6月22日(水)27:45キックオフ(日本時間)/ドイツ・ケルン/44922人
日本代表 2-2 ブラジル代表
○得点
前半10分 ロビーニョ
前半27分 中村俊輔
前半32分 ロナウジーニョ
後半43分 大黒将志
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この日のスタジアムの雰囲気に対する評価はまっぷたつに別れるはずだ。ブラジル人サポーターの多さは当然ではあるが、やはり4万人を超える観客の大半はドイツ人サポーターだった。その彼らが試合の所々で見せた日本に対する友好的な反応はどういった心情から出たものだったのだろうか?
リアリズムを追求した言い方をすれば、グループAを1位通過したドイツとしては、準決勝を2位通過が濃厚なブラジルと戦うよりは日本と戦った方がいい。そのためにも日本に勝ってもらいたいという気持ちから声援が多かったのではないかと。
そんな見方ができる一方で、彼らは純粋に日本のことを好きだから応援してくれているのではないか、という見方もできる。もちろん多くのドイツ人の感情として、そのどちらも持っていたのだろう。試合後に日本代表を応援していたドイツ人サポーター4人組に話を聞いたが「前から日本(人や文化)はクールだから好きなんだ」との答えに続き、「(今日の日本代表は)ファンタスティックだった」と絶賛してくれた。そしてそれは彼らに限らず、話を聞いた多くのドイツ人サポーターが共通して感じていたことだった。
そうやって振り返ると試合終了間際に大黒将志のゴールで同点に追いついた、その直後の後半43分にスタジアム全体からわき起こった「ニッポン」コールの理由が理解できる。つまりこの日のスタジアムの反応を見る限り、彼らは日本代表のサッカーに魅了されていたのである。
ジーコ監督の作ってきたチームは、オートマチックなシステムがあるというわけではない。つまり相手の強さや出方に左右されないコンビネーションを何パターンか作っている、というわけではないのである。日本代表は常に試合をする選手たちがピッチ上で考え、そして声を掛け合って作ってきたコンビネーションのチームである。それはつまり、相手の力量や戦い方に左右されるという仮定が可能なチームなのである。このブラジル戦の収穫はまさにその観点だ。
スタンディングオベーションで出迎えられ、スタジアムの至る所で自然発生的に起きた「ニッポン」コール。それが大きなうねりとなった試合終了間際の場面などを思い起こすと、鳥肌の立つような試合だった。試合がドローで決着したことで、日本代表の決勝トーナメント進出の可能性は潰えた。肩を落とす日本人の脇で、同じように、日本を相手に2失点を喫したブラジル人サポーターが、喜びの感情を爆発できずに立っていた。その悩みの次元は違うのだが、なんとも両チーム共に釈然としない感情が残った試合だった。そんな中、ドイツ人だけは興奮気味にスタジアムを後にしていた。
観客がまばらになった試合後のスタジアムに「ジーコ監督さようなら」というようなアナウンスが流れ、ジーコ監督の公式記者会見の放映が始まる。ジーコ監督が築き上げてきたサッカー選手としての価値がヨーロッパでは最大限に尊重されている場面だった。
会見場でのジーコ監督の表情は、日本というチームを率いて祖国に引き分けたその結果よりも、予選リーグを突破できなかった悔しさを強くにじませていた。巨大なスクリーンに映し出されたジーコ監督は「1点の重み」を説いていた。ギリシャ戦で得点を量産できていれば、一次リーグ突破は可能だった。相手次第で日本代表は形を作ることができる。あとはフィニッシュの精度を高めるだけ。そしてそれは代表監督の仕事と言うよりは日本サッカー界全体が取り組まなければならない仕事である。
以上
2005.06.23 Reported by 江藤高志
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