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【J2:第16節 仙台 vs 徳島 レポート】狙い通りのゲーム運びを見せた徳島、先制を許すものの、2人の退場者を出した仙台に「実力」を見せて逆転勝利(07.05.20)

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5月20日(日) 2007 J2リーグ戦 第16節
仙台 1 - 2 徳島 (13:04/ユアスタ/13,419人)
得点者:'44 中島裕希(仙台)、'50 丹羽大輝(徳島)、'88 石田祐樹(徳島)

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 ゲームに対して、取り組んできた準備をどれだけ発揮することができたか。この視点で考えれば、徳島2、仙台1という結果は妥当なものかもしれない。
 しかしこの結果が実際に確定するまで、ユアスタでの90分間は事態がめまぐるしく動いた。

 立ち上がりから攻撃の歯車が噛み合ったのは徳島の方だった。「自陣に引いてくるだろう」という仙台の選手たちの予想を完全に裏切り、1トップの羽地を片岡と小山が、さらにその彼らを、3列目に入るダ シルバと丹羽が追い越していく。こうした動きに、今節が復帰戦だったロペスは対応する守備の術を持っておらず、神出鬼没の飛び出しに守備が後手に回った仙台は、立ち上がりから主導権を掴めずにいた。

 それでも、試合後に望月監督が語ったように、相手が前に出たなら、カウンターで仕留めるという選択肢も出てくる。仙台は実際にそれでいくつか好機を掴みつつ、カウンター以外の場面では、前節の草津戦でそうやってペースを得たように、長いボールで徳島のDFラインを揺さぶっていった。

 ところが、こうして試合が落ち着き始めた矢先、まだ序盤も序盤の23分、ゲームのバランスを大きく変える最初のジャッジが。すでにCKの競り合いで警告を1枚受けていた萬代が、スルーパスを受けて徳島のペナルティエリア内に入った後、西河ともつれたプレーで自身の反則を取られるとともに、2枚目の警告を受けて、早々とピッチから退場を命じられる。

 残り65分以上という状況で仙台が迎えたいきなりの不利。しかしこの時点では、仙台はピンチを何とか耐え忍んだ。数的不利がたたり、サイドからの簡単なセンタリングでもゴール前にフリーの選手を作ってしまう状況の中で、木谷、渡辺の両CBが間一髪のスライディングタックルでシュートを阻み続ける。すると前半終了間際、スタンドの溜飲を下げる最高のシーンがやってくる。44分、自陣低い位置で木谷からボールを受けたロペスが長いボールを前線に送ると、この一発のパスで、前がかりとなっていた徳島DFラインの裏を取った中島が、ノートラップで右足を振りぬく。ドライブ回転のかかったボールはGK島津の頭上から急降下して、見事な軌道を描きゴールに吸い込まれた。

 先制したのは、一人少なくなった仙台。リードさえ奪えば、数的不利でも戦いようはいくらでもあるだけに、この1点は大きい…かに思われた。

 だが徳島にとっては、ここでハーフタイムを迎えたことが結果的に大きかった。カウンターには沈んだが、自分たちのやりたいサッカーはできていた。そしてなにより、リードこそ奪われたが、自分たちは相手より一人多く、まだ時間も45分残っている。この揺るがない真実に気がついた徳島は、後半立ち上がりの50分、極めて冷静に同点ゴールを奪っていった。両サイドを制圧し、仙台の守備全体をゴール付近に押し込んだ後、横パスでゴール正面のミドルシュートエリアにボールを振ると、最後はボランチの丹羽が右足で見事なシュート。仙台守備陣のチェックの及ばない場所から放たれたシュートは、シュナイダーの手をかすめ、ゴール右隅に突き刺さる。

 この同点弾で、再びサイコロが託された格好となった仙台。徳島が数的有利を活かし攻勢に出てくるのは目に見えている。この流れに飲まれるも断ち切るも、自分たちの次の動き次第。しかし一人少ない以上策は限られる。

 だが幸いなことに、ピッチ上の仙台の選手たちに見過ごせないほどの疲労は見えないので、仙台のベンチにはギリギリまで考える時間が与えられていた。策の内容、タイミング、全てを見計らいながら、「ここぞの場面」を探る仙台。そして、その時間はやってきたようだ。永井が、交代の準備を済ませて第4審判の元へ向かっていく。

 ところがこの83分、ベンチのこうした思案を全て気泡に返す出来事に仙台は見舞われてしまう。前半のうちに警告を受けていた千葉に、2枚目の警告が。肉を切らせて骨を断つべく、耐えながら反撃の機会をうかがっていたチームにとって、2人目の退場者という現実は、もはや肉もろとも骨を断たれたようなものであった。

 その後改めて投入した永井、さらにはロペスもボランチの位置に下げ、4−3−0−1のような布陣でやり過ごそうとした仙台だが、人数をかけてきた徳島を跳ね返す余力は、体力面でも頭数の面でも残っていなかった。88分、徳島は新加入後即デビューとなった塩川の右からのクロスを、ファーに走りこんできた途中出場の石田がヘッドで決めて逆転。仙台もロスタイムのCKで好機を作るも、シュナイダーの攻め上がりも報われずに試合はこのまま終了した。

 試合自体は大荒れとなったが、しかし冒頭に書いたとおり、徳島の準備が仙台より勝っていたというのは(退場者が出なければ結果がどうなっていたかという仮定は置いておいて)事実といえる。その意味で徳島にとって、この勝利が大きな自信になることは間違いない。逆に考えれば仙台は、復帰したロペスの能力を(期待していたほどには)引き出せなかった、と言える。

 ただそれでも、試合後に両チームがここまで明暗を分けるとは想像できなかった。片や3引き分けの後に大きな勝利。片や5月に入って3敗目な上、次節は2人の出場停止を抱えることに。好対照な姿を見せる両チーム、3日後の次節が終わった時、見せる表情はそれぞれどのようなものになるのだろう。

以上

2007.05.20 Reported by 佐々木聡
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