12月1日(土) 2007 J1リーグ戦 第34節
甲府 0 - 1 F東京 (14:34/小瀬/14,777人)
得点者:87' ルーカス(F東京)
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「J2降格申し訳ありませんでした」
試合後に行われた最終戦セレモニーで甲府・海野社長はこう切り出した。
「声援に応えられずJ2降格、お詫び申し上げます」
大木監督も謝罪した。この言葉で溜飲を下げたサポーターなんていないのではないだろうか。もちろん、「頑張ったんだから仕方がない」とは思わないが、不祥事を起こした企業のトップように頭を下げる姿は痛々しく、違和感が付きまとった。肩入れし過ぎかもしれないが、チームのレベルアップのスピードが、クラブが行う環境面などの整備のスピードを追い越した故のJ2降格のような気がするのだ。
F東京との最終戦の内容は、ゴールが決まらないという歯がゆい気持ちは否定できなかったが、勝利への意欲は充分に感じさせてくれた。労を厭わないボールへのアプローチ、奪ってからのクローズとオープンの判断が作り出す展開で、内容ではF東京を凌駕した甲府。少し前までは、ゴールの3〜4歩手前でボールを奪われてカウンターというパターンで失点していたが、クローズとオープンのタイミングと判断を変えることで次のステージ踏み出した。ただ、今シーズン悩まされ続けたゴールを決めるという課題を追い出すことは出来なかった。しかし、甲府らしさは充分に発揮した。もちろん、「らしさ」だけで満足することはできないが、前半はF東京のシュートをカウンターからのそう怖くはない2本に抑え、主導権をほとんど取らせることはなかった。
前半の終了間際に投入された川口のスピードを活かすために、後半はプレーがシンプルになったF東京。甲府はラインコントロールで前半同様にオフサイドの網にかけるが、それをすり抜ける回数は増える。そこから決定的なシーンは作ることが出来なかったF東京だが、中盤の圧力を高めてボールを奪い、それを散らすことで主導権を取る時間は増えた。
74分に右サイドから中に切り込んだ石川が中央で放ったシュートは、「内容では優っているのにやられる」という今シーズン甲府が払拭できない不安を刺激した。このシュートは枠を外れたが、F東京の圧力はゴールを決められない甲府を押し込み、87分のPKに繋げた。最終戦でJ1リーグデビューを果たしたGK・桜井のセーブに期待をするしかなかった甲府だが、ルーカスは決めて当たり前のPKを落ち着いて決めた。4分間のロスタイムに甲府が秋本のヘディング、山崎のシュートというチャンスを作るが塩田のセーブとシュートミスでゴールに繋がらなかった。
内容には不満が残るだろうが、F東京は勝利という待ち望んだ結果を最後に手にした。対して、90分間の内容では上回りながらも、ゴールが遠い甲府。それを払拭できないままJ1の舞台を降りることになってしまった。
甲府の今シーズンを振り返ると、FWの決定力不足以外に、選手の成長度合いの差がパスワークの温度差に繋がった側面は否定できない。また、ショートパスを繋ぐクローズに執着する理由の一つである、ミドルとロングの精度不足も課題だった。この課題は徹底したドリル形式の練習でレベルアップを図るしかないのだが、県内に点在する10以上のグラウンドを転々とする環境ではその時間が取れない。専用グラウンドがあれば大木監督は2部練習を行う意欲があったのだが、午前と午後でグラウンドが変わるようでは移動に費やす時間が多くなり、選手に休息の時間と場所を与えられない。だから、午前練習(9時〜)を行い、練習後に自主練習の時間を作り、監督・コーチが若手選手に付きあって昼食抜きで午後1時、2時までグラウンドに立ち続けた。その成果は1年目の選手の成長に表れている。しかし、全体のレベルアップにはそれだけでは足りなかった。
J1昇格を果たしたときに海野社長は「予定より早かった」と言った。これは環境面の整備のことを指していた。クラブ存続の危機を乗り越えることが出来たのは、無理をしないで「まず黒字ありき」という健全経営を貫いたからだ。専用グラウンドとクラブハウスについては、もう少しスピードアップ出来なかったのかという思いもあるが、下部組織の環境面も同時に整えており、ようやく過去の負債を返し終えたクラブにそこまで求めるのは酷かもしれない。こう思うから、チームのスピードがクラブのスピードを追い越したと考えた。だから冒頭の違和感に繋がった。
甲府を強いクラブにするためには温かい態度で期待するだけでなく、サポーターやマスコミがプレッシャーを与え続けることは必要だが、それが度を超すと耐え難いストレスにしかならない。誰もが納得する適切な尺度は…なんて決められないが、これからもいい塩梅でプレッシャーを与え続けることが出来ればクラブは確実に成長して行けるはず。試合後、F東京・茂庭は「甲府のパスワークには3人くらい一気に抜かれてしまう。すごく上手い」と言い、石川は「降格が決まったチームだけど、そういうチームだとは思わない」と言ってくれた。足りないものは少なくないが、山梨の小さなクラブは、素晴らしい指導者を迎えて特別なチームを作り上げたのだ。このベースに自信を持って、もう一度やり直せばいい。
最後になったが、セレモニーが終わるまでスタンドに残り、拍手を送ってくれたF東京サポーターに感謝したい。
以上
2007.12.02 Reported by 松尾潤
J’s GOALニュース
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