第84回全国高校サッカー選手権大会 準々決勝
鹿児島実業(鹿児島) 1-0 滝川第二(兵庫)(12:10キックオフ/3,100人)
得点者:1分 豊満貴之(鹿児島実業)
遠野(岩手) 3-2 広島観音(広島)(14:10キックオフ/4,000人)
得点者:24分 代健司(広島観音)、35分 鈴木秀啓(遠野)、61分 菊池亮(遠野)、66分 橋場貴之(遠野)、79分 鍋原大崇(広島観音)
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電光石火の得点だった。赤尾公からのパスを受けた永岩貞亮が一瞬にしてトップスピードに乗って右サイドを駆け上がる。そして、右足から送り込まれた速く、低いクロスボールが、左サイドから走りこんできた豊満貴之の足元にぴたりと合った。振り抜かれる右足。そしてゴールネットが大きく揺れた。時間はまだ1分。「あの1点が効きましたね」(松沢隆司総監督・鹿児島実業)。そして、鹿児島実業の一気に試合の流れを引き寄せた。
風上に立つ鹿児島実業は、鋭い出足でプレスを仕掛けて中盤のボールを支配。早いタイミングでボールを中へ入れて、後方からぐいぐいと押し上げる。そしてボールを左右に展開。右からは永岩が、左からは豊満がスピードを生かして縦に出る。戦線でターゲットになるのは迫田亮介。その迫田と2トップを組む栫大嗣がスペースを見つけては飛び出していく。そのスピードと激しいプレスの前に滝川第二は、ただ跳ね返すだけで精一杯の展開が続く。
滝川第二もこのままでは終われない。「1−0はラッキーと言って送り出した。3点、4点あってもおかしくなかった展開もありましたから」(黒田和生監督・滝川第二)。そして、追い風を利用して激しく前に出た。立場が全く逆になった両チーム。46分、47分と滝川第二のシュートがクロスバーを叩く。「同点になったらやられていた」(松澤総監督)。この時間帯に同点ゴールが生まれていれば試合展開は、全く別なものになっていたはずだ。
しかし、50分が過ぎたあたりから、慌しさが目立っていた鹿児島実業の守備が落ち着き始める。ボールに対する早い働きかけと、常に相手に対して数的優位を保つ守備は、押し込まれているように見えて相手にチャンスを与えず。そして、滝川第二のエース森島康仁には本城宏樹がマンマークに付き、こぼれたボールはDFラインが連携して決して相手に渡さなかった。前半は激しく前に出ることで相手に何もさせず。そして後半は、やや受けながらもポイントを抑える守備で、やはり滝川第二に何もさせなかった。スコア以上に鹿児島実業の逞しさが際立った試合だった。
「どうしていいか分からない時間帯もありました。後悔ばかりです」。大勢の報道陣に囲まれて森島は試合を振り返った。何もやらせてもらえなかった悔しさは表現しようもない。「苦しいときにチームを助けられなかったというのは自分の反省。プロに行ったら、そこのところを直していきたい」。胸にしまいこんだ悔しさは新たなステージで晴らすことになる。
一方、「ここで勝てば2連覇が見えるので、これが最後という気持ちで頑張ります」とは貴重な決勝ゴールを奪った豊満。滝川第二を無失点で抑えたDFリーダーの西岡謙太も「無失点での優勝が目標です」と口にする。攻め勝った2回戦と3回戦。磐石な守備組織を披露した準々決勝。鹿児島実業は、この日もその強さを見せた。昨年、PK線の末に9年ぶりの優勝を果した際、松澤総監督は次のように語っていた。「完全な単独ではない。勝負は引き分けだと思っている。再度、真の単独を目指さなければならない。また目標が出来た」。その目標達成まであと2つ。国立の舞台で鹿児島実業はどんな姿を見せてくれるのだろうか。
さて、引き続き行われた広島観音と遠野の対戦も、攻守が激しく入れ替わる好ゲームとなった。前半は広島観音のペース。風上に立ちながらも必要以上にボールを蹴らず、丁寧にボールを動かしてサイドアタックからチャンスを狙う。そして24分、右CKからゴール前の混戦となったところで代健司が押し込んで広島観音が先制点を挙げた。しかし、35分、試合の流れを変える同点ゴールが遠野にうまれる。素早いリスタートからゴール前にボールを送ると、走りこんできた鈴木秀啓がフリーに。難なくゴールネットを揺らした。
「同点にされた点がひとつのポイント。集中して防がなければいけませんでした。前半を1−0でいけていれば、違った形が取れていたのかなと思います。あの1点が精神的なところで重かった」(畑喜美夫監督・広島観音)。しかし、広島観音は力を振り絞って前に出る。対する遠野は、すばやく守備組織を整えてカウンターを狙う。互いに持ち味を生かしたサッカーを展開。試合は一進一退のまま進んでいく。勝負は次の1点。どちらも引くわけには行かない。
そして61分、広島観音の連携ミスをついた菊池亮が待望の2点目をゲット。続く66分には橋場が続いて遠野は3点目を追加する。それでも最後まであきらめない広島観音はロスタイムに1点を返したが、最後は遠野の粘り強い守備の前に涙を飲んだ。「子どもたちが最後までやったという点において、非常によくここまでがんばったなと思います」(畑監督)。戦術の決定から先発メンバーまで選手たちが決めるという異色のチームの挑戦はベスト8で終わった。しかし、その壁を破るべく、更にシフトチェンジした広島観音が来年も全国の舞台に駒を進めることを期待したい。
そして、1回戦から強豪校を次々と下してきた遠野は、とうとう国立の舞台にたどり着いた。次なる相手は優勝候補筆頭の鹿児島実業。これまで以上に厳しい相手になる。しかも、累積警告のために主力メンバーの3人が出場できない。しかし、遠野のチャレンジ精神が萎えることはない。「自分たちのことをやっていれば勝利がついてくると信じてがんばります」(菊池)。圧倒的な攻撃力を誇る鹿児島実業に、粘り強さが身上の遠野サッカーがどこまで通用するのか。見逃せない対戦になる。
以上
2006.01.05 Reported by 中倉一志
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