今日の試合速報

チケット購入はこちら

J’s GOALニュース

一覧へ

【再開直前! J1各クラブ戦力分析レポート:広島】懸案の「全員守備」を貫き、美しいサッカーで勝利を目指す。(07.08.06)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
★J1リーグ 順位表得点ランキング移籍情報

【リーグ後半戦展望】--------------------

「内容と勝点数がリンクしていない」とペトロヴィッチ監督は、前半戦についてそう語った。1タッチ・2タッチでスピーディに回すパスワークで相手DF陣を追い込み、決定的チャンスをいくつも作り出してきた広島。しかし、ラストパスやシュートの精度に問題を抱え「5mのシュートをミスしてしまう」(ペトロヴィッチ監督)ために、ゲーム展開の主導権を握ることができない。そしてミスから失点を重ねてしまったことが、13位という順位に甘んじる結果となった、と監督は分析する。

ただ、チャンスを確実に活かし、得点を積み重ねるという試合を、そうすぐにできるようになるわけではない。目指すべきところはそこでも、現実は違う。やはりJリーグ最多失点(38点)の屈辱に甘んじる守備を何とかしないと上位進出は難しいし、リーグ当初の目標である「J1残留争いとは関係ない場所で戦う」(ペトロヴィッチ監督)を貫くためにもディフェンスの強化は必須だろう。

「守備というのはDFだけで行うものではない」とペトロヴィッチ監督は言う。その言葉が結果として現れたのが、ナビスコカップベスト8・鹿島戦のホームゲームだ。この試合でウェズレイの下に配置された桑田慎一朗を中心に、MF陣が積極的なディフェンスを展開。相手ボランチやサイドバックに対してパスコースをしっかりと限定させ、連動したボール奪取を可能にした。その結果、鹿島に対してほとんどビッグチャンスを与えることなく、必然の結果として完封勝利を導いたのである。

「この試合を覚えておいてほしい。ここが戻るべき場所だから」と戸田和幸は言い切ったが、確かにここから広島の何かが変わった。その後の2試合で3失点・4失点と結果は出ていない。しかし、鹿島戦の3失点は「不運」という要素が詰め込まれていることも確かだし、8月1日の浦和戦では、代表戦やU22代表合宿での疲労を抱えた選手たちの足が止まるまで、「全員守備」の意識は確かにチームの中に存在した。特に前半は、ワシントン・田中達也・ポンテと並んだ強烈な浦和攻撃陣を孤立させることに成功。戸田・森?和幸といった主力を出場停止で欠いた広島が、ほぼベストの浦和を相手に互角以上の戦いを演じたのである。

この全員守備が常に表現できるようになれば、ボール奪取するポイントが高くなり、結果として得点チャンスもさらに増えることになる。そうなれば佐藤寿人・ウェズレイ・柏木陽介・駒野友一といった個の能力の高いアタッカーを抱える広島攻撃陣の脅威は、さらに増大するだろう。6月以降のリーグ戦で勝利がない広島が捲土重来を期すための具体策は、一にも二にも「全員守備の徹底」に尽きる。


【リーグ後半戦のキープレーヤー】----------

森崎和幸選手(DF / No.8)

「カズは、私にとって特別な選手。非常にクレバーな《ドクトル・カズ》だ」と、森崎和幸に対するペトロヴィッチ監督の期待感は絶大だ。ボールキープと精度の高いパスが特徴の森崎和は、確かに指揮官の推進する攻撃的サッカーにピタリとはまるタレント。盛田剛平も「身体も強いし、1対1も粘り強い」と森崎和の守備能力を高く評価する。

彼には、高さやスピードといった身体能力はない。しかし、試合の流れを読んで相手のパスをインターセプトする能力は、Jでも屈指の高さを誇る。試合経験を積むにつれて、高さでやられるシーンは少なくなり、数的不利な状況でも何とか守りきる守備能力を身につけつつある。「身体能力がない分、僕は誰よりも集中しないといけない。選択肢を複数持ち、連続した動き直しができるようにしないと」と、常に課題を口にする姿勢こそ、森崎和の進化を支えている要因だろう。

もちろん、森崎和に中澤佑二(横浜FM)や坪井慶介(浦和)になれ、というのは無理な話だ。しかし、身体能力の壁を技術と頭脳で克服できるのが、サッカーというスポーツ。ペトロヴィッチ監督は「彼は近い将来、CBで日本代表も狙えるようになる」と語り、森崎和も「10人中10人が《無理だ》と言うかもしれないけれど、決して不可能じゃないと思う」と強い気持ちで挑戦する気概を見せている。


【前半戦の振り返り】----------

開幕戦を4−2で快勝した広島だったが、その後は浮き沈みの激しい試合内容が続いた。パス総本数は甲府・G大阪に次ぐリーグ第3位を誇り、ポゼッション率は向上した。リーグ第3位のシュート数に象徴されるように、チャンスの総数も大幅に増えている。が、それが得点に結びついていない(得点数28はリーグ6位)。また、個人的なミスによる失点が多く、単純なクリアやゴールキックがそのままカウンターになって失点することもあるなど、チームとしての不安定さを露呈。これが13位という順位となって現れた。

一方で、明るい要素もある。シーズン当初は2トップ以外に得点がとれなかった攻撃陣だが、柏木陽介が14節〜16節の4試合で3得点を奪い、ナビスコカップ鹿島戦でも服部公太がゴールするなど、MF陣の得点数が増えたことで攻撃に幅が広がった。また浦和戦では、ここまで得点になかなか絡めなかった森崎浩司の素晴らしいスルーパスから、6月の4試合で1得点と苦しんでいたエース・佐藤寿人が難しいシュートを決めるなど、主力選手が結果を残し始めた。さらに、クラブ史上初のナビスコカップ決勝トーナメント進出に、槙野智章や平繁龍一といった若者が大きく貢献するなど、戦力の底上げも着実。課題と成果、共に盛りだくさんといった感のある前半戦だった。


【再開時の予想フォーメーション】----------

代表等で欠場を余儀なくされる場合をのぞき、ほぼ固定されたメンバーで前半を戦ってきたペトロヴィッチ監督だが、その方向性は後半も変わるまい。ただ、一つだけ変化が予想されるのは、最終ラインの構成だろう。注目は急成長中のU22日本代表候補・槙野智章だ。リーグ戦初先発を果たした浦和戦でも、疲労で足が止まるまではほぼ完璧にワシントンと田中達也を抑えきり、守備能力の高さを証明。ナビスコカップではG大阪の強力2トップ(マグノ アウベスと播戸竜二)を相手に完封劇を演じており、相手の攻撃を潰すことに関しては十分に通用することを示した。ビルドアップや視野、試合を読む力などの課題を抱えてはいるが、そこは「経験を積むことでしか解決しえない」(ペトロヴィッチ監督)。彼がどこまで、指揮官の信頼の厚いレギュラー陣に食い込むことができるか。サポーター人気の高い選手だけに、周囲の期待も高まっている。

ただ、その槙野をはじめ、青山・柏木といった選手たちが、U22日本代表に収集される可能性も高い。特に11月には、五輪最終予選とJリーグの日程が完全にかぶってしまう。この代表戦のための戦線離脱の他、出場停止が続出する終盤戦を乗り切るだけの層の厚みをどうつくっていけるか。「育てながら戦う」という厳しい道を選択したクラブの試練だが、そこを全員でどう乗り切っていけるか。そこにも注視していきたい。

以上

2007.08.06 Reported by 中野和也
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2025/12/21(日) 10:00 知られざる副審の日常とジャッジの裏側——Jリーグ プロフェッショナルレフェリー・西橋勲に密着