C大阪のホーム、キンチョウスタジアムは、『歓喜』と『安堵』の笑顔にあふれた。ヤマザキナビスコカップの予選リーグ第6節では、C大阪が鳥栖に2-1と逆転勝利。これで勝点を10に伸ばしたC大阪は、鹿島とともに1試合を残してBグループ2位以内が確定し、3年連続となる決勝トーナメント進出を果たした。一方の鳥栖は、2連勝すれば初の決勝トーナメント進出も自力で叶ったのだが、最後はC大阪の前に力尽き、予選グループでの敗退が決まった。
ただし、試合を振り返ると、直前のJ1第11節・川崎F戦と同じスターティングメンバーを揃えたC大阪は、4日前の新潟戦から先発を10人入れ替えた鳥栖に序盤から苦戦を強いられた。開始1分と経たないなか、キックオフからプレーが止まらないうちに、あっけなく鳥栖の金井貢史に先制点を許してしまう。「相手の左サイドの裏のスペースというのは、1つ、ウィークなポイント(弱点)としてあるということは、当然頭のなかにはあった」というのは、鳥栖の尹晶煥監督。C大阪は左サイドを簡単に崩され、ゴール前へオーバーラップしてきた金井にも対応できなかった。
そこからは、「あれだけ早い時間に先制されたことで、本来ディフェンスの固い鳥栖にとっては、より試合運びが有利になったという側面があった」とC大阪のレヴィークルピ監督も言うように、鳥栖の持ち味である堅守速攻の術中にはまる展開になる。「我々は当然、攻撃的に、前がかりに行かなければいけない。そこでボールを奪われたあと、鳥栖の素早いカウンターを何度も食らってしまい、危ない状況が続いた」(レヴィークルピ監督)。それでも、清武功暉や早坂良太らに許した決定機を、C大阪GKキム ジンヒョンのファインセーブでなんとかしのぎ、その後の失点は食い止める。
停滞した状況を打破しようと、前半のうちにC大阪は動く。37分、扇原貴宏に代えて、ドリブラーの楠神順平を投入。山口螢をボランチに下げる形をとり、中盤のバランスを再構築しつつ、さらに攻勢を強める。すると、後半はまさにC大阪が一方的に攻勢を仕掛けた。だが、鳥栖の強固な守備ブロック、ハードなプレスの前にゴールが遠く、エースの柿谷曜一朗にも激しいマークが集中。最後のゴールにまでつながらず、刻々と時間だけが過ぎていく。
しかし、この試合では、双方の後半の選手交代が勝敗を左右していった。61分に南野拓実を起用し、さらに攻撃への活力を強めたC大阪とは対照的に、鳥栖はFWロニに代えて、DF金正也を投入し、事実上5バックのような形を採用する。ただし、これで勢いを増したのは、C大阪のほう。72分、丸橋祐介が重苦しい雰囲気を打破する、豪快な直接FKを鳥栖ゴールに叩き込み、試合を振り出しに戻すと、ドラマは終盤にやってきた。
81分、C大阪は最後のカードとして切り札の播戸竜二を送り込むと、その5分後、桜色に染まったC大阪サポーターが集うゴール裏の目の前で、歓喜の瞬間が訪れた。酒本憲幸の「バンさん(播戸竜二)に、『上げさせられた』みたいな感じ」という右アーリークロスから、鋭くニアへ飛び出した播戸が絶妙ヒールパスで中央へ流し、そこに詰めていたのは、南野。「(ボールが)出てくると信じて走り込んでいた」18歳が、決勝点を押し込んだ。
C大阪最古参の17番から、チーム最年長のベテランストライカーを経由し、今季トップ昇格した期待のルーキーへ見事につながった形は、まさにJリーグの歴史を象徴するような流れ。好アシストの播戸も、「Jリーグ開幕時に生まれていないような選手がゴールを決めたりというのは、素晴らしいというか、Jリーグが少しずつ歴史になってきているというように思う」と語っていた。また、これで悲願のタイトル獲得へ、一歩前進したC大阪だが、「1試合1試合、ヤマザキナビスコカップも、リーグ戦も、しっかり戦って、チーム力というのをもっと上げていかなあかん」と酒本も言うように、イレブンは今後の戦いへ、気を引き締め直した。
一方の鳥栖は、この試合でもリーグ戦同様に複数失点を喫し、課題の守備の改善は図れず。それでも、尹晶煥監督は、「我々は非常に苦しい状況に置かれているが、ここをうまく耐えて、跳ね返していくことで、より強固なチームになっていくと思う。中2日の時間のなかで、次に向けて、しっかり準備をして挑んでいきたい」と、リーグ戦での再起に向けて、気持ちを切り替えていた。
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2013.05.16 Reported by 前田敏勝













