4月6日(日) 2008 J1リーグ戦 第5節
柏 0 - 0 新潟 (16:00/柏/9,585人)
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16対14。この試合で生まれた両チーム合計30本のシュートは、最後までゴールネットを揺らすことはなかった。相手のシュート数を上回る数字を記録しながらもゴールが生まれなかった展開に、「足りないのはシュートの質」と振り返ったのは、柏のキャプテン大谷秀和。“太陽王”が抱える悩ましい課題が、この試合でも顔を覗かせることとなった。
試合は序盤から柏のペースで始まる。前線からのボール奪取で新潟陣内に攻め込み、李忠成の1トップの下に配置された鈴木達也と大谷がゴール前で決定機に絡んでいく。「3人目の動き」。石崎信弘監督が求め続ける前線と中盤が連動した攻撃は、目まぐるしく変わっていくポジションチェンジも相まって、見る者をなんとも楽しい気分にさせた。かつて、“将軍”プラティニ(現UEFA会長)を中心としたフランス代表のサッカーを評して、“シャンパンサッカー”と形容された時代もあったが、前半に関して言えば、柏のサッカーはまさにシャンパンの泡のように次々と攻撃のポイントができあがっていった。
だが、それでゴールが生まれる、というわけにはいかないのがサッカーの奥深いところ。前半に迎えた好機を活かせなかった柏は、後半に迎えたチャンスも逃し続け、ついに90分を通してゴールを割ることは叶わなかった。『決定力不足』。ただ、そうは言っても、攻撃面で確実に前進していることは見逃せない。「今までよりも、ペナルティエリアの中に入れる回数は増えてきた」という大谷の言葉は、ピッチにいる選手の実感であり、確かな事実だろう。エース・フランサがいない今、柏にまず求められるのは、決定機の数。そういう意味では、結果を手にできなかった今日の試合で、今後への方向性がブレることだけは避けたいところだ。
しかし、鈴木が語った「後半は淡白だった。ゴールに向かう意識をもっと強く持っていかないといけない」という言葉もまた一方の事実である。前半での出来のよさに満足してしまったとは思いたくないが、徐々にリズムをつかみ始めた新潟を前に、ゴールを陥れる過程で問題が生じていたことは間違いない。鈴木が捉えるように、その原因が「メンタルの問題」ということであれば、次の試合では今日との違いをなんとしても見せて欲しい。
一方、今季初の勝点を手にすることとなった新潟は、不調脱出のきっかけをつかむことに成功した。「必ずもっとレベルが上がっていく」(鈴木淳監督)、「数字が0から1に変わったのは明らかな成果」(内田潤)。監督、選手ともにこの試合での収穫を感じており、手にした反撃への糸口は次戦でこそ活かされるべきものだ。なかでも、途中出場のFW河原和寿のプレーはこの試合で取り上げるべきトピックのひとつだろう。「相手がどこであれ、絶対に勝点は取れるチーム」と自チームを称する生粋のストライカーは、強烈なミドルなどでゴールへの意欲を撒き散らしていた。物怖じしない若武者が、次節優勝候補のG大阪相手に見せるプレーには注目したい。
試合後、新潟のゴール裏から大声援が響き渡るなか、なんとも言えない表情で選手たちを迎え入れた柏のサポーターたち。一見、今節の試合結果から読み取れるものはこのコントラストに凝縮されているように思われるが、収穫の大きさは決してそれに比例するものではない。今季初の連勝を逃したものの、着実に前へと歩を進めている柏にとっての今日の試合の意味は、石崎監督も強敵と賛辞を惜しまない次戦の横浜FM戦で問われることとなる。
日中は暖かかった日立台も、日が暮れたころには肌寒いものへと姿を変えた。柏にとっての春爛漫の訪れは、もう少しだけ先のこととなりそうだ。
以上
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一覧へ【J1:第5節 柏 vs 新潟】レポート:前進するチームと満たされない想い。柏がホームで新潟に初勝点を献上。(08.04.07)













