6月20日(水) 2007 J1リーグ戦 第16節
広島 1 - 1 川崎F (19:04/広島ビ/6,037人)
得点者:'12 ジュニーニョ(川崎F)、'41 ウェズレイ(広島)
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■注目プレイヤー: 駒野 友一選手(広島)
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渋い戦いだった。互いに「勝ちたい」という意識は強くもっていたが、その意識が「負けたくない」という気持ちに変換してしまっていた。自分たちの良さを出すというよりも、相手の良さを消そうとする意識が見えた試合だった。
特にその想いが強く現れたのは、前半の川崎Fだろう。12分、セットプレーから先制点を奪った後、彼らはゾーンを低く設定して広島を自陣に呼び込む戦術をとった。広島のカウンターをケアするのと同時に、相手が前に出てくるその裏をとって追加点を狙おう、という意図が見えた。
が、「相手は(パスを)回すのがうまかった。引いてカウンターのチームだと思っていたのに」と中村憲剛が語ったように、広島は闇雲に縦パスを入れることなく、しっかりと足下にボールをつないで、じわじわと横パスをつなぎながらヒタヒタと相手ゴールに迫る。これにより、川崎Fは2トップと中盤が分断されてしまい、攻撃の形ができなくなった。引いて守ることを意識しすぎたのか、川崎Fの中盤のプレスは甘くなり、必要以上に自陣に広島の選手たちを呼び込んでしまった。
ただ一方で、広島もボールキープ率はあがっても、決定的なシーンをつくることができない。前節の鹿島戦で、縦パスを闇雲に入れたあげく、それをことごとくカットされて攻め込まれたこともあり、「急」ばかりではなく「緩」を意識していこうというチーム全体の意志が見えていた。それは、悪くはない。悪くはないが、今度はどのタイミングで「急」を入れるか、そこの共通理解がズレてしまって決定的なチャンスを生み出すに至らない。ボクシングで言えば、川崎Fは足を使ってガードを固めるアウトボクシングで試合をすすめ、広島もインファイトを挑まずにジャブで状況を把握しながら、ストレートを入れるタイミングを図る。緊迫感はあるものの躍動感に欠ける展開となっていた。
そこを突き崩したのは、広島の「リーサル・ウェポン」駒野友一である。ここまで川崎Fは、駒野に対して最低二人の選手をつけていた。が、40分の場面では、川崎Fがカウンターを仕掛けた後で、全体がやや前がかりになっていたところを広島につかれた。特に森崎浩司がダイレクトで駒野にパスを出したために、川崎Fは選手が戻る時間を与えられなかったのだ。
駒野がボールを受けた時、前には村上和弘がいた。村上は駒野の突破によく対応し、一度は身体を前に入れた。が、この瞬間を駒野は狙っていたのである。チョンとボールの方向を変えて村上の身体の向きとは逆に入ることで、完全に位置を入れ替えてしまったのだ。足を滑らせてバランスを崩した村上は、駒野に身体を預けることしかできなくなり、PKを奪われてしまったのである。
この同点劇で、後半は川崎Fのゾーンが高くなり、前半は引いていた右サイドの森勇介も攻撃的になった。が、それでも川崎Fらしい波状攻撃は見られない。一方の広島も、ウェズレイと佐藤寿人のコンビを中心に柏木と駒野が絡み、森崎浩と青山がコントロールする図式で相手に迫るが、どうしてもゴールが生まれない。
後半、両チームには一つずつ、絶対的なチャンスがあった。
先にチャンスを得たのは川崎F。広島の左サイドで青山と盛田剛平が衝突してしまったそのボールをジュニーニョが拾い、そのままカウンターに入ったシーンだ。この時、広島守備陣は戸田和幸と森崎和幸だけ。川崎Fは、ジュニーニョ・黒津勝、そして中村が絡む3対2の場面だ。が、ここで戸田が落ち着いてジュニーニョのプレーを制限させ、まずプレーを遅らせた。そこでジュニーニョは中村にパス。戸田は素早く切り替え、中村に身体を寄せた。角度を失った中村はシュートではなくクロスを選択する。一方、森崎和はそのプレーを予測し、瞬間的に足を止め、ジュニーニョへのパスコースを切ったのである。この絶対的なシーンを、広島はDF二人の落ち着いた対応で未然に防いだのだ。
一方の広島も、87分に青山のスルーパスに佐藤寿が抜け出す決定的なシーンがあった。が、佐藤がここで痛恨のトラップミス。サポーターのため息を誘った。
後半の途中から、アグレッシブでスリリングなシーンが増えてきたが、ゲーム全体を考えれば、駆け引きばかりが前面に出た試合だった。こういう「考えさせる」試合も悪くはないが、もっとわかりやすく、もっとリスクを冒して攻め合う試合を見せることの方が、Jリーグの盛り上がりにつながっていく。特に、攻撃を看板にしている両チームの戦いだっただけに、そしてそういう試合ができることもある時間帯では証明しているだけに、やや残念な気持ちを感じてしまった「ビッグアーチ決戦」だった。
以上
2007.06.21 Reported by 中野和也
J’s GOALニュース
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