初スタメン。選手にとって特別な瞬間だ。学校の部活やユースチーム、あるいはプロとしての初スタメン。フル代表となれば尚更である。
マレーシア戦でその瞬間を迎えたのはGKの土肥洋一選手と山田卓也選手。今年で31歳、30歳となる二人は、経験がある分「緊張はない」というが、「結果」が欲しいという点において同じだった。ただ、その満足度は若干異なる結果となったかもしれない。
他のポジションに比べてなかなかチャンスを掴むことのできないGKの土肥選手は、代表では出番が無く、黙々と遠征に帯同を続けてきた。ようやく巡ってきた先発のチャンス。「自分の持ち味を出したい。」と、静かにキックオフの時を待っていた。
ゲームが始まって、日本が一方的に責め続けるという予想通りの展開が繰り広げられる。大きく押し上げられたディフェンスライン。土肥選手にはなかなかボールは来ない。
以前、京都のGK平井選手が「自分の理想は一度もボール触らずに終了の笛を聞く事。」と冗談めかして話しているのを聞いた事がある。それは当然無失点での話で、理想の形であることは事実だが、今の土肥選手には少しあてはまらない。
マレーシアがボールを持つと、土肥選手は腰をかがめて戦闘態勢に入る。しかし、あっという間に味方がボールをカットし、選手達は背中を向ける。ゲーム中はその繰り返し。結局、土肥選手がボールに触ったのは2回だけだった。
だが、だからといって「持ち味」を発揮できなかったかといえば違うだろう。派手なセーブこそなかったが、彼は「声」を出し続けた。激しいコーチングは魅力のひとつだ。代表戦の大歓声の中、恐らく土肥選手の声は殆どDF陣に届くことはなかっただろう。それでもいつもフィールドプレーヤーを鼓舞し、身振り手振りで指示を伝え、集中を切らさなかった。
そして、相手攻撃に移った時の表情、身体からみなぎる闘志。「どこに打たれても絶対とめてやる」という気持ちはスタンドまで伝わってきた。ゲーム後に「こういう(代表の)ピッチに立てることはそうないこと。まずチャンスをくれたことに感謝したい。もっと努力して、またこのピッチに立ちたいと思う。」と土肥選手は語った。
ともすると、今回は本人にとって不完全燃焼であったかもしれないが、次に代表のゴールマウスに立つ土肥選手が楽しみだ。
一方、山田卓也選手は試合前日「ベストパフォーマンスを見せたい。」とコメントし、ゲームに臨んでいた。守備的布陣を敷いたマレーシア相手には中盤からの飛び出しが有効。そこで抜擢されたのが昨季MFながらJリーグで10得点を叩きだした山田選手である。「自由にやって良い」と指示されたが、監督から求められていることは分かっていた。
「前を見て、オーバーラップを意識していきたい。」と話していた通り、積極的に前線に顔を出し、日本最初のシュートも放った。その後も、中を使ったり、右サイドに流れて果敢に攻め上がりを見せ、ミドルシュートも披露。ペナルティエリア前でボールを要求する姿は幾度もあった。どうしても一点獲りたい。いや獲るつもりだったのだろう。
攻撃だけではない。守備では激しいタックルで相手のチャンスを潰しにいく。またピッチの中では、周りの選手と言葉を交わしあい、大きな手振りで指示を出す。「いつもキャプテンと同じ気持ちでやっている」という彼の気持ちは、代表の時も変わらないようだ。何も知らずゲームを観ている人には、ずっと代表でプレーしてきた中心選手に思われても不思議はない存在感。75分にピッチを後にすることになったが、彼らしいプレーは随所に見せてくれた。
ゲーム後、「やっぱり先発だと気持ち良くゲームに入れる。できれば90分やりたかった。」と話した山田選手。後半ミスもあったと反省点も口にしたが、「ある程度やれたと思う。」と表情は明るかった。そして、土肥選手と同じく気持ちは「次」に向いている。
「今日の出来については見ている人が判断すること。いずれにしても山田が日本代表には必要なんだと思わせなければいけない。次はもっともっと印象付けないと。」
初めての代表スタメンを経験した土肥選手、山田選手の二人がこれからどんなパフォーマンスでアピールしていくのだろう。次のイラク戦では誰にチャンスが与えられるのか。そして最終メンバーに残るのは誰か。興味は尽きない。
2月18日、いよいよW杯一次予選が始まる。
2004.2.8 Reported by 高木聖佳
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