第83回全国高校サッカー選手権大会 決勝
2005年1月10日(月・祝)国立霞ヶ丘競技場
14:00 Kick Off
鹿児島実業(鹿児島) − 市立船橋(千葉)
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いよいよ、最後の時を迎える。
この場所にたどりつくまでに、様々な試合があった。快勝も辛勝も惜敗も大敗も・・・。多くの夢が破れ、散り、そして、たった2チームにだけが立つことを許される第83回全国高校サッカー選手権大会、決勝戦。鹿児島実業(鹿児島)対市立船橋(千葉)。
鹿児島実業は、これまでの4試合を3-0、1-0、2-1、2-0と安定した守備と、決定機を逃さずに決め、攻守のバランスが取れたチーム力を発揮し、決勝に進出した。対する市立船橋は1-1(PK5-4)、1-0、3-0、2-2(PK5-4)と接戦が相次ぐも、伝統の堅守に加え、県予選では苦しんだ攻撃力が戻り、粘り強く戦いながらコマを進めてきた。
両チームに共通しているのが、どちらも高い組織力を持ち、全国の大舞台も知り尽くしているといことが挙げられる。そして、互いに守備の要となる選手がセンターバックに入り、毎回ヒーローが変わるのも特徴だった。守ってカウンターという戦術も似ている両者。大きな違いがあるとすれば、前評判の高さどおりに安定した力を発揮している鹿児島実業に対し、攻撃面で不安を見せていた市立船橋が、1戦ごとに力をつけ、成長しながら勝ち上がってきたことだろう。安定した力と成長する力。目に見えない力がどこまで伸びているのか。決勝戦のひとつの見所となりそうだ。
鹿児島実業は、決勝までの4試合で8得点1失点。4バックと3バックを相手によって使い分けながらも、岩下敬輔(3年)がコントロールする最終ラインは大きく崩れていない。また目立たないがボランチの三代将平(2年)や上村豊和(3年)が中盤の高い位置で激しくプレスをかけ、攻撃を遅らせる働きをしていることも守備が崩れない大きな要因だ。攻撃面でもエース山下真太郎(3年)が4得点と好調を維持し、2トップを組む栫大嗣(2年)もコンディションを取り戻し、松澤隆史総監督も「(得点を)取ってほしいね」と期待を寄せる存在。準決勝でも決定機こそ逃がしたが、ゴール前でフリーとなる場面も多かった。また今大会でラッキーボーイとなっている赤尾公(2年)も見逃せない。サイドバックとボランチを兼任する守備の選手が、準々決勝、準決勝と勝負を決する得点を挙げている。特に終盤戦での赤尾の動きに注目だ。
市立船橋は、決勝までの4試合で7得点3失点。そのうちPKが2試合と接戦を乗り越えた。中央に渡邉広大(3年)を配置したフラットな3バックとマンマークでエースを封じる堅守は健在。薬袋克己(3年)、中村勇紀(3年)のサイドハーフは守備にも貢献。運動量も豊富で走り回る、この2人からの精度の高いクロスも必見。そして沈黙していた攻撃力復活のキーマン、壽透(3年)が2列目からどんどん飛び出し決定機を作っている。初戦で得点を奪い勢いにのった壽が前線に顔を出せるか。また壽を周囲が生かせるか。そして、最大の注目は、スーパーサブになりえる選手がベンチにいることだろう。石渡靖之監督の絶妙ともいえる采配が的中し、準決勝では快速を飛ばした白山智一(2年)が逆転弾を奪う活躍を見せた。他にも準々決勝で左サイドに入り高いキープ力を発揮しスタメンに名を連ねた森野徹(2年)など、スピードと突破力を兼ね備えた選手層の厚さは目を見張る。誰がどのタイミングでピッチに立つか。勝負のポイントになりそうだ。
過去、選手権決勝での対戦は1度ある。78回大会では市立船橋が勝利し優勝をした。昨年の対戦ではベスト8で鹿児島実業がPK戦の上、勝利をあげている。そして今年、夏のインターハイでは1-0で市立船橋が、全日本ユースでは3-2で鹿児島実業が勝っている。「市船とはインターハイで負けて、全日本ユースで勝っている。1勝1敗だから決着をつけたい」と鹿児島実業の赤尾公(2年)が口にすれば、市立船橋石渡靖之監督も「決着をつける時」と声を高めた。「決勝という味のある、見応えのあるゲームができたらいいんじゃないかと思います。結果はその次に考えてもいいかなと」どうやら松澤総監督は、目の前の決戦を楽しむつもりのようだ。
「鹿実には山下くんという、非常に能力の傑出したストライカーがいます。山下くんに対する注意が必要じゃないかと思います。後は今大会に関しては、まだそれほど見ていない試合もありますので、今日明日ともう一度ビデオなどを見て研究したいと思います」石渡監督は、丁寧に言葉を選びながらも、王座奪還へ意欲を見せた。
いよいよ決勝戦。夢の聖地で、赤と青の選手たちは力の限りをつくして戦うだろう。拮抗した力を持つ両者が、最後の冬の陣で、どのような結末を迎えるのか。『勝ちたい』という気持ちが、ほんの少しでも強いほうに女神が振り向くような気がしてならない選手権ラストゲームを楽しみに待ちたいと思う。
以上
2005.1.9 Reported by 青柳舞子
J’s GOALニュース
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