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【Road to J1〜2006 J1新規3クラブの過去・現在・未来〜】ヴァンフォーレ甲府:クラブ存亡の危機から5年でJ1へ(2)(06.01.21)

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「地方クラブの星となるために」

J1・J2入れ替え戦後。死闘を経てのJ1昇格決定に大木武監督も満面の笑み

海野社長が就任した01年以降、甲府は単年度で黒字を出し続け、1億円を超えていた債務超過も5年で約半分に減らすことが出来た。大企業のスポンサードがあれば1億円という金額は大きくないと感じるが、わずかな黒字から税金を払い、さらに債務超過分を返済していくのは簡単なことではない。この意味でも、甲府はJリーグ入りを目指す地方のクラブにとってモデルケースとして注目される。独立採算でクラブを運営・存続させ、チャンスがあればJ1にも昇格することが出来る。それも、人口89万人の山梨県でやり遂げられたのだ。

大木武監督を選んだこともJ1昇格への必要条件だった。限られた予算で目標を達成するために、人選びは重要なポイントだ。ただ、大木監督も未来永劫、甲府にいるわけではないし、選手もチャンスがあれば移籍していくことは避けられない。
今季は最低10億円の運営費を見込んでいる甲府だが、選手の給料は平均予算29億円のJ1ではおそらく最低レベルだろう。給料を上げたくても大幅に上げては黒字を出せない。高額の移籍金を払ってビッグネームを獲得するつもりもない。あくまでも黒字経営が大前提にある。
「例えば10億円の予算なら、その中で黒字を出すのが甲府。収入に見合った運営をする。無理な経営はしない」と、海野社長はJ1昇格にも浮かれることなく経営方針を堅持する意向だ。

今後、甲府がクラブのステイタスを上げていくには、現場スタッフが入れ替わる中でも人(選手・監督・コーチ)を育てることが必要になるだろう。今の現場体制は非常にいい組み合わせだが、クラブは生き物。新陳代謝を拒否することは出来ない。
昨季はホンダFCで監督を務めた安間貴義氏がコーチとして甲府に加入して、ベンチ外メンバーの育成に大きく貢献。大木監督をサポートした。今季からはサテライトリーグにも参加する予定の甲府だが、ユース、ジュニアユースを含めた下部組織を充実させることが重要になってくるのではないだろうか
選手の獲得にお金をかけることが出来ないのであれば、G大阪、清水、横浜FM、広島などのように下部組織からトップへ選手を育て上げるスタイルが必要だ。J1で一定の力を発揮すれば、選手にとっていいオファーが来ることは避けられないだろう。だからこそ、下部組織やサテライトリーグで若手を育て、移籍金の係数が高い20代前半で移籍させて、その資金を次世代の強化に使うという流れを作りたい。そのためには、コーチの人選と育成が大切になる。時間がかかる仕事だが「人を育てる甲府」というスタイルをぜひ作り上げ、地方クラブの星として、さらに輝くクラブに成長することを期待したい。

ゴールを決めて喜ぶ長谷川太郎選手(中央)を笑顔で迎える奈須伸也選手(右)
「3年連続最下位(1999〜2001年)の頃は、ただ試合をしているだけのチームだった。先制しても『1点じゃ危ない』と思ったし、先制されても『またか』と思った。年間5勝(1999年:5勝、2000年:5勝、2001年:8勝)のペースですからね。
観客も少なく、試合後のゴミ集めは一人でもやれたし、量も小型トラックに載せられるほど少なかった。当時は給料の遅配もあったし、チームの目標が見えずに目の前の仕事を漠然とこなしていただけだった」と鷹野広報は振り返る。
2000年の暮れ、鷹野広報はチーム存続のために甲府駅近くの鶴舞城公園でサポーターとともに募金集めと署名活動を行っていた。そして、「ヴァーンフォーレ、ヴァーンフォーレ」というコールを聞きながら寒空の下でミレニアムを迎えたという。その5年後に、クラブはJ1昇格を果たす。海野社長が言う「Jクラブがある幸せ」を鷹野広報も感じている。

◆ヴァンフォーレ甲府:クラブ存亡の危機から5年でJ1へ(1)は【こちら】
◆ヴァンフォーレ甲府:海野一幸社長インタビューにつづく


Reported by 松尾 潤
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