでの2対2から抜け出し、ブランキーニョのパスを受けた永田のシュートで狼煙を上げると、58分、62分には中島裕希が鋭い動き出しで強烈なシュートを放つが、いずれもシュナイダーの好セーブに遭い、ゴールならず。73分には永田のスルーパスから途中出場の萬代宏樹がグラウンダーでマイナスのクロス。フリーでペナルティーアーク付近に侵入したブランキーニョのシュートがバーに弾かれ、跳ね返りを拾った中島裕のシュートも、懸命に戻りコースを塞いだ中島崇の踏ん張りもあり、バーを越えた。また、「残り30分は、セットプレーの守備練習かと思いました」と堀之内が語ったように、その間、山形は10本のCKを得ているが、ほとんどのキッカーを新加入のブランキーニョが務めたことで、ゾーンの横浜FCに対し、サインプレーなどで揺さぶる工夫が発揮されなかった。攻め込む山形、守る横浜FCの構図はアディショナルタイムに入っても続いた。後半のシュート数は山形が15、横浜FCが1。その1本が決勝点となり、「最後、体を付けたり、体を張ったり、これこそが本当に昇格争いのゲーム」(山口)と守備でもしのぎきった横浜FCが勝利した。
山形は試合ごとにめざす攻撃的なスタイルに近づき、相手のシュートを3本に抑えた守備も安定している。その一方で、3引き分け後の敗戦と勝点の積み上げには難儀している。今節でのプレーオフ圏内復帰はならず、横浜Cにもついに1差に迫られた。ただし、2位・東京Vとの勝点4差が遠い距離でもない。ノーゴールに終わったことに関して、奥野僚右監督は「それを運任せにする、そういうものじゃなく、技術的にそこを決めるという作業をトレーニングから続けていくということに尽きると思います」と今後も地道に正攻法でレベルアップをめざすことを誓う。揺るがぬ信念が結果に反映される時は、確実に近づいている。
以上
2012.08.13 Reported by 佐藤円
J’s GOALニュース
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