第83回全国高校サッカー選手権大会 1回戦
2004年12月31日
藤枝東 2 - 1 佐賀東
得点者：2分閨谷（藤枝東）、62分中村（藤枝東）、69分山口（佐賀東）
−大会トーナメント表はこちら−
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　控え室から、ピッチまでの短い距離を銀色のハーフコートに身を包んだ藤枝東（静岡）イレブンから大きな声が上がる。「行こう!!」佐賀東は、グラウンドに積る雪のように真っ白なユニホーム姿で静かに、その時を待っていた。試合前の静かなひと時に、両者は対照的な姿を見せた。午前中から降り出した雪が次第にその勢いを増し、スタジアムが白銀に染まっていく。いつもはグリーンのピッチが、今日ばかりは真っ白くなったキャンバスとなり、その上をゆっくりと選手たちが足跡を残しながら登場してくる。
　
　古豪・藤枝東（静岡）対初出場・佐賀東（佐賀）。ともに苦手とする1回戦をどう乗り切るか、注目が集まった一戦は、生憎の天候に大きく左右されることになった。
　
　試合が動いたのは、開始直後。少し固さが見られる佐賀東に対し、藤枝東は10番、赤星貴文（3年）やMF柴田公章（3年）がコンパクトに中盤を形成し、正確なパスワークでボールをつないでいく。最初のチャンスは前半2分。中盤のやや前に上がっていた赤星から右サイドを上がっていた閨谷太希（3年）にやや強めのラストパスが入った。ワンタッチでボールを止め右足で冷静にゴールを奪った。「あの時間であまり（前に）上がっていくことはないんですが、（上がってきた）閨谷が見えたので（パスを）出した。あそこで点をとれたのが大きかった」と赤星。
　
　藤枝東の先制後、徐々に落ち着きを取り戻した佐賀東は、主将の山口大将（3年）が統率する守備陣が奮闘。ラインさえも分かりにくくなった状況の中、藤枝東にペースを握られながらも、互いの位置を確認し、声を掛け合いながら、藤枝東のパスの糸を切っていくが、そこから前線で待つ2トップの松本恭介（3年）、藤原和樹（3年）につなぐことができないまま、両チームとも決定機がなく前半が終了。しかし、雪の猛威はここでもとどまることなく選手たちに襲い掛かった。
　
　「雪で難しかったけど、蹴れるうちに蹴って、ペナルティエリアの角を狙うように心がけた。だけど、ハーフタイムから（ピッチに）戻ってきたら、もっと積もっていて、センタリングが上がらなくなった」（赤星）と藤枝東も苦戦を強いられる。パスが繋がらず、選手たちが足をとられる場面が増え始め、選手に疲労が見え始めた後半22分、待望の追加点が藤枝東に入った。
　
　ずっと意識していたというセットプレーから、ボールがこぼれ、赤星が丁寧にスルーパスを送ると、ペナルティエリア内でディフェンスのウラをついた中村祐輝（2年）が右足で押し込んでリードが2点に広がった。
　
　佐賀東も後半29分にGKのファンブルから、主将の山口大将（3年）が押し込み粘りを見せたが、再び、藤枝東ゴールを揺らすことができなかった。

　「（雪で）パスが止まってしまうので、なるべく浮かすようにした」（赤星）「雪の中で足場が悪いからパスをしっかりと伝えました。いつものように細かくつなぐことはできないと思ったので」（服部康雄監督：藤枝東）と冷静に状況を分析し持ち前の技術の高さを発揮し、丁寧かつ正確にパスをつないだ藤枝東と「ここまで積もるとは思いませんでした。うちは細かいパスをつなぐチームなので、難しかったですね。ただ、それがサッカーというもの。いろんな状況に適応しないとダメですね。簡単に背後に出そうとしか指示はしていませんでした」（蒲原晶昭監督：佐賀東）と、大雪によってパスサッカーをさえぎられ、最後まで持ち味を発揮できなかった佐賀東。
　
　スタンドからさえ、ピッチがよく見えなくなるほどの白銀の世界の中で、同じようなパスをつなぐスタイルを持つ両チームの勝負を分けたのは、経験の差と、適切な状況判断だったのかもしれない。
　
　試合後、赤星は「今度は埼玉代表（西武台高校）とやれる。（浦和に内定しているので）浦和のファンも沢山見に来てくれると思うので、自分のサッカーをしてアピールしたい」と力強く語り、服部監督は「次までに雪がなくなってくれたら」と苦笑いしながら、スタジアムを後にした。

　藤枝東は、地元埼玉代表の西武台が次の相手。パスをつなぐサッカーの対決が、1月2日、再び埼玉スタジアムで火花を散らすが、今度こそ晴天の、ピッチコンディションが最高の状態で行われることを願うばかりである。

　なお、トーナメント表を参照していただきたいが、国見から鹿児島実業までのブロック（埼スタ、三ツ沢、市原、駒沢開催分）において、各地が大雪に包まれた１回戦は、初出場の麻布大淵野辺が玉野光南に0-2と敗戦。玉野光南ほか、韮崎、秋田商業、北海などが順当に勝ち上がった。注目の盛岡商業対大津のエースストライカー対決は接戦の末、盛岡商業の10番福士徳文が期待に応え1-0で大津を下した。

以上

2004.12.31 Reported by 青柳舞子

[ 第83回全国高校サッカー選手権大会 1回戦 12月31日開催分試合結果]
・埼スタ、三ツ沢開催分試合結果
・市原、駒沢開催分試合結果
・駒場、西が丘開催分試合結果
・等々力、柏の葉開催分試合結果