不完全燃焼感というか、消化不良感というか。U-20ワールドカップでのU-20日本代表の終わり方は、決して『燃え尽きた』と言えるようなものではなかった。結果には納得しなくてはならないし、これを糧に上の世代を追い越すような成長を見せなくては、「あのチームは結束していて良いチームだったね」という評価で終わってしまう。彼らは自分たちのプレーという意味でのパフォーマンスと、得点後のそれで日本中の視線を引き寄せることに成功した。今後は各自でその視線を満足させていくステージへと移行する。
「まあ、当たり前だけど、チーム結成からの2年半で選手たちはとても成長した」
吉田監督は、大会前から選手たちをそう評価していた。05年2月の立ち上げの段階で、彼らが世界の16強まで進むことを想像することは難しかった。前回大会ほどの、名のあるタレントが含まれなかったことが大きな要因だ。
11月末のAFCユース選手権予選(熊本開催)では、勝点・得失点で並んだ北朝鮮に1-0で勝利して僅差でAFCユース選手権への出場権を手にした。予選前には、日本が1988年以来8大会連続で続けてきたAFCユース連続出場がついに途切れるのか、と危惧されていた。加えて直前9月には、仙台カップで格下のはずの東北代表に5失点で敗れる失態を見せたことも周囲の不安をあおった。選手たちも、周囲の声を感じていた。
「色々言われて、それでも勝ち上がってきた」チェコ戦後、福元洋平(大分)は当時を懐かしそうに振り返った。
AFCユース選手権予選・北朝鮮戦では、試合終了間際に途中出場のハーフナー、そして安田という流れから得点(試合レポート /jsgoal_archive/japan/news/youth/article/00026793.html )。この勝負強さに、初めてこのチームへの期待を感じたものだった。
翌年、つまり06年はAFCユース選手権でU-20ワールドカップ出場切符を得るために、多くの海外遠征が組まれた。この年、メンバーの多くはJリーグ入りし、内田篤人(鹿島)、梅崎司(大分・早生まれのため2季目)、らがレギュラーを奪取。その前年から試合出場を重ねていた福元や田中亜土夢(新潟)も着実に経験を重ね、チームとしても力強さを増していった。
AFCユース選手権は、10月末からインドで行われた。「去年と違ってこのチームは粘れるようになっている」というのが、当時の吉田監督が口癖のように話していた言葉。大量失点を重ねた05年とは違い、劣勢に立たされてもあわてることはなくなっていた。
福元はこう振り返る。「やるたびに成長するチームだった。楽しかった」。シーズンが進むにつれ、Jリーグでも出場機会を得る選手が増える中、出場時間が減少してもキャプテンを任され続けた彼は、周囲の成長をひしひしと感じていたに違いない。
AFCユース選手権では、決勝の北朝鮮戦にはPK戦の末に敗れて準優勝。だが、「世界に向けていちばん良い結果」と、吉田監督は悔しさがバネになることを見越して、満足した表情を見せた。
だが、侮れないのは彼らが本当に調子に乗りやすい選手たちだったということだ。
「アジア2位の自負があった」と槙野智章は振り返ったが、今年に入って2度の海外遠征(3月ポルトガル、6月フランス)では、こてんぱんにやられた。いずれも、押している時間帯を作りながら、失点などをきっかけにメンタルから崩れるというパターン。だが、この敗戦が本大会へつながったと吉田監督は見ている。「直前のツーロン国際大会(フランス)で負けたことが、結果的には良かったかなと思う。自信をつけさせすぎても、なくしすぎても不安だから」と。このチーム選手が調子に乗りやすく、負ければ落ち込みやすい体質なことはとっくに把握していたのだ。
そして、U-20ワールドカップでの結果はご存じの通り。悔しいけれど、現実は世界の16強どまりということだ。だが、チームはそれ以上のインパクトを日本中に残した。
「監督に、このチームのこと好き?って聞いたら、キライだよって答えたんですよ。笑いながら…」と、大会中の監督とのやり取りを嬉しそうに話した槙野智章(広島)。選手たちにフォーカスが当たりがちだが、実はそんな会話のできる監督がいてこそ、だったのだろうと思わされるエピソードだ。
代表チームながら、類まれな結束を見せてくれたU-20吉田ジャパン。この2年半、成長を続ける彼らには限りない期待感を抱き続けたものだ。これからは、チームとして成長していくことはできない。だが、選手たちは個々にその続きを見せてくれるに違いない。
「大会は終わったけど、これは終わりじゃない。選手にとっては始まり」と吉田監督も話している。
以上
2007.07.14 Reported by 了戒美子
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●U-20ワールドカップ カナダ試合結果
7/2(月) グループリーグ第1戦 U-20日本 3-1 U-20スコットランド
得点者:43' 森島康仁(U-20日本)、57' 梅崎 司(U-20日本)、79' 青山 隼(U-20日本)、82' CAMPBELL Ross(U-20スコットランド)
試合後の吉田監督コメント | 試合後の各選手コメント |ゲームレポート
7/5(木) グループリーグ第2戦 U-20日本 1-0 U-20コスタリカ
得点者:67' 田中 亜土夢(U-20日本)
試合後の吉田監督コメント | 試合後の各選手コメント |ゲームレポート
7/8(日) グループリーグ第3戦 U-20日本 0-0 U-20ナイジェリア
試合後の吉田監督コメント | 試合後の各選手コメント |ゲームレポート
7月12日(木) ラウンド16(決勝トーナメント1回戦) U-20日本 2-2(PK3-4) U-20チェコ
得点者:22'槙野 智章 (U-20日本)、47'森島 康仁(U-20日本)、74'KUDELA Ondrej (U-20チェコ)、77'MARES Jakub(U-20チェコ)
試合後の吉田監督コメント | 試合後の各選手コメント |ゲームレポート
●U20選手名鑑 GK編 | DF編 | MF編 | FW編
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一覧へ【 Road to 2008 vol.18 】U-20ワールドカップ総括:限りない成長と期待感と〜U-20吉田ジャパンが示したもの〜(07.07.14)
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