■日本代表 国際親善試合
5月30日(火)20:30(日本時間5月31日 03:30)/ドイツ・レバークーゼン
ドイツ代表 2-2 日本代表
得点者:'57 高原 直泰(日本)、'65 高原 直泰(日本)、'75 クローゼ(ドイツ)、'80 シュバインシュタイガー(ドイツ)
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「初めてこのチームでいい試合をした」
2002年秋のジーコジャパン発足以来、チームに苦言を呈することの多かった中田英寿(ボルトン)がこんなコメントを残した。
確かにこのドイツ代表戦は日本代表の大きな前進を示すものだった。序盤から前線と最終ラインが適度な距離を保ち、ボールを奪ったら手数をかけずにシンプルにゴールを狙う形がうまく機能。ドイツ守備陣を翻弄した。そして後半に入ってすぐ高原直泰(ハンブルガーSV)が続けざまに2つのゴールを奪う。ここまではまさにシナリオ通りの出来だった。
しかし2点のリードを守りきれないのは悔やまれた。ドイツ代表が後半30分すぎに奪った得点はいずれもFKから空中戦の強さを生かしたもの。ドイツワールドカップ本番ではオーストラリア代表やクロアチア代表も同じような策を講じてくるだろう。いわば『日本の弱点』を露呈する形で大金星を逃した。だが幸いして今回は本番ではない。ジーコジャパンには課題を修正する時間がまだ2週間近くあるのだ。ここで出た課題と収穫を次につなげることこそ肝要なのだ。
このところ暗雲が立ち込めていた日本代表の視界がようやく開けてきた。
ワールドカップ本番に向け、ドイツで調整を続ける日本代表。30日20時半からレバークーゼンのバイアレナで挑んだドイツ代表との親善試合は、残り2つしかないテストマッチのうちの1つ。ある意味、本大会の試金石となる試合と言われた。このところのドイツ国内は低温に雨が続き、不安定な気候が続いている。30日も気温は10度ちょっと。試合中は晴れたが、寒さの中の一戦となった。
ルクセンブルク代表などと立て続けに試合を消化してきたドイツ代表。クリンスマン監督がメンバーを落としてくる可能性もあったが、蓋を開けてみると、GKレーマン、DFメルテザッカーにメッツェルダー、攻撃的MFバラック、FWクローゼなど主力たちの揃い踏みとなった。日本は国内合宿からのメンバー。GK川口能活(磐田)、DF坪井慶介(浦和)、宮本恒靖(G大阪)、中澤佑二(横浜FM)、右サイド・加地亮(G大阪)、左サイド・三都主アレサンドロ(浦和)、ボランチ・中田英、福西崇史(磐田)、トップ下・中村俊輔(セルティック)、FW高原、柳沢敦(鹿島)の3−5−2だ。
地元・ドイツ代表が攻勢に出ると思われたこの試合。しかし、彼らは序盤こそ積極的に攻めたが、全体に疲労からか動きが悪い。一方の日本代表は、テーマである『守備の意思統一』を心がけ、セーフティに守りながら、ボールを奪ったら少ないタッチ数で相手陣内へ切り込んでいくサッカーに徹した。「ドイツ代表は体がでかいけど、日本のヨコの動きとかボールのない時の動きに反応できていない」と高原も話すように、特徴の俊敏性と運動量を駆使して相手に揺さぶりをかける。ドイツ代表の最終ラインはこうした動きについていけなかった。
最初の決定機は前半13分。中田英がGKと1対1になった場面だ。柳沢のヒールパスを受けた彼はGKの位置をよく見て股抜きのシュートを放つが、さすがは名手・レーマン。後ろ足でボールをクリアする。これには中田英も頭を抱えるしかなかった。続く17分にも柳沢が相手守備陣の裏に抜け出たが、残念ながらノーゴールに終わった。ドイツの方も40分すぎに2度ほどチャンスを作るので精一杯。シュバインシュタイガーに削られた加地が右足首を痛めて退場するアクシデントが起きたものの、前半は0−0で終了する。
後半に入ると、日本代表の勢いはさらに増し、12分に先制点を挙げる。発端は相手のボールを頭でインターセプトした柳沢だった。ボールを受けた中村はドリブルで上がって再び柳沢へパス。柳沢はダイレクトで前方を走る高原に絶妙のスルーパスを出した。この日の柳沢は2ヶ月ぶりの実戦とは思えないキレと動き出しの速さを披露。完全復活を印象付けた。そしてフィニッシュは高原。「GKが滑ったのが見えたんで、冷静に浮き球のボールを蹴った」と話すシュートは、確実にゴールマウスに吸い込まれた。
この8分後に再び高原が追加点を挙げる。中田英と中村のパス交換に絡んだ途中出場の駒野友一(広島)が中央へ鋭い折り返しを送り、そこに詰めた高原が3人のDFをかわしてペナルティエリア内に侵入。レーマンの脇の抜く強烈シュートを叩き込んだのだ。
強豪ドイツ代表相手に2−0。25分という時間は残っていたが、2点差なら勝てるだろうと誰もが信じた。が、そこで守りきれないのが日本代表の弱さでもある。
ここからドイツは持ち前の「高さ」を前面に押し出すサッカーを展開する。そして31分にはセットプレーからクローゼが1点を返す。さらに35分にはシュバインシュタイガーが高さのあるヘッドで2点目をゲット。「空中戦」というドイツ最大の長所を封じることができず、日本代表は白星をモノにし損ねた。
2−2という結果に宮本や坪井ら守備陣は不満げな表情を見せた。相手がドイツ代表とはいえ、善戦を喜ぶ選手など1人もいなかった。それだけ勝って然るべきゲームだった。それだけに守りきれなかった事実は重く受け止めるべきだ。
とはいえ試合内容はジーコジャパンの4年間で最高レベル。このところモヤモヤする試合ばかりだっただけに「ついに来た」と手ごたえを感じた選手も多いはずだ。前線と最終ラインの距離感や攻守の切り替え、どこからプレスをかけるか、ボールを奪ってからのシンプルな攻撃など「本番でやるべきサッカー」がようやく見えてきた。
これを自信にするのか、ぬか喜びにするのか。全ては残る2週間の準備次第だ。
以上
2006.05.31 Reported by 元川悦子
J’s GOALニュース
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