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【日本代表 vs インド代表:注目選手コラム】パス出しの能力と独特のリズムを持ったMF 中村憲剛(川崎フロンターレ/MF)(06.10.10)

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●AFCアジアカップ2007予選大会 グループA
10月11日21:10キックオフ(日本時間)/インド・バンガロール
日本代表 対 インド代表
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「もし明日チャンスが来たら?ミスをしないようにすることは大事だけど、アンパイ(安全パイ)でやっていたら、いいところは出せない。ミスを恐れず思い切りやりたい」

ガーナ戦(10月4日/日産ス)前日練習の後、笑顔をのぞかせつつこう話していた中村憲剛に本当に出番が巡ってきた。後半30分、遠藤保仁(G大阪)に代わり、初めて日本代表戦のピッチに立った彼は、予告した通り、思い切りのよさを前面に押し出す。強行日程で来日したガーナの運動量が激減していた時間帯ではあったが、いきなりのミドルシュートは見る者を驚かせた。そして小気味いいパス出しで相手を翻弄する。懸念されていたセンの細さを感じさせることなく、初舞台の15分間を乗り切った。

25歳での国際Aマッチデビュー。彼にとっては待ち望んだ瞬間だった。中村憲剛には年代別代表の経験がない。しかも、つい2年前まではJ2でプレーする1選手にすぎなかった。それだけに日本代表という高いレベルへの渇望は誰よりも強かったのだ。

8月にオシムジャパンが発足してからというもの、つねに「代表有力」と書かれながら8月の2試合も9月初旬の中東遠征も選から漏れた。やや自信を失ったのか、9月半ばのある日、彼は川崎Fのグランドで「自分にはチャンスが来ないんですかね…」と伏し目がち話したこともあったほどだ。

こんな苦労人であるせいか、最近の若者にしては珍しいほどサッカーを真剣に捉えている。その原点は都立久留米高時代にある。同校の指導者だったのは現日本サッカー協会技術委員の山口隆文氏。田嶋幸三専務理事と筑波大で同期だった山口氏は日本のトレセン・指導者育成改革に深く関わった。時代の最先端を行く指導者との出会いが中村のベースを作ったといっても過言ではない。

「山口先生はプルアウェイ(DFの視野から消える動き)とかオフ・ザ・ボールの動きだとか、時代を先取りした指導をしてくれた。きちんとした練習をさせてもらえたから今の自分があると思ってます」

中央大学時代は高い技術を誇る攻撃的MFとしてプレー。2003年にJ2だった川崎F入りする。ルーキーイヤーは出番に恵まれなかったが、プロ2年目の2004年に運命を大きく変える出来事が起きる。新指揮官に就任した関塚隆監督が予期せぬ一言を口にしたのだ。
「お前、今日からボランチやってくれ」と。
「監督から言われた時は『できませんよ、そんなの』って心境でした。もちろん口には出さなかったけどね(苦笑)。僕は守備もできないし、体力もないし、体が細いし…。でも試合に出るにはやるしかない。周りの人のアドバイスを聞きながら、自分なりのボランチ像を作っていきました」

意外なるコンバートによって、中村のサッカーセンスは一気に開花する。持ち前の視野の広さと展開力、右足のキックの精度は川崎FのJ1昇格に確実に貢献した。2004年のJ2終盤戦の頃には「川崎Fの中村は代表に入れていい逸材」、あるいは「右利きの中村俊輔(セルティック)」などと、サッカー界のあちこちで噂される存在になっていた。

そして2005年には念願のJ1に昇格。当初はフィジカル面の弱さが心配されたが、全く問題にならないほどの大活躍を見せる。本人も「J1とJ2で一番違うなと思ったのが判断のスピード。頭を使いながらプレーし続けないとJ1では通用しない。J2の時は少し抜いている時間帯があっても大丈夫だったんですけどね…。最初はそういう違いに慣れていなかった。時間が経つごとに何とか適応できるようになりました」と前向きに話した。

そしてJ1・2年目の今年、ついにフル代表まで上り詰めた。2005年の昇格当初は謙虚な発言が目立ったが、実績を積み重ねるにつれて「自分はプロとしてはさらに先を目指すのが当たり前だし、もちろん代表にも入りたい。早くチャンスを勝ち取りたい」と意欲を前面に押し出すようになってきていた。それゆえ、ガーナ戦での初キャップはまさに順当なステップアップといえるだろう。

しかしながら、彼のポジションは代表屈指の激戦区。鈴木啓太(浦和)に阿部勇樹(千葉)、遠藤…とそうそうたるメンバーが並ぶ。欧州に視野を広げれば、稲本潤一(ガラタサライ)や中田浩二(FCバーゼル)までいるのだ。国際経験の乏しさという課題を抱える中村がやや厳しい状況なのは間違いない。

けれども今回のインド戦(インド・バンガロール)で、オシム監督はメンバー変更を示唆している。「新たな可能性を持つ選手をこれまで以上に積極的にテストしたい」とも発言しているようだ。ガーナ戦での積極的なパフォーマンスを見る限りだと、中村にも十分チャンスはある。もしかするとスタメンの可能性もありえる。インドは格下ではあるが、当たりの強さや寄せの鋭さを甘く見ていたら痛い目にあう相手。異国の厳しい環境下で中村憲剛が一体、何をやってくれるのか…。オシム監督にはできる限り長い時間、彼を起用してみてもらいたい。

以上

2006.10.10 Reported by 元川悦子
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