3月9日(日) 2008 J2リーグ戦 第1節
水戸 0 - 2 C大阪 (13:05/笠松/5,437人)
得点者:42' 香川真司(C大阪)、85' 香川真司(C大阪)
----------
サッカーとは思い通りにいかないことがはるかに多いスポーツである。手を使わずにボールを扱うということだけでなく、レフェリングやピッチ状態、そして相手との関係。いろいろな要素が入り乱れる中でどれだけ精神を落ち着かせて90分間戦い続けることができるかで勝敗は左右される。目の前で起きた事象に対し、いちいち気を取り乱しているようでは勝利が遠のいてしまうのは勝負の常だ。初陣に臨んだ36歳新進気鋭の木山隆之監督はまだそこが理解できていなかったようだ。
22分、レフェリーの判定を不服に思った木山監督は我を忘れ、目の前のペットボトルを蹴り上げてしまったのだ。当然、主審は木山監督に退席を命じ、指揮官はピッチを去ることとなった。あまりにも幼き行動であり、その後68分もの間、指揮官なくして戦うことを余儀なくされることになった水戸は、自ら苦境へと陥っていった。
ただ、選手は成熟していた。序盤からアレーとジェルマーノを中心としたC大阪の巧みなパスワークに翻弄され続けたものの、体を張った守備で防いだ水戸は時間とともに赤星を中心に主導権を握りだしていった。監督が退席になった後も水戸は「監督のいるいないは関係なく、変わりなくやれていた」と鈴木和が話すように支配率を高めていき、テンポのいいパス回しからチャンスを作り出し、今季目指すアクションサッカーを表現していった。
だが、前に出た分だけできたリスク、その隙を突かれることとなった。突いた主は序盤から切れ味鋭い動きを見せていたC大阪の若きエース香川真司だ。42分、左サイド尾亦弘友希が前線の濱田武にフィード。濱田がきれいに左サイドに落とし、走りこんだ香川がきれいにゴールに流し込み、先制点。トラップ、ドリブル、シュート。すべての動作が高次元で行われ、水戸守備陣はまったくついていくことはできなかった。待望の先制点が生まれ、そのままC大阪の流れに傾くと思われた。
しかし、試合はさらに一転する。先制点から2分後、ジェルマーノが2枚目の警告をもらい、退場に。数的不利となったC大阪はDFラインを下げて対応することとなり、試合は攻める水戸、守るC大阪という構図で進むこととなった。
数的優位となった水戸は果敢に攻め立てた。菊岡拓朗と赤星貴文が中盤で起点となり、鋭いパスを連発。さらに荒田智之が巧みなフリーランニングからボールをうまく引き出し、決定機を演出。C大阪GK相澤貴志の攻守に阻まれ、ゴールは奪えなかったが、昨季以上にアイデアのある攻撃を繰り返し、C大阪ゴールを狙っていった。
だが、再び香川にしてやられる。85分、前掛かりになり手薄になった水戸守備陣の隙、ペナルティエリア内で白谷建人からのパスを受けた香川が巧みなトラップから素早く反転シュート。ボールはゴール右隅に吸い込まれていき、勝負を決する2点目となった。「彼ほど安定感のあるプレーができるということはすでに成熟したプレーヤーである」と指揮官から賞賛の言葉が贈られた若きエース香川の2得点の活躍でC大阪は勝ち点3をもぎ取った。
「C大阪は勝利に対してしたたかだった」と菊岡は唇を噛んだ。C大阪にとっては苦しい試合だった。前半で数的不利を強いられ、水戸の猛攻をしのぐ展開へ。だが、そこから指揮官の冷静な判断がものを言った。後半開始から4−4−1にシステムを変更し、1人を前線に残し、8人で守備を固める戦いを選択。そして、水戸の攻撃を防ぎながら、相手に焦りが生まれたところで酒本憲幸と白谷といったスピードのある選手を同時に投入。2人の鋭い突破からカウンターを仕掛け、85分の追加点を生み出した。どんな状況に陥っても焦らず有効な策を練りだしたレヴィー・クルピ監督の掌で転がった試合であったと言えよう。2002年以来の開幕勝利。森島康仁、古橋達弥を欠きながらの勝利であり、「重要な勝利だ」とクルピ監督は満面の笑みを見せた。
水戸も力を出し切った。「みんな自信を持ってやっていた」と赤星が言うように、選手たちは最後まで攻撃的姿勢を持ち、24本のシュートを放ってC大阪ゴールを襲い続けた。特に赤星、菊岡、荒田、小澤雄希といった新加入選手たちが持ち味を発揮したことは明るい材料であり、昨季以上の戦力であることを証明した。ただ、どんな有能な船員がいても船長がいなくては船は前に進まない。冷静さを失い、姿を消した船長。失われた信頼を取り戻すことはできるか。試合後、晴れ渡った空には、これから待ち受ける苦難の色が色濃く映っていた。
以上
2008.03.09 Reported by 佐藤拓也
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第1節 水戸 vs C大阪】レポート:若きエース香川の2発でC大阪2002年以来の開幕戦勝利。冷静さを失い、我を忘れた指揮官に率いられた水戸は残念な敗北。(08.03.09)













