6月28日(土) 2008 J2リーグ戦 第23節
水戸 3 - 4 仙台 (13:04/ひたちな/3,107人)
得点者:4' 梁勇基(仙台)、19' 梁勇基(仙台)、23' 田村直也(仙台)、55' 荒田智之(水戸)、70' 村松潤(水戸)、73' 大和田真史(水戸)、77' 平瀬智行(仙台)
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「3点を追いついたことは今までの水戸ではあり得ないことだと思う」。悔しさをにじませながらもかすかな希望を見出すように赤星貴文はこう語った。
後半に見せた怒涛の反撃こそ、攻撃姿勢を貫く今季の水戸の目指す姿である。3点ビハインドという状況でも「1点取れれば変わると思っていた」(赤星)という強い気持ちを持った水戸は後半開始から激しくプレスをかけて仙台を押し込み、そして仙台の運動量が落ちてきたところでボランチ村松潤を投入すると、中盤を完全に制圧。そこから疾風迅雷の猛攻がはじまり、55分に村松のループスルーパスに抜け出した荒田智之が押し込んで1点を返すと、73分には荒田とのパス交換から村松が左足を一閃。ゴール左隅に叩き込み、1点差に迫る。さらに水戸の勢いは止まらない。73分には右サイドからのFKを大和田真史が頭で合わせ、ついに同点に追いつき、『奇跡』が起こる予感がスタジアム中に漂った。
だが、サッカーの神様はそこまでいたずら好きではなかった。同点に追いつき、イーブンの流れになると勢い頼みの水戸の3−4−3に隙が生まれ、仙台にサイドのスペースを使われ出し、77分に右サイドでFKを与えてしまう。梁勇基が蹴ったボールはゴール前で混戦となり、最後は平瀬智行が蹴りこみ、仙台が勝ち越しに成功。その後、水戸がもう1度反攻に出るものの、仙台は2度同じミスは繰り返さず、安定した守備で水戸をいなし、勝点3を手に入れた。
3点を決められながらも諦めず、攻め続けた水戸。だが、3得点挙げた攻撃よりも4失点を喫した守備に根深い問題がある。前々節広島戦からプレスがかかっていない状態でもDFラインを上げることが多く、容易に裏のスペースを突かれ、ピンチに陥る場面が目立っている。この日もそうだった。開始から再三仙台に裏のスペースを使われ、サイドで主導権を握られる展開となり、4分、左サイドから簡単に上げられたクロスを中央で受けようとした選手に対し、大和田がファウルを犯してしまい、FKを与える。そのFKを梁にゴール右隅に蹴り込まれ、先制を許す。
その後も水戸の守備の甘さは変わらない。またも仙台に左サイドで起点を作られ、簡単に中央の田中康平にパスを通される。サイドでプレスがかかっていないにも関わらず、浅い水戸のDFライン。一発のフェイントで平松大志がかわされると田中はペナルティエリア内に侵入。あわててフォローに入った中村英之が田中を倒し、仙台にPKを献上。再び梁が落ち着いて決めて仙台が追加点を挙げた。それでも水戸の守備は改善されない。その2分後、ハーフウェイライン前で右サイドバック田村直也がボールをキープ。そこに対して、誰もプレスが行けていない状態にも関わらず、水戸DFは一気にラインを押し上げ、オフサイドを取ろうとした。そうなると自然とGK本間幸司も空いたスペースを埋めるためにポジショニングを前に取らざるを得なくなった。その状況を冷静に判断できるほどの余裕が田村にはあったのだ。それにも関わらずにラインを上げた水戸DFをあざ笑うかのように、GKの位置をも見計らって冷静に放った田村のロングシュートは本間の頭上を越え、ゴールネットへと吸い込まれていった。「3失点目は相手をほめるしかない」(赤星)というスーパーシュートだったのは確かだが、それを生んだのも水戸の守備の甘さであった。
後半の攻撃力が霞むほど、水戸の前半の守備組織の緩慢さが際立っていた。「今日は(プレスを)かけようとしてかけられなかった。でも、それはかけるしかない」と木山監督。そうした理想とのギャップが4連敗を生んでいる。「勝っていたときの自分たちを思い出したい」と赤星は言う。3連勝時、水戸を支えていたのは泥臭いまでの守備であったし、初勝利の第3節甲府戦も守備力の勝利であったことを忘れてはいけない。その原点があった上で、攻撃力を積み重ねていくことが必要だろう。前線からのプレスは大事だが、問題はプレスに行けないときにどうするのか。そこの戦い方がいまだに定まっていないことにより、水戸は前に進めずにいる。「仙台の技術の方が上回った」(木山監督)にも関わらず、「(仙台相手でも)プレスにいけると思った」(木山監督)という見込み違いが前半の3失点につながった。後半に見せたように攻撃力は備わっている。そのストロングポイントを出すためにももっともっと守備の整備をつきつめないといけない。今の水戸はあまりにももろすぎる。
仙台にとっても「それ(乱打戦)を演出したのは自分たち」と手倉森誠が監督が振り返るように、ゲームマネジメントの稚拙さが際立った「反省ばかり」(梁)の試合であった。序盤から積極的に攻め込み、3点を奪ったものの、その後「目に見えないゆるさ」(手倉森監督)がチームを包んだ。1週間で3試合目の試合であり、後半に運動量が落ち、水戸の反撃を受けに回ってしまったことが連続失点につながった。「3点取っているのに厳しいゲームにしてはいけない」と手倉森監督は厳しい表情を見せた。しかし、それでも勝点3を手に入れたのは大きな収穫だろう。3点を追いつかれた後、「意気消沈せずに立ち上がった」(手倉森監督)ところに昇格争いをするチームの強さがみなぎっていた。大切なのは勝ち点を重ねること。こうした厳しい日程の試合で勝ちきることが終盤に必ず生きてくるはずだ。
試合後、水戸の選手たちの口からジャッジに対してのクレームが多く聞かれた。たしかに不満なジャッジがあったかもしれないが、4失点をして負けた事実は変わらない。そうしたことを口にするよりも敗戦や仙台との力の差を真摯に受け止めることが必要だろう。「追いつくまではよかったけど、逆転する力が自分たちにはなく、仙台にはあった」と村松は言う。そうした意識をどれだけの選手が持っているか。この試合についても「情けない試合だった」(梁)と肩を落とす勝者に対して、「いい内容だった」と口を揃える水戸の選手との意識の差を感じざるを得なかった。水戸は現在13位。その現実にもっと目を向けないといけないし、それが水戸の力であることを再確認すべきである。もっともっと謙虚に、もっともっと泥臭く、水戸は戦うべきだ。
以上
2008.06.28 Reported by 佐藤拓也
J’s GOALニュース
一覧へ【J2:第23節 水戸 vs 仙台】レポート:水戸の怒涛の猛攻を突き放した仙台が勝利! 派手な乱打戦となったが、お互いが欠点を露呈。「反省ばかり」(梁勇基)の90分。(08.06.28)
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