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【ゼロックススーパーカップ 鹿島 vs 広島】広島レポート:6年ぶりに戻ってきた伝説の男と共に、広島、ゼロックス・スーパーカップ初優勝!(08.03.02)

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3月1日(土) 2008 ゼロックススーパーカップ
鹿島 2 - 2(PK 3 - 4)広島 (13:35/国立/27,245人)
得点者:49' 本山雅志(鹿島)、52' 野沢拓也(鹿島)、80' 久保竜彦(広島)、85' 佐藤寿人(広島)

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 その男は、静かにピッチサイドにたたずんでいた。ただただ、静かに、その時を待っていた。自らの身体、その全身が鋭利かつ屈強な剣に変わる、その時を。

 57分、久保竜彦登場。その瞬間、紫のサポーターから叫び声が、えんじ色のサポーターからは大きなブーイングが、行き来する。
 紫のサポーターにとって、久保という存在はもはや神話。彼を目撃した広島サポーターは、誰もが心の中に「自分にとっての久保伝説」を持っている。一方、鹿島サポーターにとっての久保は、何度も煮え湯を飲まされた存在。2003年5月5日、自らの聖地・カシマスタジアムで久保に喫したハットトリックを苦々しく思い出した人も、決して少なくないはずだ。その両陣営の久保に対する強い想いが、国立競技場を支配した。

 実は久保のこの日の出場は、疑問視されていた。宮崎キャンプ終盤、彼は右足の違和感を訴え、練習を途中で切り上げた。その事実もあり、ここは無理をせず開幕に向けて調整するのではないか。そういう観測が、試合前の広島担当記者の間では、成り立っていた。実際、試合前の練習でも、他の選手がベンチ裏でアップを続けていた時も、久保の姿はなかった。

 しかし、実は久保は試合前、ペトロヴィッチ監督に「脚は問題ない」と語っていた。「(久保)タツさんの試合前の準備は凄い。勉強になることばかり」と槙野智章や遊佐克美が驚嘆するほど、身体に気を使っている久保だけに、この言葉は強がりではない。彼が外に出なかったのも、自分流の調整を肉体への負担が少ない暖かい室内でやっていたからだ。

 「久保が登場した時、チームのムードが変わった」とストヤノフは言う。「タツさんの『前でプレーしよう』という言葉が、勇気をくれた」と森崎浩司は語る。「タツさんの高さを警戒して、鹿島の最終ラインが下がったから、中盤にスペースができた」と佐藤寿人は分析する。その言葉どおり、久保と共に流れが広島に来た。

 61分、ストヤノフの縦パスに久保が走る。「久保に触られては危ない」とばかり、鹿島GK曽ヶ端準が猛然とダッシュするも、後ろへそらしてしまう。その1分後、ボールキープする久保を大岩剛が倒してしまう。ノーファウルの判定だったが、いずれも久保への警戒心が成せる業だろう。

 79分、途中出場のユキッチのテクニカルなスルーパスに反応した久保を、青木剛が倒してしまう。PK。佐藤寿人が「タツさん、蹴りますか?」と聞くと、久保は「オレ、蹴る」と言い切った。左足で叩き込む。しかし、先に広島の選手がエリア内に入ったと判定され、やり直し。プレッシャーがスタジアムを包む。しかし、久保は慌てない。もう一度、しっかりと蹴り込み、1点差に追い上げた。

 85分。高萩のパスを受けた服部がクロス。久保、ニアに走る。彼の高さを知り尽くした大岩は、佐藤寿人のマークを外し、青木と共に久保をはさみこむ。だが、この瞬間、鹿島の選手たちは見失っていた。広島にはもう一人、希代のストライカーがいることを。
 佐藤寿人、フリー。「曽ヶ端さんにニアを消されていた」と、瞬間的にGKの位置を見極めた生来の点取り屋は、冷静にシュートを逆サイドに流し込んだ。

 0−2となった時は、誰もが予測しえなかった同点劇。その中心にはいたのは、間違いなく背番号39。今オフ、J1からのオファーもあった久保だが、あえて彼はJ2の舞台を選んだ。その理由を彼は一言、「広島だったから」。広島が育てた最高のサムライは、円熟味すら感じさせるプレーで、「自分を拾ってくれた」(久保)古巣の危機を救ったのである。

 PK戦を制し、広島は初めて、ゼロックス・スーパーカップを手にした。佐藤寿人が大きくカップを天に掲げ、ストヤノフは一段高い場所からサポーターにカップを差し出し、ペトロヴィッチ監督は何度も宙を舞った。
 しかし。
 「明日までは、おおいに喜ぼう。しかし、月曜日から私たちを、現実の戦いが待っている。開幕戦で闘う草津は、アグレッシブでいいチームだ」(ペトロヴィッチ監督)
 そう。広島最大の目標は、ゼロックス杯ではなく、1年でのJ1復帰だ。鹿島にPK戦の末勝利したからといって、草津に、他のJ2チームに勝てることが約束されるわけではない。
 マークはさらに厳しくなるはずだ。
 苦しい戦いになるはずだ。
 その時、この試合で見せた全員での頑張りを、思い出せるか。優勝のきっかけをつくったのは、確かに久保だ。しかし、全員が粘り強く闘ったからこそ、勝利をつかむことができた。苦しい時こそ、この事実を思い出すべきだろう。
 ただ、今日のところは、この言葉だけを胸に抱いて、眠りにつきたい。
 広島、優勝!

以上

2008.03.02 Reported by 中野和也
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