4月6日（日） 2008 J2リーグ戦 第6節
岐阜 1 - 1 広島　（16:03／長良川／5,471人）
得点者：22' 槙野智章（広島）、60' 菅和範（岐阜）

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1-1。タイムアップのとき、電光掲示板に刻まれていたスコアだ。しかし、この1-1は双方にとっては意味合いが違った。岐阜のゴール裏からは大きな歓声が、広島のゴール裏からは大きなブーイングが飛んだ。このコントラストが試合内容を如実に表していた。

この試合、どちらが試合巧者かと問われると、明らかに岐阜の方であった。岐阜・松永監督の前半のゲームプランは、リトリートディフェンスを敷いて、相手の攻撃を食い止めてリズムを奪うことだった。

広島の攻撃は平繁、佐藤の2トップに対し、クサビを打ち込むというよりも、ボランチから直接DFラインの裏へパスを通して攻撃を組み立てるパターンだった。そこに岐阜は目を付けた。「選手が入ってきたところを捕まえるようにした」と松永監督が語ったように、リトリートディフェンスを敷くことで、ある程度は中盤で自由を与えながらも、2トップとトップ下の柏木のアタッキングゾーンへの飛び出しと、両サイドアタックを阻む狙いがあった。

この狙いがずばり的中した。岐阜はリトリートしながらも、中盤のラインはDFラインに吸収されることなく、要所で頻繁にビルドアップを仕掛けたことで、広島に強烈なプレッシャーを与えた。岐阜の早いプレスに、広島はボランチが前を向いてボールを受けることが出来ず、DFラインやサイドからの縦パスでしか活路を見出せなくなっていく。怪我から復帰し、スタメンに名を連ねた柏木もボールを受けるために、最終ラインやボランチのラインまで顔を出さねばならず、攻撃を組み立てられない歯がゆい時間が続いた。

22分には右CKから槙野が目の覚めるようなダイレクトボレーを叩き込んで、広島が先制をするが、その後もリズムがつかめない嫌な流れのまま、前半を終了した。

後半は、「フォアチェックからボールを奪って仕掛ける」（松永監督）狙いを持った岐阜は、一転して攻撃的なサッカーを展開。吉村と後半から投入された奈須が高い位置まで張り出して、本来のサイドで数的優位を作り出す攻撃で、広島を押し込んでいく。

57分の片山のシュートはバーに阻まれるが、続く60分には右サイドの梅田、吉村と繋いで、最後は菅が地を這うようなミドルシュートをゴール左隅に突き刺して、岐阜が同点に追いついた。その後も攻撃の手を緩めない岐阜は、猛攻を仕掛け、71分には梅田とのワンツーで抜け出した吉村のシュートはポストに嫌われた。

DFラインが高い位置をキープし、ボランチと両サイド、2トップが連動して仕掛けてくる強烈なプレスに、広島は中盤が完全に間延び。なんとか中継をしようとフォアチェックを避けて、青山、森崎浩のダブルボランチがサイドに開いて顔を出すも、サイドでは相手に数的優位を作られ、すぐに厳しいプレスの前にさらされてしまう。一向に打開策の見えない広島は、精彩を欠いた平繁、柏木に代えて、久保、ユキッチを投入してテコ入れを図るが、状況は変わらなかった。結局、広島が岐阜の猛攻をなんとか凌ぎ切った形で試合は終了し、勝点１ずつを分け合う結果となった。

岐阜にとっては広島から掴んだ大きな勝点１であったが、反対に勝てる試合を落とした感があった。それほど、後半は圧倒的に岐阜ペースであった。ただ、これは前節のC大阪戦と同じ後味だった。決めるところで決められない。同じ課題がここでも顔を出すことは、是とすべきか否とすべきか、正直非常に判断に困る。勝てる試合を落とし続ける代償は、第2クール以降に大きな形となって現れてくる危険性があるだけに、もう一度問題意識を持ってトレーニングに励まなければならない。「今は試合を重ねるごとに積み上げは出来ているが、一巡した後にどう戦っていくかが大切」と松永監督が語ったように、いいサッカーが出来ている今だからこそ、やるべきことがある。先を見据え、この勝点1をより意義あるものにするために、浮かれることなく戦っていってほしい。

一方の広島は課題だけが残るドローとなった。「2点目が入っていたら分からなかった」と選手たちは口にしたが、相手の術中にはまる前に勝負を決めきれなかった甘さこそが最大の課題であった。選手たちのレベルは間違いなくJ2では群を抜いている。だからこそ、より試合巧者ぶりが求められるが、この試合の試合巧者は明らかに岐阜であった。

しかし、J初参戦チームに試合巧者ぶりを見せ付けられたことで、これが広島の目を覚まさせる貴重な一戦になるかもしれない。いや、ならなければならない。そういう意味では、広島にとって、チームの今後に大きな影響を与える一戦となったかもしれない。この試合で何を学んだのか。次のC大阪戦がその真価を問われる一戦となるだろう。

以上

2008.04.07 Reported by 安藤隆人