本文へ移動

今日の試合速報

第17節 6.1(土) 15:00KO 国立競技場 鹿島vs横浜FM 国立競技場に10,000名様無料ご招待
第17節 6.1(土) 15:00KO 国立競技場 鹿島vs横浜FM 国立競技場に10,000名様無料ご招待

J’s GOALニュース

一覧へ

【J1:第11節 広島 vs 大分】レポート:自分を信じ続けた若者の勝利。課題満載の中、それでも勝点3を広島は手にした(13.05.12)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
白眉は、開始2分に訪れた。

若者はその時、身体が無意識に、自然と動いたという。ボールを拾い、まずミキッチにパスを当てる。落としを今度は石原直樹に当てた。その勢いのまま、彼は最前線に飛び込んだのだ。どうして、そんな動きを発想したのか。「自分でもよくわからない」と彼は言う。
塩谷司を基点として5本続いた広島のダイレクトパスと60mの幅をフルに使ったダイナミックな展開に、大分の守備陣は混乱した。ダイレクト6本目となるパク ヒョンジンのクロスがあがった瞬間、ゴール前の人数では攻撃3対守備2(GKをのぞく)。飛び込んできたストッパー・塩谷司の存在に、児玉新の対応も難しい。重苦しい雨雲を貫かんばかりに飛翔した背番号33は、精密に飛んで来たクロスボールにピシャリとヘッドを叩き付けた。
ネットに吸い込まれたボールは、塩谷にとっては記念すべきJ1初得点の証。これまでセットプレーから何度も決定的なシュートを放ち、鹿島戦では微妙なオフサイドの判定にゴールを取り消されたこともあった。「だからまず、副審を見ました」とヒーローは笑う。

昨年8月、あたたかな水戸のサポーターに活躍を誓って広島にやってきた若者は当初、苦しみに苦しんだ。練習でもレギュラー組の攻撃にやられ続け、ポジション取りの指示がひっきりなしに飛び、パスの精度に対する要求も厳しく、周囲と同じ絵を描くことも難しい。悩みに悩んだことが影響したのか、気付いたら円形脱毛症にもなっていた。初先発の機会を与えられた天皇杯・FC今治戦で2失点。「4部のアマチュアに負けた」という自責の念に、胸が苦しくなった。

「広島への移籍は、果たして正解だったのか」

一度だけ、そんな迷いが自分の心を支配した。「ポジションをあけている」とオファーしてきたチームを選択した方が正解だったのか。だが若者は迷いを必死に打ち消し、トレーニングに集中した。その姿勢と圧倒的な守備能力が評価を高め、優勝決定試合となったC大阪戦ではリベロで先発して勝利。今季は、開幕からACLも含めて全試合にフル出場を続けている。だが、まだまだ満足はできない。守備も攻撃も、課題ばかりが見つかるのが現状。その課題に全力で取り組み、現状維持ではなくさらに上を目指すどん欲な姿勢を塩谷が続けたことが、これまでなかった「ゴール前までの攻撃参加」を無意識に表現できた要因だ。

塩谷のどん欲さは、チーム全体として必要なものだ。勝利したにも関わらず、佐藤寿人は「もっと点差をつけて勝たねばいけない試合」と厳しい表情を崩さず、森崎和幸も「相手が堅かったというよりも自分たちの問題」と笑顔はない。大分にはチェ ジョンハンのバー直撃シュート以外にチャンスを与えず、古巣との対決のために必死でコンディションを戻した西川周作のシュートストップ能力に頼るシーンも許さなかった。守備が機能した結果とも言えるが、広島の本質は攻撃。ゴールを奪うためのアイディア、精度、連動性にもっとこだわり、もっと厳しく要求しあう必要がある。そうでなければ、上位では闘えない。それは誰よりも闘っている選手たちがよくわかっている。

大分はこの試合のために非公開練習で準備を重ね、先発を6人も入れ替えた。布陣も5バック+3ボランチでブロックをつくる形を採用、堅守速攻の色彩を鮮明に打ち出した。だがその思惑は塩谷のゴールであっさりと崩れる。守備に落ち着きを取り戻しても、攻撃に転じようとした瞬間にボールを森崎和や青山敏弘、石原に何度も奪われた。小松塁・高松大樹、交代で入った森島康仁を含めた3人のFWはシュートゼロ。シュートを撃ったのは両サイドバックだけという記録が、大分の攻めの手詰まり感を証明している。

この日も辻尾真二や高木和道が負傷でベンチから外れ、試合途中で深谷友基も負傷した。確かに負傷者は多い。しかし、広島や他の多くのチームも、主力の怪我には悩まされているわけで、リーグを闘うためには跳ね返さないといけない課題だ。例えばこの日、今季初出場を果たした松原健は、若者らしい溌剌としたプレーを見せて広島の左サイドを脅かした。その躍動感は、試合に出られなくても、きっとチャンスがくると信じてやり続けてきた証明である。彼のような気迫、ひたむきさ、情熱をチームとして表現し続けることができれば、必ず光は見える。厳しいJ1昇格プレーオフを勝ち抜き、クラブ消滅の危機を乗り越えてきた大分トリニータなのだから。

ヒーローとなった塩谷司もまた、広島移籍後の苦しみの中、自分を信じ続け、闘い続けた。決して簡単ではない。しかしそこにチャレンジしないと、希望という微かな光は静かに遠ざかるだけ。塩谷が演出した美しいゴールは「諦めずに続ける」ことの重要性を広島にも、そして大分に対しても、明確に提示したのである。

以上

2013.05.12 Reported by 中野和也
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
サッカーのポジション解説
サッカーの試合時間・タイムルール
インテンシティ
オフサイド
ビルドアップ

テレビ放送

一覧へ

明治安田J1リーグ 第10節
2024年4月27日(土)14:00 Kick off

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/04/25(木) 00:00 ハイライト:奈良vs広島【ルヴァンカップ 1stラウンド 2回戦】