磐田 2 - 1 G大阪(14:04:磐田) 入場者数　16,215人
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　後半が始まってわずか３分。西が主審に執拗に抗議している。さすがに度が過ぎた。この日２枚目のイエローカードを提示され、痛恨の退場。１点のビハインドを背負った状況で、サイド攻撃の起点となる西を失って数的不利に追い込まれた。さすがの磐田もこれでは相当苦しいはず。万事休す、そんな言葉さえ脳裏をよぎった。

　しかし、そこは磐田である。「西の退場で逆にチームがまとまった」（服部）、「勝ちたい気持ちが出た」（河村）─。この逆境をバネに代えて終盤に逆転し、クラブ史上初のステージ優勝にかすかな望みをつないでいたＧ大阪に引導を渡した。

　試合序盤からボールを支配したのは磐田だったが、必ずしもゲームを優位に進めていたわけではない。「ボールを回されているようで、持たせるような感じ」とＧ大阪の大黒が形容したように、磐田は中盤でボールを回すものの、そこから先になかなｋ進まない。グラウを基点に６分に名波、32分に福西がミドルシュートを放つが、それ以外は突破口を見出せず、しっくりしない展開が続く。

　むしろプラン通りにゲームを進めていたのはＧ大阪の方だった。マグロンが前線でタメを作って、吉原と大黒らが、浅い磐田の最終ラインの裏をつくという形を繰り返した。14分の先制点もそうだった。マグロンが粘ってキープしたボールが遠藤に渡り、その遠藤がディフェンスラインの裏へスルーパス。これに反応した吉原がキーパーもかわし、左足で無人のゴールに流し込んで、貴重な先制点を叩き出した。

　しかし「狙い通りの前半」（西野監督）から一転、Ｇ大阪が後半に劣勢に立たされた要因は以外にも“数的優位”だった。「（磐田が）10人になってから前は攻めにいきたい、かといって後ろがラインを上げているわけでない」（大黒）ために中盤にすっぽりとスペースが空き、そこを磐田につかれた。西野監督も「数的優位な状況になった後の全体の意識が共通に取れなかった」と悔やんだ。

　磐田にしてみても、西の退場がひとつの発奮材料になった。前田は「10人になってちょっとヤバイなと思ったけど、開き直ってがんばるしかない」と打ち明けたが、これでようやく選手たちのエンジンがかかった。１人足りない分を、「１人１人が運動量を上げて」（柳下監督）補ったのである。

　自由になった中盤で磐田らしいパス回しを展開し、後半15分に名波からのパスをペナルティエリア内で受けた前田が、相手ディフェンダーに倒されてPKを獲得。これをグラウが落ち着いて決め、まずは同点。

　その後も「深く入ってコーナーボックス付近から（クロスを）上げないと相手を崩せない」との指示通りにサイドをえぐってクロスを放り込んでいく。そして後半26分にその努力が結実する。左サイドでボールを受けた前田が名波に絶妙のパス。名波が球足の速いクロスをゴール前に上げると、途中出場の河村がドンピシャのタイミングで頭で合わせ、ついに勝ち越しに成功した。

　対するＧ大阪も、後半35分には最終ラインを１枚削って２バックで総攻撃を仕掛けるが、磐田の巧みなボールキープの前になかなか糸口を掴めず。磐田はロスタイムに隊長・中山を投入してゲームを締め、Ｇ大阪の優勝の望みを打ち砕いた。

　西の退場が両チームにもたらした思わぬ効果。皮肉にも有利になったはずの側の歯車が狂い、不利になったはずの側の歯車がかみ合った。西野監督は「ジュビロはどんな状況でも強い」と脱帽したが、これこそが過去６度のステージ優勝という実績を積み重ねながら身に着けてきた勝負強さ、底力だろう。残念ながら、Ｇ大阪にはまだその積み重ねが足りないということだ。

2003.11.23 Reported By スポマガWORLD SOCCER

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