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【第84回天皇杯決勝:東京V vs 磐田 プレビュー】磐田監督就任後初タイトル目指し、チャレンジャー精神でファイナルに向かう山本監督(05.01.01)

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1月1日(土)第84回天皇杯全日本サッカー選手権決勝
東京V vs 磐田 (13:30/国立)
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「今のジュビロは昔みたいに押しまくって点を取れるチームじゃない。1点差勝負をしぶとく勝っていくことが大事なんだ。明日は内容より結果を考えながら戦うつもりだ」

アテネ五輪アジア最終予選で涙し、アテネ五輪本大会で世界の怖さをまざまざと見せつけられ、Jリーグの指揮官として勝利の難しさを味わった山本昌邦監督はジュビロ磐田での初タイトルを目前にして、「粘り強く勝負に徹する」ことを改めて誓った……。

2004年サッカーシーズンを締めくくると同時に、2005年の幕開けを華やかに飾る第84回天皇杯決勝が1日、13時30分から東京・国立競技場で行われる。

この大晦日から元旦にかけて、日本列島は大荒れの天気に見舞われている。残念ながら東京での初日の出は望めそうにないが、国立競技場のチケットはすでに完売。チーム関係者でさえ入手困難な状態になっている。天候の回復次第ではあるが、明日のスタジアムはおそらく満員になるだろう。

2年連続ファイナリストになった磐田の選手たちは、晴れの舞台を前にリラックスした様子で前日調整を行い、東京へ向かった。とはいえ、この1年間はイバラの道が続いた。第1ステージこそ「常勝軍団」の名にふさわしい2位だったが、第2ステージに入るや否や一気に歯車が狂った。勝てるはずの試合に勝てず、選手たちは苦悩と葛藤の日々を強いられる。指揮官も桑原隆監督から鈴木政一監督を経て、11月にアテネ五輪代表を率いた山本監督が就任。本格的チーム再建が始まった。

「就任から最初の3試合は勝負を意識せず、サッカーの質だけを追求した。厳しい日程の中で若手も使いつつ、コンディションや個々の状態をチェックしたかった。今のチームに何が足りないかを浮き彫りにすることが一番大事だったから」と指揮官は話す。

そう割り切っていても、結果が出ないのは辛い。「常勝軍団」の名をほしいままにしてきた彼らならなおさらだ。しかしJリーグ第2ステージは1勝もできないまま終わり、天皇杯も苦戦が続いた。4回戦では佐川急便東京SCに先制され、最後の最後でPKを得て何とか3-2で勝利を収めた。続く5回戦の群馬FCホリコシ戦も2-1の辛勝。準々決勝は昨年の天皇杯優勝チームを率いた柳下正明監督が指揮するコンサドーレ札幌が相手。この試合も延長戦にもつれ込んだ末、何とか1-0で勝利をつかんだ。

けれども逆にこの「生みの苦しみ」が、誇り高きエリート軍団に「タフなメンタリティ」を改めて植えつける好機になったのかもしれない。「苦しい試合に競り勝ってきて、徐々にチームがまとまってきている。後は優勝という結果を出すだけ」とキャプテン・服部年宏も力を込めて言った。

指揮官の強調する「人が動いてボールも動くサッカー」が少しずつ完成形に近づいているのも事実である。「みんなのコンディションもよくなり、ボールも人も動くようになってきた。次の試合でよりいい形を出せれば必ず勝てる」と、昨年は負傷のため決勝戦に出られなかった福西崇史も自信をのぞかせた。

とはいえ、今の磐田は「ポゼッション」だけにこだわる一本調子のチームでもない。山本監督が「今のサッカーではサイドからのクロス、ダイレクトプレー、リスタートが3大得点源だ」と指摘するように、選手たちはサイドからの崩し、ボールを奪ってからの速い攻め、リスクを冒してもファウルをもらうような仕掛けを強く意識しているのだ。

サイド攻撃に関して言えば、一番のカギを握るのが左アウトサイドの西紀寛だろう。今の磐田は右の河村崇大がやや守備的、右の西が攻撃的になることでバランスを取っている。西のスピード、神出鬼没な動き、裏を取る駆け引きのうまさは日本代表のジーコ監督も高く評価している。こうした動きに加え、中央にピンポイントで合わせるクロスを入れることができれば、得点チャンスはグッと増える。もちろん河村も「積極的に攻めに絡みたい」と意気込んでいる。彼ら2人がどれだけ主導権を握れるかで試合展開も大きく変わってくるはずだ。

ダイレクトプレーに関しては、すでにチーム全体が高い意識を持っている。左DFの菊地直哉も「相手は細かいパスを回してくるから、あまり出すぎずにボールを奪って、その後を速くしたい。速いカウンターはかなり有効だと思う」と見る。選手たちの前からプレスをかけようという共通意識も高い。リスタートを取りにいく強引さにしても同様だ。若い選手たちが多く、ショートパスをつなぐ東京ヴェルディ1969には、あえて相手のミスを誘うような戦い方が有効かもしれない。

新指揮官は今、こうしたディテールを1つ1つ積み重ねている。「天皇杯はアジアチャンピオンズリーグ、世界クラブ選手権の通過点」という認識をしっかりと持っているからだ。アテネ五輪でまざまざと「差」を突きつけられた世界に再チャレンジするには、国内タイトルを取り、アジアで勝ち続けるしかない。この野望を果たすために、山本監督はエースナンバー10をつける藤田俊哉を控えに回すという大胆な作戦も取ったほどだ。中山雅史、川口信男という3人の切り札を作っておけば、イザという時に困ることはない。実際、準決勝・浦和レッズ戦でも途中出場した藤田が試合の流れをガラリと変え、同点弾を叩き込んでいる。藤田本人が「先発で出たい」と主張しても、「自分の考えを貫く頑固さ」と「勝負への強い意欲」が、今の山本監督からは強く感じられる。

ある意味、明日の天皇杯決勝は、指揮官がここまで積み重ねたサッカー哲学の集大成になるゲームといえるだろう。「2004年はホント、激動の1年だった。このシーズンを何とかいい形で締めくくりたいね」と笑顔で話す山本監督は、再び世界への扉を開く勝利を手にできるのだろうか……。明日はチャレンジャー精神を前面に出す指揮官の采配に大いに注目したい。

以上

2004.12.31 Reported by 元川悦子
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