6月29日（日） 2008 J1リーグ戦 第14節
Ｇ大阪 4 - 2 札幌　（19:00／万博／14,039人）
得点者：5' バレー（Ｇ大阪）、23' 西嶋弘之（札幌）、36' バレー（Ｇ大阪）、67' ルーカス（Ｇ大阪）、76' 柴田慎吾（札幌）、84' 山口智（Ｇ大阪）
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　G大阪のFWバレーの右足が、泥臭く札幌ゴールを捕えた瞬間、『決定力不足』を指摘され続けた中で、誰よりも苦しんでいたのはFWバレー自身であったことを知るチームメイトが、祝福の輪を作る。手荒く頭を叩いたり、抱き合ったり、手を合わせる仲間に、FWバレーも思わず笑顔。開始直後、5分のことだ。
　湿度93％と、立っているだけでも汗が噴き出してくるような蒸し暑い状況で行われた『G大阪VS札幌』戦は、そんなエースの一撃で幕を明ける。

　だが、前半は決してG大阪ペースで進んだとは言い難い。『湿度93%』が選手の足に鉛をつけたのか、先制した後、運動量があがってこない。それに対し札幌は、逆にビハインドを負った展開ということもあってか、運動量の低下は見られず。ボランチに位置したMFクライトンを中心にうまく攻守を組み立てる。G大阪の攻撃ポイントの１つとなる両サイドからの仕掛けも、札幌に徹底してプレスをかけられたことで、上がるタイミングを逸する場面が多い。試合後、「もらうポジショニングが悪かった」と振り返ったのはDF安田理大だが、低い位置でもらわざるを得ない状況に追いやられていたとも言える。

　そんな中で生まれた札幌の同点弾はセットプレーから。23分、MFクライトンのコーナーキックに対し中央でG大阪DF陣がしっかりと競ったものの、不運にも中央にこぼれたボールをDF西嶋弘之に決められてしまう。これにより再び試合が振り出しに戻ったことで試合のペースがあがるのかと思われたが、状況はあまり変わらず。西野監督の言葉を借りれば「ボールへの迫力、スピード、連動性も整っておらずプレスがかからない状況だった」。それでも36分、再びFWバレーが追加点を決め、前半をリードして折り返せたことは、選手たちが余裕を持って後半戦を迎えることに繋がったと言える。

　その後半も先にゴールをこじあけたのはG大阪だった。67分、MF二川孝広のスルーパスに反応したMF遠藤保仁がゴール右前で相手DF２人を交わし、中央でフリーになったFWル−カスへ。それをFWルーカスがきっちりと決めて札幌を突き放す。だが、札幌も引き下がる様子はなく。76分には再びセットプレーからDF柴田慎吾が決めて再び１点差。意地をみせるが、84分には再びG大阪のDF山口智がMF遠藤のコーナ−キックを頭でとらえ４−２にされて万事休す。いつものような鋭さ、パスワークには精彩を欠いたものの、苦しい状況下でも少ないチャンスをしっかりとゴールに結びつけ、かつ、エースが『沈黙』を破る２ゴールを挙げるなど勢いを見せたG大阪が快勝。首位との勝点差を１に縮め、４位に浮上した。

　試合後、ピッチの中央でサブメンバーを含めた全員で輪になって喜びを表現する『儀式』が行われたが、その輪の中で、昨日、検査入院が発表されたFW播戸竜二の背番号『11』』のユニフォームが舞っていた。「昨日少し話しましたが、バンはチームが負けると余計に辛いよ、と言っていたから。バンのためにもいい状態をキープしていかないといけないという思いは強かった」とゲームキャプテンDF山口。そうしたFW播戸の思いを汲み取った仲間は、この日、『11』のユニフォームをベンチに置いてキックオフを迎え、勝利の瞬間もFW播戸と共に喜んだ。ピッチに立つメンバーも、ベンチ
に座るメンバ−も、ピッチの外で観戦するメンバーも、そしてFW播戸も。全員の気持ちを一つに揃えて戦った札幌戦。リーグ戦では今季最多となる４得点は、勝利は、そんな全員の思いが結集して生まれたものだった。

以上


2008.06.30 Reported by 高村美砂