「応援しているこっちもきつかったから、選手はもっと大変だったと思いますよ」と試合終了後に、Tシャツが汗だくになっている川崎フロンターレのサポーターは笑いながら言った。この日のバンコクは日中の気温が35度を超え、18時の試合開始前でも気温は34度。それに加え、湿度も高くピッチの選手たちにとっては最悪とも言えるコンディションだった。
日本から駆けつけた川崎サポーターは40名ほど。多くは昨日バンコク入りした人たちだったが、中には日曜から観光を兼ねて滞在している人もいた。今回のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で初めて観光地でのアウェイ戦。マランや光陽(全南)といった「アジアの細道」とでもいうような、ガイドブックにも載っていない場所もいいが、1試合くらいは楽をしてもバチは当たらないだろう。もっとも、会場であるアーミー・スタジアムの場所を知らないタクシーの運転手が多く、何人かのサポーターはこれまでと同じように、たどり着くまで難行苦行を強いられていたが…。
スタジアムの周辺は試合があるとは思えないほど静か。それでも道路と反対のメインスタンド側に回り込むと、食堂併設の売店が開いていたり、関係者がいたりと、今日試合があることを感じさせる。既に川崎がグループリーグ突破を決めており、消化試合となったせいもあるのか、会場の雰囲気はちょっと「ぬるい」感じがする。スタジアムに入ると、川崎サポーターはメインスタンド右側、屋根のある場所に陣取っていた。マラン、光陽(全南)でも見かけた顔もちらほら。この日はバンコク在住の日本人や、富士通関連会社の従業員も多数来場。川崎側は総勢500名といったところ。一方のバンコク・ユニバーシティ側は200名強。コアなサポーターはほとんどおらず、スタジアムは川崎が支配する。
試合も川崎がFKから18分に先制し、一気に流れを掴むかに思えたが、川崎のPK失敗からバンコク・ユニバーシティが盛り返し、41分に同点に追いつく。PKを止めた場面と、この同点のシーンではバンコク側のサポーターも大いに盛り上がった。だが後半に入り20分、川崎は決勝点となるゴールを決め2-1と再びリード。そのまま試合が終了し、グループリーグ最終戦を飾った。
試合後、サポーターに挨拶した選手たちをバンコク在住の子供たちが呼びとめ、サインを頼んでいる。選手は疲れているにもかかわらず、ペンを走らせていた。正直、誰がどの選手なのか、わかってはいないようだったが、きっと家に帰ってから、お父さん、お母さんと川崎フロンターレのHPを見ながら、「この選手だ!」と楽しい時間を過ごすことだろう。その後、コールリーダーが富士通の方々に挨拶。「今日はありがとうございました。日本にお帰りの際には、ぜひ川崎に寄ってください。そしてスタジアムで見かけたら、『この間はどうも!』って声をかけてください」。
そして撤収作業。照明が暗くなるのが早いとのことで、急いで片づけを始める。横断幕が照明の下になっていたので、横断幕には虫がたくさん落ちており、それを払い落としながら折りたたんでいく。その頃、何人かのサポーターから「浦和はどうなりました?」と聞かれた。「スコアレスドローでグループリーグ突破」と伝えると、顔がほころんだ。そして作業完了。「また、次の開催地で会いましょう」とサポーターが声をかけてくれ、スタジアムを去っていく。
誰もいなくなったピッチではスプリンクラーが回っていた。雨季のはずのバンコクだったが、雨は降らず、生ぬるい風が少しだけ吹いていた。これでACLの東南アジアでの試合は終了。しばしの中断を挟み、9月からベスト8が激突する。ノックアウトラウンドで、川崎や浦和のサポーターはどんな風に吹かれるのだろう?砂漠を感じる乾いた風か、それともコーランの響きが混じった異国の風か。いずれにせよアジアの広さを感じる旅はまだまだ続く。
Reported by Toshiaki "Tiger" ONODERA(ナノ・アソシエーション)















