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【第83回全国高校サッカー選手権大会 1回戦 西武台 vs 大分 レポート】「奇跡が起きた日」(04.12.31)

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第83回全国高校サッカー選手権大会 1回戦
2004年12月31日
西武台 2 (5 PK 3) 2 大分
得点者:5分黒岩(西武台)、39分上野(大分)、61分朴(大分)、79分島田(西武台)
−大会トーナメント表はこちら
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 ロスタイムの表示は2分だった。うっすらと白くなったピッチに残る足跡は、西武台ゴール前ばかりだ。「奇跡を信じたよ」西武台・守屋保監督はゆっくりと試合を振り返った。

 誰もが緊張する選手権の初戦。試合開始前、小雪が舞い落ち始めた埼玉スタジアムは、地元西武台の登場とあって1,000人を超える大応援団のすでに大きな声援がこだましていた。100人ほどの大分の応援も、負けじとブラスバンドの演奏が鳴り響いた。
 
 これが、選手権。独特の雰囲気に包まれて開始された試合は、西武台のペース。緊張からか動きの固い大分に対し、真骨頂ともいえるパス回しで相手陣内に攻め込んだ前半5分、右サイドの那倉夢人(2年)の低いクロスをFW杉本裕之(3年)が落とし、走り込んだ主将・黒岩宏明(3年)が左足で決めた。しかし・・・。
 
 「いい時間で先制もして、前半15分までは3-1くらいで勝てるかもしれないと思ったけど・・・。1点、あげてもよかった」(西武台・守屋保監督)前半18分、ゆっくりとクロスを中心に西武台陣内に攻め込んでいた大分のエース、朴俊慶(3年)がオフサイドぎりぎりで飛び出したところを、西武台のボランチ志田亮輔(3年)が思わず引っ張り、一発退場。「カードは覚悟してたんですけど、一発(退場)は、初めて。(自分が朴に)抜かれて、無心で追いかけたら・・・」(志田)
 
 前半早々一人少なくなった西武台に対し、大分は朴、FW大坂聡(2年)が前線をかき回し、チャンスを演出。その反撃が形となったのが前半39分。ペナルティエリア内で朴、大坂と細かくつなぎ、西武台のディフェンス陣がみせた一瞬のスキを見逃さずにMF上野晃典が右足インサイドで決め、前半が終了。

 勢いを増す雪がグラウンドにうっすら白い固まりを作り始めた後半は、終始大分ペース。数的有利な状況を生かし、中盤での早いプレッシャーと2対1の状況を作り、西武台のお株を奪う素早いパスワークで圧倒すると、後半21分、上野からのスルーパスに朴が右足で豪快なミドルシュート。これが待望の逆転ゴールとなる。防戦一方の西武台。志田を欠いた中盤でボールが収まらず、セカンドボールをことごとく拾われていく。チャンスらしいチャンスもほとんどなく時間が過ぎ、ロスタイム2分の表示が掲示される。「いつ3点目を取られてもおかしくなかった。でも、ポストに当たって(3点目が)入らなかったり、運があるかなと思った」(守屋監督:西武台)「絶対チャンスがあると思ってた」(黒岩:西武台)。

 おそらくこの試合を目にしていたほとんどの人が大分勝利を確信したその瞬間、勝利の女神が西武台に微笑んだ。「こっちに来てくれって思った」(島田祐輝・3年)。それまで最終ラインから上がることが許されなかった福田俊介(3年)が前線にあがり、187センチの大きな体を張って相手ディフェンスを背負いながらスルーパスを送る。オフサイドぎりぎりで飛び出したのは、黄色のユニホームの背番号11。「福田からパスが来て、無心だったけどGKの位置を見て決められました」。笑顔満面で「うれしい」と、この日、守備に翻弄され我慢の時間が続いたFW島田の起死回生の一撃が決まり、同点で試合終了。

 PK戦にもつれ込んだ激しいゲームを制したのは、苦しんで苦しんだ西武台。「完全に負け試合だったな。でも神や仏がいるのかな」と守屋監督。その裏には西武台の悲話が隠れていた。勝利監督インタビューで守屋監督は「今日は、西武台にとって悲しい日でした。23番DF福島秀人(3年)の父が今朝2時に亡くなったんです」と静かに口にした。「でも遅くなっちゃうけど、勝って報告しようって。お前の力が絶対に必要なんだと秀人にベンチに入ってもらうようにお願いしました」(守屋監督)。梅澤健太(3年)のPKが決まった瞬間、ベンチで守屋監督は泣き崩れた福島と抱き合った。スタッフとしてチームのために給水の準備や交代選手に声をかけた姿が確かにあった。悲しい現実の中でもチームにためにという思い、勝ちたいという気持ち、最後まであきらめない強さが生んだ西武台の劇的な勝利。サッカーの醍醐味というべきゲームに守屋監督はポツリとつぶやいた。
 
 「選手を信じて、奇跡を信じて、初めて奇跡が起きた」(守屋監督)

 なお、トーナメント表を参照していただきたいが、国見から鹿児島実業までのブロック(埼スタ、三ツ沢、市原、駒沢開催分)において、各地が大雪に包まれた1回戦は、初出場の麻布大淵野辺が玉野光南に0-2と敗戦。玉野光南ほか、韮崎、秋田商業、北海などが順当に勝ち上がった。注目の盛岡商業対大津のエースストライカー対決は接戦の末、盛岡商業の10番福士徳文が期待に応え1-0で大津を下した。

以上

2004.12.31 Reported by 青柳舞子

[ 第83回全国高校サッカー選手権大会 1回戦 12月31日開催分試合結果]
埼スタ、三ツ沢開催分試合結果
市原、駒沢開催分試合結果
駒場、西が丘開催分試合結果
等々力、柏の葉開催分試合結果
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