2008年3月12日(水)、今年もアジアの頂点を目指す戦いが始まった。2007Jリーグ王者の鹿島は、タイのバンコクでそのACLの初戦を迎えることとなった。試合開始時間は照明の関係で15時半。バンコクの15時半は非常に暑く、選手にとっては過酷な環境下での試合となることが予想された。
試合当日、キックオフ4時間前くらいからじょじょにサポーターたちは、試合会場となるチュラスタジアムへ集結し始めた。そしてキックオフ3時間前にはオフィシャルツアーのサポーターが到着。チケット売り場もオープンになり、先ほどまでのどかな表情をみせていたスタジアムに試合前の緊張感を漂いはじめる。その後も続々と鹿島サポーターが到着し続け、最終的には200名を超えるであろうサポーターがバンコクの地にアジアの頂点を目指すために駆けつけた。
キックオフ約90分前、選手バスがスタジアムへ到着。バスが入ってくるゲートのところには「SPIRIT OF ZICO」と書かれた横断幕を持ったサポーターやゲーフラを掲げたサポーターが大声で「鹿島アントラーズ」のコールをかけて選手を出迎える。この瞬間にスタジアム周辺のボルテージは一気に上昇。横断幕から50mほど離れた選手のバスの到着口付近で待機していたサポーターからも「鹿島アントラーズ」コールがかかり、これから戦いへ挑む選手に勇気を与える。試合後に話を聞いた青木剛選手や田代有三選手は口々に「バスの到着のときから応援してくれていて心強かった」「アウェイで日本人のサポーターがいることだけでも心強い」と語り、サポーターの力に感謝していた。
試合前、鹿島サポーターたちに話を聞くと、口々に「5年前の雪辱を晴らしたい。同じバンコクでアジアの挑戦が始まるのは雪辱を晴らすのに絶好の場所」と2003年のACLの予選敗退の雪辱を晴らしたいと言っていた。当日の気温は朝6時で28度、11時で40度にもなり、人工芝で照りかえしのきついピッチ上ではキックオフ時の15時半に43.7度を記録するのほどの酷暑となっていた。そのような過酷な環境の中、選手と同じ陽射しを浴びてサポートをするという強い意思を持ち、多くの鹿島サポーターたちは屋根で日陰のできるメインスタンドではなく、日陰がひとつもないバックスタンドに陣取ることを決めた。その決断こそが雪辱を晴らすための決意であったのだろう。
そしてバックスタンドに陣取ったサポーターからは、強烈な日差しと暑さの中でも90分、ずっと応援の声が出続け、選手をサポートし続けた。試合後の本山雅志選手は「暑くてきついなかサポーターの声が聞こえると頑張れた」と語るなど、選手と同じようにバンコクのきつい陽射しを浴びながらサポートの声を出し続けたサポーターの力を称えていた。そして試合は地元のタイの選手に有利なように思われた15時半という通常では考えられないキックオフ時間、人工芝という環境の中でも鹿島の選手たちはサポーターの力に後押しされるように、得点を重ね、最終的には9得点をあげ、大勝した。この暑さは地元のクルンタイバンクの選手が2名も救急車で運ばれてしまうくらいの熾烈な暑さであった。
試合終了後のサポーター席には、西陽を浴びたサポーターたちが全力のサポートを終えて、一休みしていた。試合前に話しを聞いたサポーターに「これで雪辱が果たせましたね」と声をかけたところ「まだまだです。これからの戦いで得失点差のことも考えるとまだまだ気は緩められないです」と既に次の試合へと気持ちを切り替えていた。また試合前に話しを聞いた別のサポーターは「とても楽しかったです。一生ものの経験ができました」と目を輝かせながら語ってくれた。サポーターの皆の顔は、陽射しを浴びて、真っ赤に焼けていたが、この日焼けは選手と共にアウェイを戦ったサポーターの証であり誇りであることだろう。2008年3月12日(水)チュラスタジアム9番ゲートから入ったバックスタンド。ここから鹿島サポーターのアジアの頂点を目指す挑戦が始まった。
以上
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