国歌斉唱の時、鈴木啓太(浦和)が物凄い形相で地面を睨みつけ、今野泰幸(FC東京)は緊張感を何とかコントロールしようと下を向いて集中した。だが独特な雰囲気に押されたのか、若きジャパンの何かがおかしい。試合が始まってもハッキリしない展開が続く。時間が刻一刻と過ぎても、スコアボードは0-0のまま。山本昌邦監督は相次ぐ選手交代や一か八かのスクランブル作戦で1点を奪いに行くが、それも叶わない。終了を告げるホイッスルが鳴った瞬間、那須大亮(横浜)は顔を覆い、他の選手たちもガックリと肩を落とした。日本は大事なファーストマッチで「勝ち点3」を得ることができなかった。
アテネ五輪アジア最終予選・UAEラウンドが3月1日、アブダビのアルジャジーラ・スタジアムでスタートした。U-23日本代表は17時30分(日本時間22時30分)からU-23バーレーン代表と対戦。圧倒的にボールを支配しながら、ゴール前をこじあけられず、初戦はスコアレスドローに終わった。第2試合でホームのUAEがレバノンを4-2で下したことから、現時点で日本はバーレーンとともに2位にとどまっている。
3大会連続の五輪出場を賭けた、極めて重要な戦いが始まった。決戦の地・アブダビには、この日になって日本からの200人を超えるサポーターが結集。現地人のいないスタジアムに陣取って熱い声援を送った。天気は快晴、気温約24度、湿度60%と、選手たちにもまずまずのコンディションとなった。
初戦勝利で弾みをつけたい山本監督は、前日練習で試した通りのメンバーをピッチに送り出した。GK林卓人(広島)、DF田中マルクス闘莉王(浦和=中)、菊地直哉(磐田=右)、那須大亮(横浜=左)、ボランチ・鈴木啓太(浦和)、今野泰幸(F東京)、右サイド・徳永悠平(早稲田大)、森崎浩司(広島)、トップ下・松井大輔(京都)、FW田中達也(浦和)、平山相太(国見高)である。
バーレーンの基本システムは3-5-2。前半は2ストッパーが日本の2トップをピタリとマークし、中盤もマンツーマン気味についてきた。主力は最終ラインを統率するDFアドナン、キャプテンで攻撃的MFのマッキ、スピードあるFWのA・フバイルらだ。
試合は最初からかなりのスローペース。日本は相手のミスを突いてボールを奪うものの、思うようにゴール前で形が作れない。ポスト役の平山は高さと強さを併せ持ったDFに苦しんだ。前半10分に見せたヘディングシュートも残念ながらワクを外れてしまう。平山をターゲットにして、しばしば徳永、森崎の両アウトサイドが攻め上がってクロスを送るも、ゴールは遠かった。
山本監督が「勝負の時間帯」と言っていた20分間が過ぎると、今度はバーレーンが日本のボール回しのミスを突いてカウンターを仕掛けはじめる。左サイドのA・ユーシフが徳永をかわしてクロスを上げたり、A・ユーシフからのスルーパスに走り込んだ右サイドのM・フバイルがフリーでシュートを放ったりと、ビッグチャンスも何度かあった。彼らは非常に大柄で、球際にも強く、何事にも恐れないタフさと強さを兼ね備えていた。予想以上に強いチームだった。
カウンターを何とかしのいだ日本だが、相手を警戒してプレーが一段と堅くなってしまう。シュートもほとんどなくなり、打開策の見えないまま、前半が終わった。
後半になると、バーレーンはさらに自陣に引いてゴールを固めるようになる。守備もマンツーマンからゾーンに変更。じっと我慢してカウンターを狙う作戦に徹してきた。スペースのない日本はより一層、攻撃チャンスを作れなくなる。
そこで山本監督は後半13分、菊地に代えてスピードのある石川直宏(F東京)を投入した。石川は積極果敢にサイドを突こうと試みる。20分には彼から平山に絶妙のクロスが入り、若きストライカーは胸トラップからシュートを打とうとした。が、次の瞬間、相手DFの素早いつぶしに遭い、ゴールチャンスは実らなかった。
指揮官は25分が過ぎたところで松井と山瀬功治(浦和)を交代。終盤には田中達也を下げて高さのある高松大樹(大分)を起用。闘莉王も前線に上げ、スクランブルで1点を狙った。しかし相手の体を張った守備に阻まれ、精度の高いクロスボールが入らない。前線と最終ラインの間も間延びしてしまい、結果的には、日本らしいボールをスピーディに動かしながら攻めるサッカーから遠くかけ離れた内容になってしまった。
4分間のロスタイムにも奇跡は起きず、このまま引き分け。勝ち点3を取って、予選突破の重圧を少しでも軽くしたかった日本の思惑は外れた。「今は悔しい気持ちでいっぱいだから、次に向けて考えがまとまらない」と今野が言えば、「正直、ショック」と那須も本音を漏らす。次の試合まで中1日しかない。思うような展開に持ちこめなかった精神的ダメージをいかに払拭するのか。それは大きな課題だ。
さらに心配なのは、2月21日の韓国戦(大阪)で見せたハツラツさと流れるようなパス回しが陰を潜めてしまったこと。過去に叩かれ続けてきた韓国に完勝したことで、選手たちの「勝利への飢餓感」がやや弱まっていた可能性も否定できない。山本ジャパンの特徴であるボールを動かしながら攻撃を組み立てるサッカーも見えてこなかった。選手たちのコンディションも以前より下がっているように感じられるだけに、今後の戦いが心配だ。
明るい材料があるとすれば、この大苦戦によって、選手たちがかつてない高いモチベーションを持てること。彼らは今、自分たちが何をすべきか改めて見つめ直すはずだ。もう1つ幸いなのは、UAE戦で2得点したレバノンのエース・アトウィがレッドカードを食らい、日本戦に出場できなくなったことだ。これで日本は次のゲームを優位に運ぶことができるだろう。
とはいえ、最大のライバルといわれるUAEはレバノンを4-2で下している。日本は得失点差を考え、大量得点を奪って勝利を挙げる必要がでてきた。追い込まれた今こそ、本来の実力を出し切り、勝利という結果をしっかりと出してもらいたい。
2004.3.1 Reported by 元川悦子
以上
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