5月6日(土) 2006 J2リーグ戦 第14節
仙台 2 - 2 湘南 (13:04/ユアスタ/18,648人)
得点者:'64 菅井直樹(仙台)、'70 横山聡(湘南)、'82 ロペス(仙台)、'89 加藤望(湘南)
----------
開始1分、ライン裏に抜け出したボルジェスが松本に倒され、あわやPKか?と思われた場面を皮切りに、仙台は分厚い見事な攻撃を見せる。前回対決時に比べ、受けるマークの圧力が弱いロペスの強引な突破(と、それを絡めた細かなパスワーク)、有機的な動きで攻めを滑らかにする梁、熊林による中盤のフォロー、そしてあくまでタッチライン際限定で堅実に攻めに絡む磯崎と、対照的に豪快な攻め上がりで相手ゴール前に飛び込み、得点の機会をうかがう菅井という両サイドバック、彼ら全てが上手くかみ合った。
セットプレーではないチャンスが湘南は前半1本(13分、オーバーラップしてきた尾亦からのニアへのセンタリングに横山が合わせかけるが、白井が間一髪体を当ててシュートを阻んだ)だったのに対し、仙台は立て続けに良い形を作り、39分にはロペスとスイッチし、スピードを保ちながらゴール前に入ってきた梁のシュートが右ポスト直撃。42分には右サイド長い距離を持ち込んだ熊林から正面の梁へ、梁の突破からのこぼれ球をボルジェスがゴール左へ突き刺す…もオフサイド、というように、変幻自在の攻撃は明らかに湘南を翻弄していた。
素晴らしい攻撃を見せているだけに、決めきれないことで相手にペースが流れていくことが不安視され始めた64分、それを打ち消すかのような豪快な先制点を決めたのは、この日再三の攻撃参加で、湘南ゴール前を恐怖に陥れていた菅井。左サイドでの細かなパス回しのうちに右サイドを駆け上がり、左サイドの梁からのセンタリングがファーのロペスの頭を越えて流れてきたところに、完璧なタイミングで走り込む。そしてダイレクトでの右足ボレーがゴールの左に突き刺さった。動きも間もフィニッシュも完璧なゴールである。
ところがこのゴールは、安定した守備に支えられた仙台の勝ちパターン発動を示すものではなく、壮絶な打ち合いの開始を告げるゴングだった。
実は仙台は良い攻撃の影で、いつもの守備ありきの姿勢が消えかけていた。ゴールを決めた菅井自身も、その4分前には、自らの攻め上がりで出来た穴をカウンターで突かれ、必死に戻って後追いチェックに行き警告を受けていた。仙台として「らしくない」場面が見られ、チームに漂うオーバーペース感。そして70分、湘南は右サイドで前を向いた加藤からペナルティエリア右側に走り込んだアジエルへスルーパス、そこから折り返すとゴール至近に入ってきた横山が今度はピタリと合わせて同点に。この時仙台は、アジエルに対して千葉が、横山には木谷が、それぞれ動き出しで一歩遅れを取ってしまった。
それでも仙台はサンタナ監督が、72分には磯崎に代えて負傷が癒えたばかりの村上を投入、右だけでなく左サイドからも激しく攻め立てる意思を示すと、その5分後には萬代を入れて2トップに。テクニシャンを揃えている湘南の中盤に対し、あえて対応する枚数を薄くしたことで、一時湘南の攻勢を呼び込んでしまうものの、この攻撃姿勢が実り、82分に右サイド、チアゴ ネーヴィスからのクロスにロペスが上手く入り込み再び突き放す。
だが一度オーバーテンポになった(というより、今日はむしろ仙台がそれを望んだ部分もある)試合は、守備固めで渡辺を投入しても簡単には冷めない。時計が45分を過ぎた直後、湘南は右サイドからのFKを得る。佐藤が入れたボールは、ゴール前で触れた加藤、それに反応した仙台GK高桑の手を経て、再びゴール右に流れていた加藤の足元へ。強烈に振りぬいた右足がトップネットを揺らすと、同ゴール裏に居た湘南サポーターを除き、スタジアムは静まり返る。ゲームを締めくくったのは、宮城出身の加藤による、地元サポーターを凍りつかせた同点弾だった。
湘南はこの日、普段の素早いサイド攻撃はさほど見られなかったが、横山の決定力、佐藤という上質のFKキッカーといった己の武器を再確認し、さらにそこに、チーム全体の粘り強さを書き加えた一戦だった。仙台とのアウェーゲームで6年ぶりに勝点を確保し、現在5位の好位置につける湘南。第2クールの失速癖を今年こそ乗り切れば、面白い存在になりそうである。
一方仙台は、ここまで「守備で勝ってきた」印象が強かったが、今日の試合は攻撃でも「4人目のFW」となりつつある菅井の動きや、萬代投入後の2トップ(ロペスのゴールは、ロペスと別ベクトルに動いた萬代、ボルジェスの2トップにDFが引っ張られ、スペースが作られたことで生まれたものだ)など、ブラジルトリオ以外のオプションが形になりつつあることを示した。
終了間際の失点は、会見でそのことを聞かれおかんむりだったサンタナ監督が言う「集中力の欠如」によるものだとして、あとはこの多彩な攻撃と、第1クールで培った守備のバランスをいかに取るかが重要になってくる。もちろん、それがフットボールというスポーツに永遠に付きまとう命題だということは百も承知だが、これが叶えば、仙台はまさに止められない存在となる。サポーターにとっては悔しい引き分けだが、すり抜けた勝点2の中に今後の可能性を見た気がした一戦だった。
以上
2006.05.06 Reported by 佐々木聡
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第14節 仙台 vs 湘南 レポート】結果は撃ち合いの痛み分け。だが両チームにとって、今後の糧になるやもしれぬ一戦。(06.05.06)













