試合終了が迫り、鹿島の選手は「ここしかない」と共鳴した。自陣でボールを奪い、ゴールに全力疾走。最終ラインに位置した青木剛が一気にペナルティエリア付近までドリブルでボールを運ぶ。「本当にラストだったので、切り返そうか迷ったけど、なんとか人を目掛けて蹴った。何か起これば良いなと思って」と青木。一度、大分のDFに弾かれるも、青木を追走していた大迫勇也がこぼ球を拾い、左足を一閃。ボールはネットに突き刺さり、試合終了のホイッスルが鳴り響く。鹿島はヤマザキナビスコカップ3連覇に向け、予選リーグを通過した。
試合後に決勝ゴールを奪った殊勲者を抱きしめ喜んだトニーニョ セレーゾ監督は、「前半だけ考えれば大分が勝利してもおかしくなかった」と話すほど、若い選手が躍動するホームチームの勢いに苦戦した。しかし、ハーフタイムにしっかり修正し結果に結びつけるのが、リーグ誕生から20年で最もタイトルを手にしたクラブの不変の強さだ。「相手にプレスをかける位置を低くして、サイドバックとサイドハーフがユニットを組んで落ち着くようになった」(トニーニョ セレーゾ監督)。主導権を奪い返し、54分に大迫が、65分に柴崎岳、75分にダヴィがペナルティエリア内で決定機を迎えた。いずれも大分の懸命なディフェンスとバーに弾かれ得点に至らなかったが、いつ点が入ってもおかしくない状況であった。前半の鹿島のシュート数5本に対し、後半は倍以上の11本。しかも大分の後半のシュート数は1本と、数字の上でも鹿島が圧倒した。
後半の猛攻に至るまでの伏線もあった。前半はアウェイ連戦の疲れもあり、プレスは緩く、攻撃もスピードがなかった。ただ、悪いなりにも要所を締め、攻撃でもボールを動かし、相手を走らせた。後半に大分の運動量がガクンと落ちたのは、鹿島のしたたかな狙いであった。得点は試合終了間際で決めたものだが、鹿島は90分とアディショナルタイム5分を含めた95分で勝つためのプランを遂行したというわけだ。
前回の対戦に続き、大迫に劇的な決勝ゴールを奪われた大分だが、「勝点は取れなかったが収穫の大きな試合だった」(田坂和昭監督)。ケガ人が続出する台所事情の厳しさが物語るように、リーグ戦の前節・広島戦から8人も先発メンバーを入れ替えての試合であった。だが、永芳卓磨を筆頭に、出場機会の得られなかった選手が、「個々の良さを発揮し、チームとして準備してきたことが出せた」と田坂監督は収穫を口にした。さらに、長期離脱していた為田大貴が今季初出場初先発で90分プレーし、木村祐志、安川有も戦列に復帰し、存在感を示した。
いまだ勝利をつかめずにいるが、田坂監督の「元気でパワーのある選手を優先した」という突貫で仕上げたメンバーが、人を追い越す動きや速攻から何度も好機を作った。最近引き過ぎていた最終ラインを、この日は高く設定し、陣形をコンパクトに保つこともできた。これまで低迷していた頃とは明らかに違う。高い集中力が生み出す一歩。これが続けば初勝利も近づくはずだ。
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2013.05.16 Reported by 柚野真也













